大阪に行かずに園部へ帰りゆく心をはぢて穴太にとどまる
高熊の山に夏陽をあびながら再び道の修行をはじめし
高熊の千引の岩の岩窟にわれは三度の修行はじむる
初夏の風は尾上をはしりつつ小鳥の声のすがしき朝なり
久方の空はれにつつ高熊の小松林にわたる涼風
霊界の道
岩窟にさむしろしきて端座すれば何時とはなしに霊界に入る
草花のしげる野の道はてもなく小松のしげる丘につづけり
蛙なく田圃の中の白き道進めばいつか尾上にのぽれり
貴の女神
嚠喨たる音楽きこえ卯の花の中にたたせるかしこき女神
よくみれば七色光の輪を負ひて責の女神は笑みていませり
なつかしく恋しきままにおそるおそる御手を握ればとけ入る心ちす
白魚の手を捩りしと思ふまに女神の姿は消えてあとなし
いづくよりか瑞の御魂とのらす声頭の中よりきこえ来るなり
黄金の衣
かへりみればわが身はいつか黄金色の錦の衣まとひてゐたりき
不思議よとあとふりかへるその刹那はるかへだてて女神は笑ませり
何神におはしますやとおそるおそるたづぬる言葉も口ごもりたり
時鳥丘のあちこちきこえつつわが面なでて涼風わたる
瑞霊の和魂
われこそは瑞の御魂の和魂今より天にのぼるとのらせり
今しばし待たせ給へと願へども女神はきかぬふりして歩ます
吾もまた女神のあとに従ひて見えがくれしつ森林に入る
あまりにも女神の足の早くしてその御姿失ひにけり