東尾吉三郎公判調書
第八回公判調書
〔公訴事実、被告人は第三回公判調書と同じに付省略〕
弁護人 鍋島徳太郎 竹山三朗
竹川謙栄 赤塚源二郎
前田亀千代 足立進三郎
富沢効 田代三郎
清瀬一郎 林逸郎
川崎富一郎 今井嘉幸
小山美四 小山昇
三木善建 各出頭
其の余の各弁護人 不出頭
裁判長は、
前回に引続き審理すと宣し被告人東尾吉三郎に対し検事陳述通りの被告事件を告知し此の事件に付弁解すべき事ありや否を問ひたるに、
被告人東尾吉三郎は、
大要は公判準備の手続で述べた通りであります、尚詳細の亊は之より御取調べの際順次申し上げ度いと存じますと述べたり。
裁判長は、
被告人東尾吉三郎に対し訊問する事左の如し。
問 前科は如何。
答 前科はありませぬ。
問 被告人の学歴経歴如何。
答 大体予審で申し上げた通りです。
問 被告人は予審に於ては斯様に述べ居るが如何。
此の時裁判長は、
被告人東尾吉三郎に対する予審第二回訊問調書第三問答を読み聞けたり、
答 其の通り相違ありませぬ。
問 被告人の家庭の状況如何。
答 私と妻と長男の三人暮しであります。
問 被告人の現在の資産収入の状態如何。
答 資産収入共現在は何もありませぬ、皇道大本奉仕中は一ケ月五、六十円貰つた時もありましたが、最近は一ケ月四十円の手当を貰つて居りました。
問 被告人が皇道大本に入信したる動機並時期如何。
答 大体予審で申した通りです。
問 此の点に付被告人は予審に於ては斯様に供述し居るが如何。
此の時裁判長は、
被告人東尾吉三郎に対する予審第三回訊問調書第一問答を読み聞けたり、
答 其の通りであります、入信当時より大正十三年迄は奉仕生活と云つても仙人の様で浮世離れた生活で毎日遊んで暮して居りました。
問 皇道大本の発端沿革は〔第三回公判調書に同じに付省略〕。
答 其の通り相違ありません。
問 此の点に付被告人は予審に於ては詳細斯様に供述し居るが如何。
此の時裁判長は、
被告人東尾吉三郎に対する予審第四回訊問調書第一巻を読み聞けたり。
答 御読み聞けの通り相違ありませぬ。
問 被告人は皇道大本に入信後大本亀岡支部長、大本瑞祥会副会長、大本総務、大本瑞祥会長等の要職に就任し大本運動に従事したるや。
答 左様であります、夫等の各役職に就任し後相当の活動を致して居りました。
問 被告人は皇道大本に入信後皇道大本に関する如何なる文献雑誌新聞を読みたるや。
答 予審に於て詳細申上げた通りであります。
問 此の点に付被告人は予審に於ては詳細斯様に供述し居るが如何。
此の時裁判長は、
被告人東尾吉三郎に対する予審第三回訊問調書第三問答を読み聞けたり。
答 其の通り相違ありません。
問 皇道大本に於ては如何なるものを教典とするや。
答 神諭には表神諭裏神諭とあり霊界物語と共に皇道大本の教典として居ります、而して表神諭は天之巻火之巻のに冊に裏神諭は裏の神諭と題する単行本、多満の礎、道之大本、玉の柱第一篇道の栞、瑞能神歌の五冊に霊界物語は第一巻より第八十一巻に別して居ります。
問 右教典は之なりや。
此の時裁判長は、
被告人出口王仁三郎に対する証拠品中
証第千二百六十四号大本神諭天之巻同火之巻
証第四十四号裏の神諭と題する単行本
証第二十四号中の王仁文庫第三篇瑞能神歌同第六篇多満乃礎、同第九篇道の大本
証第五百三号玉の柱第一篇道の栞
証第三千六百五十八号霊界物語第一巻乃至第七十二巻
証第五百五十号同物語第七十三巻乃至第八十一巻を各展示したり。
答 御示しの文献は何れも皇道大本で教典と致して居ります。
問 表神諭には教祖ナカの筆先が掲載しありや。
答 表神諭天之巻火之巻には教祖ナカの筆先が記載してあります。
問 曩に示しある教祖ナカの筆先は神示なりと信じ居りしや、又は王仁三郎の意志も加はり作り上げられたるものと思ひ居たるや。
答 神示と信じて居りました。
裁判長は、
被告人東尾吉三郎に対する予審第十七回訊問調書第二問答を読み聞け、
問 被告人は予審に於て神示でなく、王仁三郎の意志が加はりしものなりと述べ居るが如何。
答 警察で王仁三郎が高熊山へ博奕を打ちに行つた等と無茶な事を言はれ、結局今の様な事を認めさせられたので、夫れが根本となり予審でも其の様に認めねばならなくなつたので、今御読み聞けの事項は私の信念に反するものであります。
問 裏の神諭は王仁三郎の書きたるものなりや。
答 左様であります。
問 裏の神諭は神示なりや将亦王仁三郎の創作なりや。
答 勿論神示であります。
問 霊界物語は神示なりや。
答 神示でありますが霊界物語にはスェーデンボルグの本と仏教等より引用してある所がありますから、此の点は神懸の作と見る事は出来ませぬ。
裁判長は、
被告人東尾吉三郎に対する予審第十七回訊問調書第三問答を読み聞けたる上、
問 被告人は予審に於ては裏神諭は王仁三郎個人の意志により書きしものにして、裏神諭にも他の文献より材料を取入れしものある旨供述し居るが如何。
答 先述した通り霊界物語には他の文献より材料が取り入れられた箇所があり、其の点は神懸りの作と見る事は出来ませぬが、裏神諭は左様な事はありませぬ、予審調書は私の意志に反するものであります。
問 教祖ナカ及王仁三郎は神懸状態になりたる事ありや。
答 教祖ナカの神懸りは見た事がありませぬが、人から聞いた話に拠ると教祖ナカは神懸りの時は声が男の声の様に変つたりしたとの事です、王仁三郎の神懸りで王仁三郎が飛上つたりした様な顕著なものは私は見ませぬが、霊界物語の口述を見ましたが、普通の頭では出来ぬ事と思ひましたので此の霊界物語口述は神懸りだと思つて居ります。
問 皇道大本に於ては立替立直みろく神政成就を強調し居りしや。
答 強調して居りました。
問 立替立直みろく神政成就は皇道大本の根本目的なりや。
答 簡単に申しますと左様になりますが、神様の御心を取次で宣伝する丈けが皇道大本の直接の目的でありますから立替立直みろく神政成就は皇道大本の根本目的でない事になります、皇道大本の第一の目的は神の実在を知らせる事であり、第二の目的は神の御意志はどんなものか、之を世界に知らせる事であり、此の二つで皇道大本の目的は尽きると思います。