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雪夜の墓標

インフォメーション
題名:雪夜の墓標 著者:出口王仁三郎
ページ:269
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-31 06:24:00 OBC :B120900c48
(やうや)くに上谷(うへだに)(さと)に近づけば怪しく(きこ)ゆる野狐(のぎつね)()(ごゑ)
堂山(だうやま)(くだ)れば四方(しかた)春蔵(はるざう)墓標(ぼへう)は月と雪にはえをり
『野崎』春蔵(はるざう)の幽霊今夜は先生の生首(なまくび)抜くというてゐました
『野崎』それそこに春蔵(はるざう)の幽霊が(あら)はれた蒼い顔してにらんでゐますよ
『上田』春蔵(はるざう)の幽霊こはくて世の中に生きてをれるか馬鹿をほざくな
ああこはい墓から青い火が出るとふるひ(おのの)狂者(きやうじや)のをかしさ
火の玉も幽霊も出ぬ新墓(にひはか)の前にたたづみ祝詞のりたり
臆病神
それそこに幽霊がゐるといふ野崎あまりに心持(こころもち)はよからず
折もあれちらちらと()粉雪(こなゆき)はわが(くび)のべにひやりと落ち()
とんきような野崎(のざき)の声に何となくわれも(くび)すぢぞくぞくとする
わが(たま)は臆病神におそはれて足もとわなわなふるへ出したり
気の弱きわれにあらねど新墓(にひはか)の前にしたちておぢけ(もよほ)
決心の(ほぞ)を固めて高らかに()神言(かみごと)もふるへゐたりき
大空(おほぞら)雪雲(ゆきぐも)わきて中天(ちうてん)の月をつつめばあたり小暗(をぐら)
月読(つきよみ)は雲に姿をかくせども積む白雪(しらゆき)にほの(あか)き墓地
褌の尾
いざさらば綾部に帰りやすまんと(つゑ)を握りて立ち(あが)りけり
この野崎(のざき)わが(たもと)をば握りしめああうらめしやと幽霊の真似する
(はる)さんの幽霊が私に()きました()なしはせぬと野崎が(そで)ひく
握りたる(たもと)を強くふり放し一目散にわれかけ出しぬ
この野崎かまきりのやうな手つきしてほういほういといひつつ追ひ()
余りにもいやらしきまま六尺の(まはし)はづしてひきずり帰る
六尺のまはしに驚き野崎らは四五(けん)遅れて従ひきたる
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