この村の若者丸山千代吉と胡麻川におりて魚漁り遊ぶ
鮒もろこ鰌なまずを捕獲して漁り遊びに興じゐたりき
足音をしのばせ巡査入り来り裸になりしとどなりつけたり
素裸の現行犯を引致すとわれと千代吉を駐在所に引きゆく
水泳のついでに魚をとりいたり違反にあらじと強弁をなす
丸山は青年会長じゆんじゆんと駐在巡査をときふせてをり
水泳に裸体となるは当然とわれも笑ひつ巡査に答ふ
この巡査旬日ならず白土の駐在所へと転任なしたり
白土支部
白土に支部をもうけて山田はるを教への道の担任となせり
園部にて道ときをれば白土ゆ大事おこりしと急使来れり
園部より観音峠を夜越えて和知の白土に深夜つきたり
白土の支部にしつけば山田はる子顔青ざめてわれを出迎ふ
何事とわが問ひみれば山田はるは支部閉鎖さると涙声に言ふ
信教は自由なりせば神道の布教にさやる警官あるまじ
駐在所の巡査来りて閉鎖せずば拘留すると言ひしとて泣く
支部再建
ともかくも駐在巡査にあひみんと明けるを待ちて警官をとふ
ゆきみれば胡麻郷にありし吉川と言ふわからずやの巡査なりけり
何故に閉鎖されしとたづぬれば彼には信用なしと答ふる
信用の有無はとはずわれはただ信仰篤実者を選びてまかせし
法律に違反の行為ありしかとわれたづぬれば巡査は黙せり
山田はるは中等教育うけおらず無学の女と巡査は答ふる
わが道に忠実なれば無学者も宣伝使として差支なし
法律に違反の行為ある時は直ちに職を免ぜむと答ふ
吉川は面をふくらせ目をつりてサーベル腰に出で行きにけり
閉鎖せし支部を再びたて直しわれ堂々と宣伝をなす