二十四歳の頃
妙霊教会に詣で奥歯臼歯の劇痛を封じてもらひ信仰に入る
造化三神天照皇大御神あさゆういのる妙霊教会
妙妙をいくたびとなくくりかへし信徒とともに神前にいのる
十三歳父と本部に詣でしがふたたび叔父と二十四の年詣でぬ
布教師の叔父に誘はれ兵庫県春日江村の本部に参詣したり
妙霊教会本部に詣れば教祖なる山内教主布教師になれと勧む
勢至翁の言葉にわれは面喰ひ熟考しますといひてわかれし
教会の教導職のいづれもが現代ばなれしたるを忌みし
布教師になれば吾も亦かくなるかと思へばつくづくいやになりたる
勢至翁の言葉につきてわが叔父は教師になれと勧めてやまず
学校の教師嫌ひて労働者になりし吾にはもとより意志なし
惟神神のをしへはこのめども布教師だけは御免とことはる
どこまでも神信心はいたしますおゆるしあれと逃げ帰りたり
○
獣医なる従兄井上直吉は神に詣でてかんがかりとなる
井上に憑依なしたる精霊は人間以下のものにぞありける
野天狗や野狐狸に憑依されかんがかりよと誇りゐたりき
父も叔父も叔母も従兄もことごとく妙霊教会の信仰者なりき
荒れくるふ神憑状態ながめては信仰心もうすらぎてゆく
数年後に獣医井上直吉は精神異状をきたして死せり
我が国の神道宗教の大方は皆このやうなものばかりとおもふ
金儲け待ち人縁談病なほしそんなことのみしてる教会
ありがたいああ有難い妙妙と百万だらりくりかへす信者
神前にドンドン太鼓をうち鳴らし妙妙妙と拝む布教師
水害に遇うても妙妙親死ぬも子死ぬも妙妙妙霊教会
われもまた隣の家が焼けた時妙妙と祈り呶鳴られにける
何が妙だ他人の災難見ながらに馬鹿にするなと天窓なぐらる
妙妙と祈つてをるにあざけると誤解をまねく妙妙教会