霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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落角

インフォメーション
題名:落角 著者:出口王仁三郎
ページ:275
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-30 20:57:00 OBC :B119300c064
二十五六歳の頃
後家(ごけ)(いへ)牛乳(ちち)配りゆけば(われ)を見て地蔵(ぢざう)眉毛(まゆげ)と追ひかけまはる
新田(しんでん)の地蔵をまつるこの後家(ごけ)はわれを(ほとけ)と間違へたるらし
牛乳(ちち)くばるお前は子供の守り(がみ)地蔵地蔵と追ひ()後家(ごけ)(ばば)
牧畜のほかに小作田(こさくだ)五千(つぼ)牧畜のひまにたがやしにけり
乳牛(ちちうし)糞尿(ふんねう)のこらず田に()れて(つち)()えたればみのり(ゆた)けし
朝夕(あさゆふ)に江戸腹当(はらあて)法被(はつぴ)きて附近の村むら牛乳(ちち)くばりゆく
一合(いちがふ)牛乳(ちち)は三銭そのときの(こめ)八合に相当なしたる
あちこちの医者の世話にて病人のある家ごとに牛乳(ちち)配りけり
牛乳(ちち)くばりかへる(ゆふ)べに辻相撲(つじずまふ)とりて左の(ひぢ)きずつけにけり
(さいは)ひに左の(ひぢ)のきずなれば牛乳(ちち)しぼるにはさしつかへなき
牛の背にまたがり小幡(をばた)の川わたり()(おと)されて水中(すゐちう)にしづむ
乳牛(ちちうし)はわれを川水(かはみづ)におとし置き悠悠(いういう)牧場(まきば)にかへり居たりき
川中(かはなか)をはひ(あが)りつつ()(ぎぬ)をしぼりてそろそろ牧場(まきば)にかへる
(はら)たちてこん畜生といひながら頭を打てばぽろりと(つの)()
片角(かたつの)をおとしたりとて乳牛(ちちうし)のあたひ半分に足らずなりけり
(おと)したる(つの)を拾ひてつぎ見れど首ふるたびにまたぽろり落つ
ぬけ落ちし(つの)()もとにやはらかき一寸(いつすん)ばかりの若角(わかつの)()え居り
若角(わかつの)は血にまみれつつ痛さうに乳牛(うし)は頭を下げて寝て居り
翌朝(よくてう)より(ちち)の分量激減し()牛乳屋(ちちや)にて買ひくばりけり
(この)牛乳(ちち)は味がちがふと得意先ゆ小言(こごと)きかされ値切られにけり
牧場(ぼくぢやう)で青年隊と牛肉を煮て食ひわれは腹をくだせり
牛の()を煮る大釜(おほがま)にて牛肉をたくは無茶よと村上(むらかみ)(おこ)りぬ
その(なべ)をそのまま牛の()を煮れば牛はフンフン()ぎて()らはず
()むを得ず川水(かはみづ)(なべ)洗ひ清め()を煮てやれど又(うし)()はず
軽石(かるいし)をもちて鍋皮(なべかは)(みが)き上げやうやく牛に()てもらひける
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