霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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2-5

インフォメーション
題名:2-5 著者:出口王仁三郎
ページ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-11-01 03:15:00 OBC :B113800c14
 大槻は毎夜両女(ふたり)(わが)肩を打たせつつ語るらく、母は非常に衰弱したり。汝()既に十三歳に及ぶ。妹も既に十歳。物の道理は多少弁知するならん。汝等二人を(わが)家にて養育せんは安き事なれども人間は苦労せざれば一人前の人間となること(あた)はざるべし。依而(よつて)近日(きんじつ)弥々(いよいよ)摂州へ奉公に()らん。母のこと心に掛けず一日も早く得心(とくしん)なし()指図(さしづ)に任せよ。(いや)とあらば今日(けふ)限り一食一飲(めしもちや)飯も茶も与ふること相成(あいなら)ずと、鬼の如き大槻の(ことば)両女(ふたり)はちぢみ(あが)り何と応答(いらへ)もなく(ばか)りなりしが彼は、ええ辛気(しんき)女郎(めろう)と言ひつつ蝶螺(さざゑ)の如き鉄拳を(ふる)つて頭部面部の区別なく力任せに打据(うちす)えたれば、両女(ふたり)は悲鳴を上げて泣き叫ぶ(こゑ)近隣に(きこ)えけれ(ども)、誰一人として中に()り挨拶(など)を為すもの無かりしは皆(かれ)(をそろ)しき因縁付けなるを知り()ればなり。
 開祖獄中に端座し一心不乱に神祇を崇敬し、()一日(ひとひ)も早く出獄させ給へと祈願し給へるに、一朝(いつてう)俄然(がぜん)眠気(ねむけ)(しき)りに(もよほ)(きた)りて数分時(すうふんじ)(あいだ)無我の(さかい)()りしに、夢に威風厳然たる大神現はれ玉ひて、(われ)は天照大神なり。昔日(むかし)(つるぎ)より今の菜刀(ながたな)と世俗は(へん)すれど(やが)日本(にほん)神刀(しんとう)必要の時節(きた)るべし。此神刀(しんとう)(いまし)(さづ)く。(いまし)()神刀(しんとう)を以て世の所在(あらゆる)悪鬼邪神を平定すべし、と御手(みて)づから開祖に授け玉ひしかば、恐れ(かし)こみ拝受せしと見しは瞬時の夢にてありしが、不思議なる(かな)、大神の夢裡(むり)に授け給ひし神剣(しんけん)刃先(はさき)七寸五分の短刀、(さや)は無けれど現然開祖の前に置きありしかば、其霊夢(れいむ)の事実なりしに驚喜し直ちに獄中ならば汚染するの恐れありと(うやうや)しく押戴(おしいた)だき懐中に秘蔵し、出獄後は神床(かむどこ)に祭りて神体(しんたい)と為し給ひけり。()神剣(しんけん)目下(もくか)大本教(だいほんきやう)の神宝として大切に保存しあり。
 斯く述べ(きた)らば世人(せじん)(あるひ)は言はむ。
かかる奇怪至極なる事実のあるべき()なしと。
これ幽理(ゆうり)の深奥に透徹せざる浅学者(せんがくしや)(りう)の偏見なり。
本居(をう)玉鉾(たまぼこ)百首にも
(あや)しきをあらじといふは世の中に あやしきしらぬしれ心かも
 余輩(よはい)(わが)皇室の宝典たる古事記に明記せる顕著(けんちよ)なる例証を()に引証し、以て神異(しんゐ)を拝する凡俗の疑問を解かむ。古事記(なか)(まき)、神武天皇(すなわ)(かむ)日本(やまと)磐余彦(いわれびこ)(みこと)の段、御東征の記中(ふみ)
故神倭伊波礼毘古命従其地廻幸。到熊野村之時。大熊髪出入。即失。爾神倭伊波礼毘古命。急忽為遠延。及御軍皆遠延而。伏。此時熊野之高倉下。賷一横刀。到於天神御子之伏地而。献之時。天神御子即寝起。詔長寝乎。故受取其横刀之時。其熊野山之荒神。自皆為切倒。爾其惑伏御軍。悉寝起之。故天神御子。問獲其横刀之所由。高倉下答曰己夢云。天照大神高木神。二柱神之命以。召建御雷神而詔。足原中国者。伊多玖佐夜芸帝阿理那理。我御子等。不平坐良志。其足原中国者。専汝言向之国故。汝建御雷神可降。爾答曰。僕雖不降。専有平其国之横刀。可降。降此刀状者。穽高倉下之倉頂。自其堕入。故建御雷神教曰穽汝之倉頂以此刀堕入。故阿佐米余玖汝取持。献天神御子。故如夢教而。且見己倉者。信有横刀。故以是横刀而献耳。於是亦高木大神之命以。覚白之。天神御子。自此於奥方莫使入幸。荒神甚多。今自天。遣八咫烏。故其八咫烏引道。従其立後応幸行。云々。底本では訓読のフリガナが付いているが省略した。訓読文は次のようになる(武田祐吉注釈校訂、角川文庫『古事記』の青空文庫テキストを加工。割注は省略)
 かれ神倭伊波礼毘古の命、其地(そこ)よりり幸でまして、熊野の村に到りましし時に、大きなる熊、髣髴(ほのか)に出で入りてすなはち失せぬ。ここに神倭伊波礼毘古の命(にはか)にをえまし、また御軍も皆をえて伏しき。この時に熊野の高倉下(たかくらじ)、一横刀(たち)をもちて、天つ神の御子の(こや)せる(ところ)に到りて献る時に、天つ神の御子、すなはち()め起ちて、「長寝(ながい)しつるかも」と詔りたまひき。かれその横刀(たち)を受け取りたまふ時に、その熊野の山の(あら)ぶる神おのづからみな切り(たふ)さえき。ここにそのをえ伏せる御軍悉に寤め起ちき。かれ天つ神の御子、その横刀(たち)を獲つるゆゑを問ひたまひしかば、高倉()答へまをさく、「おのが夢に、天照らす大神高木の神二柱の神の命もちて、建御雷(たけみかづち)の神を()びて詔りたまはく、葦原の中つ国はいたく(さや)ぎてありなり。我が御子たち不平(やくさ)みますらし。その葦原の中つ国は、もはら(いまし)言向(ことむ)けつる国なり。かれ汝建御雷の神(あも)らさね」とのりたまひき。ここに答へまをさく、「(やつこ)降らずとも、もはらその国を(ことむ)けし横刀あれば、この(たち)を降さむ。この刀を降さむ状は、高倉下が倉の(むね)を穿ちて、そこより堕し入れむとまをしたまひき。かれ朝目()く汝取り持ちて天つ神の御子に献れと、のりたまひき。かれ夢の教のまにま、(あした)におのが倉を見しかば、(まこと)横刀(たち)ありき。かれこの横刀をもちて献らくのみ」とまをしき。
 ここにまた高木の大神の命もちて、(さと)し白したまはく、「天つ神の御子、こよ奥つ方にな入りたまひそ。荒ぶる神いと(さは)にあり。今天より八咫烏(やたがらす)(つか)はさむ。かれその八咫烏導きなむ。その立たむ(しりへ)より幸でまさね」と、のりたまひき。かれその御教(みさとし)のまにまに、その八咫烏の後より()でまししかば、吉野(えしの)河の河尻に到りましき。時に(うへ)をうちて()取る人あり。ここに天つ神の御子「(いまし)は誰そ」と問はしければ、答へ白さく、「()は国つ神名は贄持(にへもつ)の子」とまをしき。其地(そこ)より幸でまししかば、尾ある人井より出で来。その井光れり。「汝は誰そ」と問はしければ、答へ白さく、「僕は国つ神名は井氷鹿(ゐひか)」とまをしき。すなはちその山に入りまししかば、また尾ある人に遇へり。この人(いはほ)を押し分けて出で()。「汝は誰そ」と問はしければ、答へ白さく、「僕は国つ神名は石押分(いはおしわく)の子、今天つ神の御子()でますと聞きつ。かれ、まゐ向へまつらくのみ」とまをしき。其地(そこ)より蹈み穿ち越えて、宇陀(うだ)に幸でましき。かれ宇陀の穿(うがち)といふ。
 是れ即ち神武天皇の妖神(ようしん)に悩まされ給ひて、引卒し給へる軍隊(みゐくさ)までも害悪(さわり)(くる)しみ進退(これ)(きわ)まるの難境に陥りしを天神(あまつかみ)神剣(みつるぎ)(くだ)し給ひて妖邪(あだ)を平定し御軍(みゐくさ)(たす)け給ひし確証なり。()八咫烏(やたがらす)を遣はして皇軍(みゐくさ)を導き大勝利を()(まつ)らせ賜ひしも神異の測るべからざる底本では「る」が欠落している。好適例(こうてきれい)ならずや。
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