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一ぱいの水
インフォメーション
題名:
一ぱいの水
著者:
出口澄子
ページ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B124900c37
001
京都の五条署に留置されていた私の記憶は、
002
百日ばかりでありますが、
003
約百日目、
004
大本事件の記録では、
005
八月の七日のことです。
006
小川警部がとつぜん私に「こちらへ来い」といいに来ました。
007
ここで大本事件についてよく知らない人のために言うておきますが、
008
私達は日本人としては最も重い
罪人
(
ざいにん
)
として
取扱
(
とりあつか
)
われていたのであります。
009
もちろん私はすべて身におぼえのないことで、
010
なんで自分がこんな目に遭うて、
011
引っぱられているのか、
012
その理由が分からんので、
013
警察官が手荒いことをし、
014
また汚ない言葉を口にしても、
015
腹は立ちましたが、
016
さほどに苦痛を感じておりませんでした。
017
大本の弾圧はこれで二度目でありましたが、
018
第一次の時は先生だけが警察に
引致
(
いんち
)
されなさったので、
019
私はこんどが初めてで、
020
警察のことはさっばり様子が分かりません。
021
留置場の中で、
022
人間の考えることは毎日同じようなことです。
023
──どうして、
024
こんなところに引っぱられてきたのやろう、
025
役員はどうしているのやろう──信者がこまっているやろう──と思ったり、
026
家族のこと──と、
027
くり返しくり返し、
028
そんなことを来る日も来る日も、
029
考えていたのであります。
030
小川警部が私に「こちらへ来い」といった時、
031
もう一人が、
032
そばから「荷物をみんなまとめて持って来い」と私にいいつけました。
033
私はそれを聞いた時、
034
035
──やれ、
036
やれ──という感じがして同時に、
037
あゝこれで久しぶりに家族とも会えるかと思って、
038
ほのぼのとした歓びがこみ上げてきました。
039
私は──心も軽く──と唄にあるような、
040
はずんだ気持ちで、
041
いそいそと荷物をまとめると小川警部の
室
(
しつ
)
に行きました。
042
ところが誰も迎えに来ているような者もなく、
043
署内の様子が少し変です。
044
そのうち警官の一人が、
045
046
「これから裁判所の監房に護送するから急げ」というので、
047
私はがっかりしてしまいました。
048
さきほどからの喜びは泡のように消えてゆきそうでした。
049
すると急に
喉
(
のど
)
が渇きを訴えてきました。
050
実はもう少し前からおこっていたのですが、
051
こうなるとガマンができんようになって来て、
052
すぐに
側
(
そば
)
にいた警官の一人に、
053
054
「さきほどから喉がかわいて困っていますのじゃ、
055
すみませんがな、
056
水を一ぱいおくれ」といいました。
057
警官は素直に、
058
059
「よしよし」といって、
060
出てゆきました。
061
私は監房に居ても、
062
自分の家に居るのと同じ気持ちでおりますので、
063
至極気楽にふるまっておりました。
064
やがてコップに一ぱいの水を汲んできてくれましたが、
065
066
「これが
末期
(
まつご
)
の水だぞ」
067
といって警察官特有の眼光をキラッと動かしながら渡してくれました。
068
私は、
069
水のいっぱいはいったコップを手に受取って、
070
ごくごくとお水を
一
(
ひと
)
いきに頂きましたが、
071
飲み干して空のコップを机の上に置くわずかの時間に、
072
私の心には非常に複雑な感情が往来したのであります。
073
待てよ、
074
いまのコトバは何のことをいうてるのや。
075
短いコトバやったが、
076
トゲのある嫌な気がする──
末期
(
まつご
)
の水──とは死期の迫った人に水を飲ますことしかない。
077
そう思っていると、
078
これまで忘れていたコトバが強く胸に甦ってきました。
079
それは、
080
初めて警察官に
拘引
(
こういん
)
されて、
081
五条署にきた時にいわれた、
082
狂気じみた言葉であります。
083
──オ前タチノ一族ハ死刑ハマヌガレンカラ、
084
ソウ思ッテ、
085
ココニ入ッテ居レ。
086
ジタバタシテモ死刑ハ間違イナインダゾ──、
087
私は
088
──自分は多少なりとも世の中のためにつくして来てこそはおれ、
089
警察のやっかいになる覚えは爪かけもないわい。
090
何を阿呆なことをいうのや、
091
取り違いもあまりではないか──と思いながら、
092
聞き流してしまい、
093
094
──よく調べてくれればわかりますわい──と、
095
それからは、
096
本当に自分でもけろりと忘れていた言葉が頭に浮かび上がってきました。
097
ああそうか、
098
そういう
理
(
わけ
)
のこれが
末期
(
まつご
)
の水か、
099
それでは自分はこれから、
100
死刑になりにゆくのか。
101
そう思うと、
102
私は不思議にまた元気づいてきました。
103
私はこれまで、
104
こんなところに入れられるようなことをしたことはない。
105
これまで調べてまだ分からず、
106
いつまでもこんなところに入れられているよりはその方がよいかも知れん。
107
それでは、
108
これから死刑になりに行って来ようか。
109
死刑にされる時は、
110
大きな声で「万才」と唱えてニコニコと笑いながら、
111
極刑を甘んじて受けてみよう。
112
死刑にするならそれでもよい。
113
わしは死んだら天国で神様が待ってられる身だし。
114
そう思って私は護送車に乗ったのであります。
115
後に七カ年ぶりに保釈になって家に帰った時、
116
丁度その時の写真が新聞に掲載されているのを新聞切取帳で見ましたが、
117
いつの間に撮ったのか、
118
私の顔がニコニコと笑って写っています。
119
その切抜きの写真を見ながら死刑に行くのにニコニコ笑って行くとは、
120
自分ながらオカシなことに思いました。
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