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四 支那道院との提携

インフォメーション
題名:四 支那道院との提携 著者:出口王仁三郎
ページ:17
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-05-06 14:37:25 文字数:2043 OBC :B122200c05
 大正十二年九月、彼の関東大震災に際し、支那に於ける新宗教支那道院の慈善事業部たる世界紅卍字会の中華総代表(こう)延爽(えんさう)氏の一行が、東京震災救護局訪問のため渡日し、多大の銀及び米穀を寄附しましたが、この時に綾部を訪問し、私と会見したのが動機となつて、皇道大本と支那道院との提携となりました。
 私は内地の排他的既成宗教は後回しにして海外の新しい宗教運動や精神運動と提携して世界の平和と幸福のために活動しようと思ひました。特に日支両国は、地理の上からは一韋(いちゐ)帯水(たいすゐ)一般には「一衣帯水」と書く。、国防上からは唇歯(しんし)輔車(ほしや)、商工業上からは有無(あひ)補ひ、以て自然的に密接不離の関係があります。故に欧米に比して日支両国は特殊の地位にあり、共存共栄の運命に惟神的に置かれてゐます。それで両国は心の底より真の親善的交情を保有し、決して疎隔すべきものではないのであります。然るに(やや)もすれば、全支的大排日運動を惹起するに至るのは、何かの理由があるのではなからうか、深く考究すべき余地が充分あると私は考へてゐました。要するに両国間の離反と不親善とは、互に意志そのものの疎隔といふことが一大原因と思つてゐました。
 五月九日を以て国辱記念日第一次大戦中の大正4年(1915年)5月9日袁世凱政権が日本の対華21カ条要求を受諾した日。と称へ、毎年一般に仕事を休み、之が復仇(ふくきう)の想念を去らない如きは、東洋の平和と人道の幸福のために、由々しき、悲しむべき大問題であります。又一方には学生団体は、全国各省にわたつて常に排日宣伝の急先鋒となつて活動してゐるが如きは、日本及び日本人として看過すべからざる問題だと思ひます。単純な幼稚な彼等学生の頭脳には、日本人は憎むべき国民だ、侵略的国民だ、人の弱身につけ込む風邪の神だ、中国の仇敵だと、教へられ且つ煽動せられ、それを固信して成長の後も先入主(せんにふしゆ)底本では「先入生」だがルビは「せんにふしゆ」なので「主」に修正した。となり、日支両国の交情に一大障害を(きた)すべきは当然であります。何程日支親善を日本当局が宣伝しても、一旦深く深く植ゑ付けられた信念と悪感情は、容易に除去されるものではありません。そして将来に於て日支国交の上に一大禍根を構成するの恐れがありはしまいか、と私は恐れてゐました。我々はこの際国家のため東洋のために、以上の如き根底の深い悪感情を払拭し誠心誠意両国親善の実を挙げんと思はば、第一支那の耳目を聳動(しようどう)するに足る。公平無私な精神的表示を以て、最も強き感動を与へ、両国民間の感情を融和し、漸次に良好な結果を招くことに努めなくてはならぬ。要するに日支両国共通の大理想を樹てて、それを現実化せしめるより外はないのであります。
 それで、先づ日本人は支那語を研究すること、民国学生の待遇に注意すること、在支日本人の劣悪分子を駆逐し、至誠至直の人物を送ること、両国学者芸術家の来往親交を計ること、日本の代表的人物が支那に永住すること、両国の教育家が(たがひ)に交換すること、両国婦人間の交際を奨励すること、両国間の交通機関を完備し、貿易発展の助成機関を整頓し、両国同業者会合の度を多くすること、(とう)数へ(きた)れば幾らもあらうが、両国親善の最も適切なるものは、日支両国の思想家及び宗教家の握手提携であります。一大理想家が日本に現れて精神的親善の実を挙げ、東洋の禍根を切断する大業を遂行する者がなければならないのであります。
 然るに因循(いんじゆん)姑息(こそく)、私利私欲の(ほか)何物もない現代には到底望まれない今日の状態であります。過去に於て日本の人心を支配して来た仏教や儒教は、当時の日本の思想家や宗教家が支那に進んで留学したり、支那からも宗教家が頻々として渡日するなど、宗教家の勢力は盛んなもので、両国とも甚大な帰依と崇信とを受けたものであります。そのため国交上相互に大なる好影響を受けたものであります。支那には過去に王陽明、老子、孔子、孟子の如き偉大な思想家を出した国民であるから、今後如何なる大人物が現れて、一大宗教を樹立するかも知れないと私は考へてゐました。そこへ支那道院が現れたので、私は実に歓喜に堪へざるところであると思ひ、日本の思想家宗教家たるものは、今日民国に於ける最大権威たる支那道院の教理や宣伝使を軽視することなく、共に握手提携して、その学ぶべきは学び、教ふべきは教へ、相互に修養研究して、両国の思想界宗教界に貢献するところが無くてはならないと思ひました。
 然るに日本の思想家宗教家は、支那道院が関東の震災に就き絶大なる同情を寄せて日本に(きた)つたに対し、猜疑の(まなこ)を以て迎へ、折角の好機を(いつ)して了つたのであります。ここに於て吾人は(おほい)に奮起して、日支親善の好機を逸せざるやうにと、侯延爽氏と会見し、相互に至誠を吐露し、精神的契合をなすに至つたのであります。
 爾来(じらい)皇道大本と支那道院との関係は益々親密の度を加へ、今日では提携といふよりは寧ろ合同の域にまで進んでゐます。満洲事変以来、日支が衝突してゐた時も、両教は全く協力して活動してゐるのであります。
 私は支那道院が日支両国民の親善に役立ち、やがては朝鮮、印度等東亜諸国民の精神連盟を()すべき階梯となり、以て世界万国に及ぼすべき実行機関たることを疑はないのであります。
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