霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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野送

インフォメーション
題名:野送 著者:出口王仁三郎
ページ:311
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-30 20:57:00 文字数:695 OBC :B119300c071
二十六七歳の頃
この日頃病(やまひ)に伏(ふ)せるわが父はどれなと女房にきめおけといふ
内縁の妻はあれども一生の妻(つま)見あたらずと吾(われ)こたへけり
わが生命(いのち)もう長(なが)からじ一日もはやく安心させよと父言ふ
大(おほ)いなる希望(のぞみ)ある身はやすやすと会心(くわいしん)の妻見当(みあた)らざるなり
父と吾(われ)の話をそつと立聞(たちき)きて彼女はたちまち泣きいだしたり
しまつたと心をののき次の間(ま)にたち出(い)でみれば彼女のかげなし
裏口の戸をあけみればわが母は彼女の袖(そで)をひきとめてをり
喜楽さんの心の底が見えましたあきらめましたと泣き泣き逃げゆく
心には少しかかれど男子(をのこ)の身追(お)ひかけゆくを恥(は)ぢらひてやむ
○
吾(わ)が父の病(やまひ)おもりて親戚に危篤の電報いそぎ打ちたり
京都市や亀岡園部(そのべ)河内(かうち)など親族おのおのあつまりきたる
吾(わ)が父は吾(われ)に抱(だ)かれてやすやすと眠るがごとく息絶(た)えにけり
吾(わ)が父の国替(くにがへ)さへも知らずして母は炊事にいそしみませり
母の名を呼べばおどろき来(き)給(たま)ひし時には既にこときれてをり
わがが父は五十四歳を一期(いちご)としかへらぬ旅にやすやすつきぬ
一生の別れを父と告げにけり吾(われ)二十七歳になれるはつ秋(あき)
金剛寺(こんがうじ)住職たのみ仏式(ぶつしき)で西山(にしやま)墓地に野(の)おくりなしたり
野送(のおく)りの後(あと)にひそひそ随(したが)ひて泣き泣き彼女も加はりてをり
垂乳根(たらちね)の父に別れし悲しさに吾(わ)が浮きごころとみにしづまる
貧乏な世帯(しよたい)の主(ぬし)となる身ぞと思へばしばし恋にとほざかる
雨のおと風のひびきも何となくさびしくなりぬ秋の夕暮
大任(たいにん)の身にふりかかりし心地して貧乏世帯(じよたい)の主人となりぬ
祖母と母(はは)弟妹(をとどひ)五人を如何(いか)にして養(やしな)はんかと思(も)へば寂しき
亡き父の借金返(か)へせと村びとのきびしき談判に吾(われ)悩みつつ
はたらきて弁済すると吾(われ)宣れば鼻であしらふ金貸(かねかし)の男
碌(ろく)でない女にうつつ抜(ぬか)しつつ金(かね)返(か)へせるかと危(あや)ぶむ金貸(かねかし)
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