高熊の山の諸木をもむ風のはげしき音にわれにかへりぬ
よくみれぱ天地忽ち一変しわれ高熊の岩窟にゐし
かかるをり山下に人の声ありて松吹く風の琴をかなづる
つぎつぎに人声近くなりにつつ西田元教たづね来れり
西田の懇願
元教はわれをみるよりひれ伏して嬉しさあまり落涙してをり
わが修行のもなかを何故たづね来しとなじれば元教地に伏してなく
御修行の邪魔とは知れど神様の御言葉ゆゑにのぼり来しといふ
一時も早くお帰り下されと願ふ言葉にまことこもれり
大阪ゆわざ人来り会長に下阪ねがふとたのみゐるとふ
この男何れにあるやとたづぬれば園部の支部に待てりと答ふ
大阪ゆ来りし人の姓名はいかにと吾は忙しく問へり
大阪の谷町九丁目元教が叔父の松本留吉といふ
姫神の声
ともかくも一度園部に帰らむと西田を伴い下山せむとす
高熊山下るにさきだち神界の命令如何とうかがひてみし
一時も早く園部へ帰れよと空中にきこゆる姫神の声
何となく心勇みて初夏の日を高熊山を下り初めたり
元教はあとに従ひ道すがら大阪のはなしつづけて飽かず
園部支部
産土と母の家路を拝辞していよいよ園部の支部にかへれり
園部支部の神前にたちうかがへばなれは園部へとどまれといふ
やむを得ず元教ひとり翌朝をたち出で大阪谷町に向ふ
西田下阪
元教は大阪谷町叔父の家に尻をすゑつつ宣伝をなす
元教を大阪おもてにつかはしてわれは園部に道説きにけり
元教は叔父の松本伴ひて三等汽車にのりて下阪す
大阪に下れば神徳あらはれて大本西田の名は高まれり
伯父の家に支部をつくりて元教は大阪人に宣伝をなす