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青い囚人服

インフォメーション
題名:青い囚人服 著者:出口澄子
ページ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :B124900c38
001 京都地方裁判所の未決(みけつ)監房は、002竹屋町通(たけやちょうどおり)柳馬場(やなぎのばんば)にいまもある赤煉瓦(あかれんが)の高い(へい)のあるところがそれであります。003そこの××号室に入ることになりましたが、004どうも死刑になるような様子はありません。
005 警察の留置場におる間は、006人の顔も見られるし、007それがいろいろの意味で心の慰めにもなりましたが、008未決に入ってしまうと、009人の顔は担当の他は見られません。010人に会うこともありません。011部屋は畳一畳敷の他に、012板間の一畳(あまり)が附いており、013手の届かん高い所に窓といえば二尺角(にしゃくかく)のものがあるきりです。014これでは非常な相違を感じさせられます。015ここに移るときに、016一日だけでしたが変な青色の着物をきせられます。017これは、018ここに来る人へのシキタリになっているようでありますが、019帯から、020腰のものまで取り替えられ、021懲役者の姿にしてしまいます。022これが私に耐えられない嫌なものでした。023かえって死刑に遭いにゆくと思った時は、024そう不愉快な気持ちになりませんでしたが、025腰のものまで取替えられ、026青い囚人服に着替えさせられた時は、027死刑よりも嫌な感じがしました。
028──こんなものを着せられるのか──と思うと、029思わずもポロポロと涙が流れ出ました。030しかし次の日は元の通り、031自分のもって来た衣服を着ることになりました。032それから毎日、033全く一人ぼっちの淋しい日々が続きました。034来る日も来る日も厚い壁に囲まれて、035ただ一人、036ぽつねんと暮らさねばならないということば、037ことに私の性格には耐えられないことでした。038この先はどうなるのやら、039信者の人、040家族のものはどうして暮らしているのか、041さっぱり分からず、042ただ、043()が出れば部屋が明るみ、044陽が()ると部屋がしずかに薄暗くなっていくというだけの日を、045幾日もはてしない気持ちで続けることになりました。
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