霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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神示の世界経綸

インフォメーション
題名:神示の世界経綸 著者:
ページ:289 目次メモ:
概要: 備考:2023/10/10校正。全集に掲載されているのは第9章までだが、参考のために第10章を『皇道維新と経綸』を底本にして末尾に掲載した。 タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-10-10 02:52:37 OBC :B121806c085
第一章 天津日嗣天皇
 
 天地開闢(かいびやく)以来依然として高天原に成り坐せる(すめ)大御親(おほみおや)(がみ)、天之御中主大御神より伊邪那岐大御神の御経営の(をは)りに(おい)て、皇祖(くわうそ)天照大御神の御神勅(ごしんちよく)()りて御子(おんこ)正勝(まさか)吾勝(あかつ)勝速日(かちはやひ)天忍穂耳(あめのをしほみみの)(みこと)に天下を治むる御天職を授け給ひ、皇孫(くわうそん)天邇岐志(あめにぎし)国邇岐志(くににぎし)天津(あまつ)日高(ひだか)日子(ひこ)番能(ほの)邇邇芸(ににぎの)(みこと)に、五伴緒(いつとものをの)(こと)、三種の神器と三神を()へ賜ひて、世界を経綸し天下を治むる政事(せいじ)制詔(せいせう)を授け給ふ。
 (ここ)皇孫(すめみまの)(みこと)は筑紫の日向の高千穂に()しまして、天運循環の神則に()りて人文開発し、天津日嗣(ひつぎ)天皇の御天職を顕彰し給ふ時運(じうん)の到来を待ち給ふ。
 この御子(みこ)天津(あまつ)日高(ひたか)日子(ひこ)穂々出見(ほほでみの)(みこと)、この御子(みこ)天津(あまつ)日高(ひたか)日子(ひこ)波限建(なぎさ)鵜茅葺不合(うがやふきあえずの)(みこと)、この御子若御毛沼(わかみけぬの)(みこと)(また)(みな)豊御毛沼(とよみけぬの)(みこと)(また)(みな)神倭(かむやまと)伊波礼毘古(いはれびこの)(みこと)と称す。後世この(みこと)に神武天皇の御諡称(おんおくりな)(たてまつ)る。
 これより万世一系御歴代(ごれきだい)の天皇は和光(わくわう)同塵(どうぢん)の神策を垂れ給ひ、明治の御代(みよ)に到り天運(ここ)に循環して世界の人文は以て皇道を宣揚教化せしむるの智域に達し、交通機関の発達は弥々(いよいよ)益々(ますます)天津日嗣(ひつぎ)天皇の御天職を顕彰し、以て世界を総攬(そうらん)統一するの機運を促進せり。嗚呼(ああ)盛大なるかな昭和聖代の鴻業(こうげふ)曙光(しよくわう)、大日本は神国(しんこく)なりと称する所以(ゆゑん)(じつ)(ここ)に存するなり矣。
 
第二章 皇国御経綸の基礎
 
 天津日嗣(ひつぎ)天皇の御経綸の憲制(けんせい)は、皇祖天照大御神(あきら)かに神勅を以て示し賜ふ。
 三種の神器は、天津日嗣(ひつぎ)天皇御経綸の根本基礎なり。
 其一(そのいち)遠岐斯(をぎし)八尺(やさかの)勾璁(まがたま)(かがみ)なり。この名称は(かしこ)くも天津日嗣(ひつぎ)天皇の国体と皇祖の言依(ことよさ)し賜ひし神聖なる御遺訓と、一体不離の御性質なることを示させ給ふ(おん)意義なり。上古(じやうこ)は皇室に語局(かたりべ)と謂ふ(つかさ)ありて、御遺訓を言嗣(いひつ)(きた)りしものなり。掛巻(かけまく)(かしこ)御鏡(みかがみ)とは、皇祖の言依(ことよさ)し賜ひし御遺訓なり、即ち皇宗(くわうそう)天武天皇が御後葉(ごこうえふ)(つた)へ賜ひし帝皇(ていわう)口嗣(こうし)(および)先代旧辞(くじ)撰録(せんろく)せる邦家(ほうか)()経緯(けいゐ)王化(わうくわ)()鴻基(こうき)(えん)皇典(くわうてん)古事記(こじき)御事(おんこと)なり。
 (その)()草那芸(くさなぎ)()(つるぎ)なり。(また)(みな)都牟刈(つむがり)()大刀(たち)()ふ。この草那芸(くさなぎ)()(つるぎ)の御本体は大日本神国(しんこく)なり。即ち御名(みな)()はくさぐさ(種々(くさぐさ))の天賦(てんぷ)の本性本能を発揮して天津日嗣(ひつぎ)の御経綸を顕彰し、以て天下を治むる大機関に在ります事なり。都牟刈之大刀の意義は、日本国は国別に、水陸、気候、人類、動植産物が世界を経綸する基礎的本能を具備し()ると()ふ事たるなり。
 
  皇道顕彰の国
 
 皇祖の御遺訓に明瞭に示し給へり、この国は丹波国(たんばのくに)なり。神聖なる皇道を闡顕(せんけん)(まつ)り、天津日嗣(ひつぎ)天皇の御天職を行ひ給ふ(おん)国体の精華を発揮し奉るべき本能を具備せる事が、丹波国の一大天賦的使命たるべきなり。
 其他(そのた)の国々にも(みな)天賦の特質と本能を具備し、其国に(うま)()でたる人々は必ず其国の特質本能を発揮すべき性質を、先天的に具有し居るものなり。
 
第三章 神聖なる皇霊の御親政
 
  三神の神政経綸
 
 皇祖の御遺訓に、
(その)遠岐斯(おぎし)八尺(やさかの)勾璁(まがたま)(かがみ)(また)草那芸(くさなぎの)(つるぎ)、亦常世(とこよの)思金神(おもひかねのかみ)手力男神(たぢからをのかみ)天石門別(あめのいはとわけの)(かみ)()へ賜ひ()詔者(のりたまへらくは)此之(この)(かがみ)()(もはら)(あが)御魂(みたま)為而(して)吾前(あがまへ)(いつ)くが(ごと)伊都岐(いつき)(まつ)れ、次に思金神は前事(みまへのこと)取持(とりもちて)為政(まつりごとせよ)
 即ち(この)御神勅の(まつりごと)を行ひ奉る神聖なる御神政がありて、人が神機を(あらは)し奉る行事なり。(また)常世思金神の御活用に()りて、手力男神と天石門別神が御活動あらせらるる神聖なる御神事なり。要は神聖なる神霊に奉斎する最高の行政機関なり。神聖なる神祇官(しんぎくわん)の神政なり。中古の無能的形式の如きものにあらず。三神(さんしん)不離(ふり)の御活動なり。(この)神聖なる神政は、佐久久斯侶(さくくしろ)伊須受能宮(いすづのみや)に於て奉行(ほうぎやう)すべき御事(おんこと)なり。
 
第四章 国家経綸の根本機関
 
  五伴緒命の行政
 
 国家経綸を運用する五大機関が五伴緒神(いつとものをのかみ)の職掌なり。
(一)天児屋(あめのこやねの)(みこと)中臣(なかとみの)(むらじ)())世界の経綸を統轄主宰する職掌にして、現代の所謂(いはゆる)外務なり。
(二)布刀玉(ふとたまの)命(忌部(いむべの)(おびと)の祖)人の天賦の性能に適せる職を(さだ)め統轄する職掌にして、現代の所謂(いはゆる)農工商務なり。
(三)(あめの)宇受売(うづめの)命(猿女(さるめの)(きみ)の祖)女子の天職を行ふ修養教育を司る職掌にして現代の所謂(いはゆる)女子教育なり。
(四)伊斯許理度売(いしこりどめの)命(鏡作(かがみつくりの)(むらじ)の祖)国家の経綸を批正(ひせい)し公平に監査討究し、以て神聖なる天津日嗣(ひつぎ)政事(まつりごと)を正しく行はしむる職掌にして、現代の所謂(いはゆる)司法なり。
(五)玉祖(たまのおやの)命(玉祖(たまのおやの)(むらじ)()の祖)教育文芸(とう)人生の目的たる文明開発を扶掖(ふえき)教導する職司(しよくし)にして、現代の所謂(いはゆる)学務なり。
 皇国経綸の行政機関としては、以上の五大別に区分して経営すベき事は、神聖なる皇祖の御遺訓皇典古事記に明瞭に示させ給へり。
 
第五章 国家の経済
 
 皇国経済の根本義は国家家族主義にあり。この行政機関は、
(一)県主(あがたぬし)と謂ひ、
(二)直(あたへ)と謂ふ。
 この職掌は(もつぱ)ら衣食住の国民経済を司るなり。由来(ゆらい)天津日嗣(ひつぎ)天皇の食知(しろしめし)給ふ、大日本神皇国(しんくわうこく)国民経済の根本義は、
 食糧は日本国内に於て生産するものを以て、国民を養ふべきものたり。
 衣服は気候風土に適し、人格に応じ、職業に応じ、礼節に応じ、待遇に応じたる服制を統一して数量を定め、節制以て過不足なからしむべきものたるなり。
 住宅は職に応じ、家族の多寡に応じたる家屋を制定すべきものなり。
 これ皆「あがたぬし」「あたへ」等の職掌なり。
 要するに大日本神皇国(しんくわうこく)経済の根本義は国民全般に衣食住の後顧(こうこ)(うれ)ひなからしむる事にあり。中古及び現代の財政経済は根本に(おい)て、我が国体の本義に矛盾し居れるなり。租税制度は本来外国模倣の制度にして、他国を奪略征服して建国せる猟獲(れふくわく)的国体の悪制なり。貨幣制度即ち黄金万能主義は全然(おん)国体の本義と根本的矛盾して居るものなり。此の(くだり)につき神聖なる皇祖の御遺訓に顕然として、天照大御神の皇宗に言教(ことをし)へ給へる御神勅あり。次ぎに其の御神勅の本文を発表し(たてまつ)り、皇国財政の根本義及び外国経綸の大方針を披瀝(ひれき)(まつ)るベし。
 
  皇国経綸の矛盾
 
 抑々(そもそも)神聖なる皇祖の御遺訓天津日嗣(ひつぎ)天皇御統治の洪範(こうはん)は、皇典古事記に瞭々(れうれう)として明示し給へり。然るに古来この神聖なる皇祖の御遺訓に矛盾せる、国家経綸が行はれつつある事を日本の歴史は、的確明白に証明し居れり。
 由来(ゆらい)御皇室には神聖なる皇祖の御遺訓、即ち神聖なる天津日嗣(ひつぎ)天皇御統治の洪範(こうはん)炳乎(へいこ)として存在し給ふにも(かか)はらず、二千年(らい)其の精神を発揚し(あた)はざりしに就ては、実に甚深(じんしん)宏遠(かうゑん)なる皇祖の御神策が其の基因を為したる事は、神訓(しんくん)によりて明々白々たり。
 
  崇神天皇の遠慮神策
 
 (おそ)れ多くも万世一系の御皇統を保ち給ふ天津日嗣(ひつぎ)天皇の御天職は治国(へい)天下が其の御本能にあらせらるる御事(おんこと)は、皇祖の御遺訓に(あきら)かなる処なり。畏れ多くも天津日嗣(ひつぎ)(おん)代々(だいだい)の天皇より、今上(きんじやう)現人神(あらひとがみ)陛下に至らせ給ふ()なこの天下を治むる御事(おんこと)を以て、万世一系天津日嗣(ひつぎ)天皇の御天職と為させ給ふなり。然るに皇宗(くわうそう)御真木入(みまきいり)日子(ひこ)印恵(いにゑの)(みこと)(崇神天皇)は、天地開闢以来の世界の状勢を洞察し給ひ、天津日嗣(ひつぎ)天皇の天職を発揮し給ふ時運の前途()遼遠(れうゑん)なることを(おもんぱか)り給ひ、其の天運循環して御天職を顕彰し給ふ時運到着までの時代は、(もつぱ)和光(わくわう)同塵(どうぢん)以て世界の文物(ぶんぶつ)制度を摂取して、一は世界各国招引(せういん)の方便と為し給ひ、交通機関発達して世界経綸の利便と、皇道教化の本義を理解すべき人智開発の時運を待ち給へる、宏遠深大なる御神策を建立(こんりふ)し給ひたるに()るなり。
 この空前絶後の遠大なる御神策を行ひ給ふ為に、国本(こくほん)の二大根本義の変革を実行し給へり。
(一)神器を別殿(べつでん)に祭り給ひ、皇女豊鉏入(とよすきいり)日売(ひめの)(みこと)(もつぱ)ら其の拝察を(つかさど)らしめ給ひし御事(おんこと)、及び、
(二)租税徴収の(たん)(ひら)き給ひし御事(おんこと)なり。
 第一(かしこ)れ多くも神器を別殿に祭り給ふ御事(おんこと)は、皇祖の御神勅に
 此之(この)(かがみ)()(もはら)為我魂而(あがみたまとして)如拝吾前(あがまへをいつくがごと)伊都岐(いつき)(まつれ)
 伊都岐(いつき)(まつ)れと()り給ふ如く、朝夕に天津日嗣(ひつぎ)天皇が(おん)(みづか)ら奉斎し給ふべき御鏡(みかがみ)やあたかかみ別宮(べつぐう)に敬遠し給ひし御事(おんこと)は、誠に御神勅に(もと)り給ふ如き(おん)事柄なるも、これは(おん)国体の精華を隠し給ひて和光同塵摂取、(もつぱ)ら世界統一の時運到来に到るまでの、一時的方便の御処置にあらせられたるなり。()調貢(みつぎ)を初めて徴収する(たん)(ひら)き給ひたる事は、世界摂取統一の御方策(ごはうさく)としては最も必要なる準備的御政策にして、()(みな)世界の大勢(たいせい)を御洞察の結果に(おは)すなり。崇神天皇が此の御遠慮神策を建て給ひし以来、現代に至る二千有余年間一貫せるこの御方針は、御歴代の天皇御蹈襲(ごたうしふ)あらせられたるなり。この故に崇神天皇即ち御真木入(みまきいり)日子(ひこ)印恵(いにゑの)(みこと)御世(みよ)を称して、
謂所知初国之御真木天皇(はつくにしらししみまきのすめらみこととまをす)
と神聖なる皇祖の御遺訓皇典古事記に記させ給へり。この初国(はつくに)云々の意義は、世界摂取の機会を始め給ひし天皇と申し(たてまつ)るなり。この天皇の段は大日本言霊学(げんれいがく)の解釈によりて其の御真義を説明する時は、実に偉大なる驚くべき(おん)国体の精華を発揚し(たてまつ)る主要なる事実の顕現されあるなり。(此の真義は後日(こじつ)期を見て発表せんとす)
 要するに二千有余年以前、皇宗崇神(すじん)天皇が御計画あらせられし、和光同塵摂取の御神策の目的は、明治天皇の御一代の鴻業(こうげふ)に於て全く其の御計画の本旨を達し給へるなり。故に中古以来の日本歴史に顕れ居れる事柄の多くは、神聖なる(おん)国体の範示(はんじ)的行為に非ざるを知るべし。
 
  国光発揚の時代
 
 国光(こくくわう)発揚国運発展の時期は現代今上(きんじやう)陛下の昭代(せうだい)なり。この故に明治天皇は戊申(ぼしん)詔書(せうしよ)(くだ)し給ひて、
『神聖ナル祖宗ノ遺訓(中略)ハ(へい)トシテ日星(じつせい)ノ如シ、(まこと)()恪守(かくしゆ)淬礪(さいれい)(まこと)(いた)サハ国運発展ノ本近ク斯ニ在リ(ちん)方今(はうこん)世局(せいきよく)ニ処シ(中略)維新ノ皇猷(くわういう)恢弘(くわいこう)祖宗(そそう)ノ威徳ヲ対揚(たいやう)セムコトヲ庶幾(こひねが)フ』
と教へ覚し給へる所以(ゆゑん)なり。此の神聖なる天津日嗣(ひつぎ)明治天皇の御遺詔(ごゐせう)は、実に昭和聖代に於ける国運発展の基礎を示し給ひし御教訓なり。
 
  世界平和の基礎
 
 (そもそ)も神聖なる皇祖の御遺訓を闡顕(せんけん)(たてまつ)(おん)国体の精華を発揚する事は世界平和の根本基礎なり。(しか)して世界平和の第一着たるべき事業は、財政経済の根本変革を以て第一の要件と為すに在り。由来(ゆらい)金銀を貴重視する慣習は古今世界の文野(ぶんや)「文野」とは文明と野蛮のこと。を通じ、人間社会の常理(じやうり)の如く信仰せられつつありて、就中(なかんづく)貨幣として金銀の価値は流通経済上に於ける利便なるにありて、(だい)は国家(せう)は個人の階級的標準ともなりつつあり。それが為には、一は全然逸居(いつきよ)坐食(ざしよく)以て巨額の財を収め()ほ終始(これ)を増殖し、一は勤労するも()ほ衣食の()に窮乏して遂に惨死(ざんし)するものもあるに至れり。(しか)して()た国際の競争、産業の競争、国家の興亡、戦争の動機、人心の腐敗、諸多の犯罪は(ほとん)(ことごと)く黄金の獲得欲望に基因するなり。この金銀本位の財政経済の結果は、限りある財貨を限り無き欲望に満足せしめんとするが故に、無限の罪禍を醸成(じやうせい)するに至るなり。()れ人生の本義天地(てんち)化育(くわいく)玄理(げんり)を知らざる野生的文明の結果なり。(けだ)し昭和の現代は、この矛盾を根本的に消滅せしむべき庶政(しよせい)の改革時代に到着せること、歴然として(おほ)ふべからざるものなり。
 
  皇国財政の根本義と神勅に因る日本の使命
 
 神聖なる皇祖の御遺訓は、天津日嗣(ひつぎ)天皇の皇道経綸を示させ給ふものにして、就中(なかんづく)財政経済の弊害禍根(くわこん)救治(きうち)すべき皇祖の御神勅あり、(ここ)(つつし)みて其の要旨を記し(たてまつ)り以て大日本神国の責任を自覚し、一は以て(おん)国体の財政経済の矛盾せる事の(しよう)と為すべし。
 
古事記中巻 帯中(たらしなか)日子(ひこの)天皇(すめらみこと)仲哀(ちうあい)天皇)の段(前略)
其大后。息長帯日売命者。当時帰神。故天皇坐筑紫之訶志比宮。将撃熊曾国之時。天皇控御琴而。建内宿禰大臣。居於沙庭、請神之命。於是大后帰神。言教覚詔者。西方有国。金銀為本。目之炎燿。種々珍宝。多在其国。吾今帰賜其国。
(中略)今如此言教之大神者。欲知其御名。即答詔。是天照大神之御心者也。亦底筒男、中筒男、上筒男、三柱大神者也。底本には訓点とフリガナが付いているがここでは省略した。読み下し文「その太后息長帯日売の命は、当時(そのかみ)()せしたまひき。かれ天皇筑紫の訶志比(かしひ)の宮にましまして熊曽の国を撃たむとしたまふ時に、天皇御琴を()かして、建内の宿禰の大臣沙庭(さには)に居て、神の命を請ひまつりき。ここに太后、神()せして、言教へ(さと)し詔りたまひつらくは、「西の方に国あり。(くがね)(しろがね)をはじめて、目耀(まかがや)種種(くさぐさ)珍宝(うづたから)その国に(さは)なるを、(あれ)今その国を()せたまはむ」と詔りたまひつ。(中略)「今かく言教へたまふ大神は、その御名を知らまくほし」とまをししかば、答へ詔りたまはく、「こは天照らす大神の御心なり。また底筒(そこつつ)()中筒(なかつつ)()上筒(うはつつ)()三柱の大神なり。」〔角川文庫『古事記』武田祐吉注釈校訂〕
 
 この本段に於ける御事柄は天津日嗣(ひつぎ)天皇が御親政を司り給ひて、御皇祖天照大御神に皇運発展の要道を奉伺し給へる事なり。畏れ多くも神聖なる皇道経綸の最根本義なる祭政一致の御神政を、天津日嗣(ひつぎ)天皇が()(みづか)(つかさど)り給ふ(おん)模様を奉拝(ほうはい)()るなり。
(一)西方(にしのかたに)有国(くにあり)
 (ここ)西方(にしのかた)と示し給ふは極東日本国の位置より西方(にしかた)と称し給ふものにして、即ち世界各国の国家を指し給へるなり。
(二)金銀(こがねしろがねを)為本(はじめとなす)
 金銀(きんぎん)(もと)と為すと示し給ふは、即ち国家経綸の根本経済が金銀本位を基礎と為し居る国柄の事なり。この御神勅の御言葉は現代の日本人が、最も心魂(しんこん)に徹底して拝聴し(たてまつ)るべき一大事にして、この御教覚(ごけうかく)御一声(ごいつせい)によりて、古今二千年間の迷夢を醒破(せいは)せざるベからざるものなり。現代の我国(わがくに)の租税制度、金本(きんほん)主義は日本国体の本義と絶対に矛盾して居る事に、注意せざるべからざるなり。
(三)目之(めの)炎燿(かがやく)
 この意義は虚栄逸楽(いつらく)を好み、(これ)を人生畢生(ひつせい)の目的と為し、土木工芸(ことごと)く其の欲望を満足せしむる事を主旨とし、人生の天職本義を知らざる国柄の事を示し給へるなり。
(四)種々(くさぐさの)珍宝(たから)
 これは世界各国が天賦の気候、風土、人性に適応したる産物ありて、多種多様なる天賦的衣食住の特色を具備し居るを示させ給ふ。
(五)多在其国(そのくににさはなるを)
 これは金銀本位を国家経綸の本義と為し、人生の目的を知らずして、(もつぱ)虚栄(きよえい)虚偽(きよぎ)生存競争を以て人生の目的となしつつある国柄の国家が、多く存在することを示し給ふ。
(六)吾今(あれいま)帰賜其国(そのくにをよせたまはむとのりたまひき)
 この御言葉は最も注意せざるべからず。吾今(あれいま)とは神聖なる皇祖の御遺訓たる、皇典古事記の真義の闡顕(せんけん)せられたる時代を以て『吾今(あれいま)』と(のり)(たま)ふ時と拝聴すべきものなる事を確信し(たてまつ)るなり。(開祖の神示によつて明白なる事実なり)
 其国(そのくに)帰賜(よせたまは)むと詔給(のりたま)ふは昭和現代に()せ賜ふ御事(おんこと)なり。(開祖の神示に明示さる)。天下を治むる御天職を保ち給ふ天津日嗣(ひつぎ)天皇が御天職を発揚し給ふ時運到来して世界の人智は以て皇道(大本)の教化に浴するの程度に達し、世界航運(かううん)の発達は以て天津(まこと)(大本)の教義を宣伝流布し皇道を宣揚して世界を経綸し、以て(おん)国体の本義を顕彰するの時代に達したり。故に其の世界各国を総攬せんが為に、古来国華(こくくわ)の光輝を隠し給へる神聖なる皇祖の御遺訓を(ここ)に顕彰し給ふのみならず、昭和皇運発展の機会に帰着せしめ給ふ御神慮なる事は、一点遅疑(ちぎ)の念を挾むべき余地なきものなり。これ(みな)皇祖皇宗の神々の御稜威(みいづ)(しか)らしめ給ふ御事(おんこと)なり。この由来(ゆらい)は皇典古事記及び出口開祖神訓(しんくん)真義(しんぎ)を拝聴する時は自然に明知(めいち)瞭悟(れうご)さるべし。
 皇典古事記及び開祖の神訓には此の御本文と共に引続き、皇祖天照大御神の御神勅として朝鮮、満州の処分より支那、印度、欧州(ならび)に米二大陸(とう)に対する御経綸の方針を示させ給ふ御事(おんこと)の歴然として記されありと(いへど)も、今日の場合として海外の経綸に関する最も重大なる事柄を此処(ここ)に記述し(まつ)ることは、国際上(あるひ)は面白からぬ事態を生ぜん事を(おもん)ぱかりて暫時(ざんじ)差控(さしひか)へることとすべし。
 (ただし)大日本天津日嗣(ひつぎ)天皇の世界統一は侵略に非ず、征伐に非ず、植民政策に非ず、唯一の済生(さいせい)安民(あんみん)の至誠に()づるものにして、言向(ことむけ)和平(やはし)也、世界人類享生(きやうせい)の天職を教導発揮せしめ給ふに(ほか)ならざるなり。
 
第六章 八千矛神歌
 
 八千矛(やちほこ)神歌(しんか)と申すは、皇祖天照大神より皇孫に言依(ことよさ)せ給ひたる、神聖なる大日本天津日嗣(ひつぎ)天皇の天下を治め給ふ統治の御洪範(ごこうはん)によりて、皇祖建速(たけはや)須佐之男(すさのをの)(みこと)の御天職なる、世界各国の経綸を実現すべき、国家経綸の本義を抽象的に示教(じけう)し給へる御歌(おんうた)なり。八千矛(やちほこ)(がみ)と申すは建速須佐之男命の御子(みこ)八島士奴美(やしましぬみの)(かみ)、この神の御子布波能(ふはの)母遅久奴須奴(もちくぬすぬの)(かみ)、この神の御子深淵之(ふかぶちの)水夜礼花(みづやれはなの)(かみ)、この神の御子淤美豆奴(おみづぬの)(かみ)、この神の御子天之(あめの)冬衣(ふゆぎぬの)(かみ)、この御子の名を、
(一)大国主(おほくにぬしの)神(国家経綸の本則
(二)大穴牟遅(おほなむちの)神(人文開発の智育
(三)葦原色許男(あしはらしこをの)神(人類天賦の天職
(四)八千矛(やちほこの)神(天賦的政治の本能
(五)宇都志(うつし)国玉(くにたまの)神(顕幽的精神教育
 大国主神には右の五つの御名(みな)を有し給へり。
 八島士奴美(やしましぬみの)神以下四神の抽象的(おん)意義(いぎ)は、世界各国天賦の気候、風土、人種、言語の根本異別(いべつ)の階級的本義を示し給へるなり。八千矛神歌の御本領は、即ち古今世界各国の君主英傑が理想とせる富国強兵、弱肉強食主義(マキアベリズム)に対する根本(こんぽん)批正(ひせい)、根本教訓を啓示し給ヘるものにして、神聖不可犯(ふかはん)の天地の大公道たる也。この神歌の一言(いちげん)一声(いつせい)に対する言霊学(ことたまがく)の詳細なる解説を発表せんことは容易に非ざれば後日(ごじつ)(ゆづ)り、(ここ)には単に其の大要を記述せんとす。
 
  第一 八千矛神歌
(一)夜知富許能(やちほこの)迦微能美許登波(かみのみことは)夜斯麻久爾(やしまくに)
(二)都麻麻岐迦泥弖(つままぎかねて)登富登富斯(とふとふし)故志能久邇々(こしのくにに)佐加志売遠(さかしめを)
(三)阿理登岐加志弖(ありときかして)久波志売遠(くはしめを)阿理登伎許志弖(ありときこして)佐用婆比爾(さよばひに)
(四)阿理多々斯(ありたたし)用婆比邇(よばひに)阿理加用婆勢(ありかよはせ)
(五)多知賀遠母(たちがをも)伊麻陀登加受弖(いまだとかずて)淤須比遠母(をすひをも)伊麻陀登加泥婆(いまだとかねば)
(六)遠登売能(をとめの)那須夜伊多斗遠(なすやいたとを)淤曽夫良比(をそぶらひ)
(七)和何多々勢礼婆(わがたたせれば)比許豆良比(ひこづらひ)和何多々勢礼婆(わがたたせれば)阿遠夜麻邇(あをやまに)
(八)奴延波那伎(ぬえはなき)佐怒都登理(さぬつとり)岐芸斯波登与牟(きぎしはとよむ)爾波都登理(にはつとり)
(九)迦祁波那久(かけはなく)宇礼多久母(うれたくも)那久那留登理加(なくなるとりか)
(十)許能登理母(このとりも)宇知夜米許世泥(うちやめこせね)伊斯多布夜(いしたふや)阿麻波勢豆加比(あまはせづかひ)
(十一)許登能(ことの)加多理其登母(かたりごとも)許遠婆(こをば)
(八千矛神、高志(こしの)(くに)沼河(ぬなかは)比売(ひめ)(よばは)むとして行幸(いゆき)の時、その沼河比売の家に到りて歌ひ給へるなり)こしのくにと謂ふは完全なる国家の意義にして、沼河比売と謂ふは天賦の徳性を保つ人の意義なり。(よばは)むとして行幸(いゆき)して沼河比売の家に到り歌ひ給ふ意義は、世界各国が天賦的完成経綸の組織せらるる、所謂(いはゆる)尽忠(じんちう)淳化(じゆんくわ)(へい)天下(てんか)を実現する天則を示し給ヘるなり。
 
  第一 神歌の御真義
 
(一)やちほこの、かみのみことは、やしまくに、
 世界各国の天賦的特性に適したる経綸を(あら)はし(さだ)め、治国安民の(まつりごと)を統轄する基本が、大日本皇国に具備せられ居る御事(おんこと)なり。
(二)つままぎかねて、とふとうし、こしのくにに、さかしめを、
 世界各国には異別(いべつ)的天賦の特質本能が(そなは)り居るが故に、その本能を発揮して、国家経綸を司るベきなり。この世界各国の本能特質及び経綸の共通的典型が、大日本神国に包容せられて、各国の人種的特質より水陸動植物の部類に至るまで、具備せられ居ると云ふ(おん)意義なり。
(三)ありときかして、くはしめを、ありときこして、さよばひに、
 大日本皇国は天地創成の時代より、(すで)に世界を統攬すべき其の位置と要素が備はり、其の区画的国土(四国、九州、本土、北海道、台湾、樺太の諸島)に生ずる人民に、世界的経綸に適応すベき徳器備はり居るといふ意義なり。
(四)ありたたし、よばひに、ありかよはせ、
 大日本皇国は、世界の平和を主宰すべき天賦の国体なるが故に、其の国々に生ずる人民は、万世一系を以て其の天職を発揮すべき智能を、天賦的に具備し居るといふ(おん)意義なり。
(五)たちがをも、いまだとかずて、をすひをも、いまだとかねば、
 畏れ多くも、天津日嗣(ひつぎ)天皇は、世界平和の本源的御本能を備ヘさせられ、其の世界平和の本能的経綸を発揮すベき枢機を御天稟(ごてんりん)に具備し給ひて、万世一系の御皇統を保たせ給ひ、世界を統攬すべき徳器具体(ぐたい)せる日本国に、鎮座ましますといふ(おん)意義なり。
(六)をとめの、なすやいたとを、をそぶらひ、
 日本国には天地造化経綸の機関が具備せられ居る故に、人生の本義大道を解説すべき、顕幽三世(さんせ)往来の精義を能く教訓し得べき(おん)意義なり。
(七)わがたたせれば、ひこづらひ、わがたたせれば、あをやまに、
 万世一系子孫(しそん)長久(ちやうきう)繁栄の(もとゐ)は、天、火、地、水の本末(ほんまつ)一貫的むすびの作用にて出生(しゆつしやう)し、経綸の機関的人体と智能徳器(とくき)を具体して、活動すベき天職を人類が帯び居るといふ(おん)意義なり。
(八)ぬえはなき、さぬつとり、きぎしはとよむ、にはつとり、
 世界的親主(しんしゆ)の大権を天稟(てんりん)し給ふ天津日嗣(ひつぎ)天皇は、驕暴(けうばう)侵略的自我(じが)発展の罪悪を根本排斥し、恭謙(きようけん)誠実扶掖(ふえき)誘導、済生安民的経綸を遵奉(じゆんぽう)せる世界の国主(こくしゆ)に、神聖なる皇祖御遺訓に示させ給ふ国家経綸の要道を教示し給ひ、以て世界経綸の万機と国華(こくくわ)を発揮し、天皇の御天職を顕彰し給ふ(おん)意義なり。
(九)かけはなく、うれたくも、なくなるとりか、
 人生の根本義を闡明(せんめい)して、人心の根本精神の教憲(日本国教)を宣明し、人心統一治国(ちこく)安民(あんみん)の基礎を確立せしむる(おん)意義なり。
(十)このとりも、うちやめこせね、いしたふや、あまはせづかひ、
 世界各国は、気候風土による天恵的根本区別あり、この天賦の本質による其の国体の本領を開発して、治国安民の経綸を定め、以て世界平和の基礎となる其の根本経綸は、大日本天津日嗣(ひつぎ)天皇が、神聖なる皇神(すめかみ)なる皇祖御遺訓によりて教訓し給ふ(おん)意義なり。
(十一)ことの、かたりごとも、こをば、
 世界を総攬して天下を治むる天職を保ち給ふ、天津日嗣(ひつぎ)天皇の(おは)します日本国は、世界を統轄すべき位置と国体とを、()せられ居ることを示し給ふ(おん)意義なり。
 
  第二 八千矛神歌
 
 爾其(ここにその)沼河比売(ぬなかはひめ)未開戸(いまだとをひらかずして)自内(うちより)歌曰(うたひたまはく)
 この真義は、大日本皇国と世界各国の関係、天津日嗣(ひつぎ)天皇と、世界各国の君主との経綸の関係を示し給ひて、教導扶掖(ふえき)すベき根本的内省(ないせい)開発の方法を示し給ふ、神歌の(おん)意義なり。
 
(一)夜知富許能(やちほこの)迦微能美許等(かみのみこと)奴延久佐能(ぬえくさの)売邇志阿礼婆(めにしあれば)
(二)和何許々呂(わがこころ)宇良須能登理叙(うらすのとりぞ)伊麻許曽婆(いまこそは)
(三)和杼理邇阿良米(ちどりにあらめ)能知波(のちは)那杼理爾阿良牟遠(などりにあらむを)
(四)伊能知波(いのちは)那志勢多麻比曽(なしせたまひそ)伊斯多布夜(いしたふや)
(五)阿麻波世豆迦比(あまはせづかひ)許登能(ことの)加多理碁登母(かたりごとも)許遠婆(こをば)
(六)阿遠夜麻邇(あをやまに)比賀迦久良婆(ひがかくらば)奴婆多麻能(ぬばたまの)用波伊伝那牟(よはいでなむ)
(七)阿佐比能(あさひの)恵美佐加延岐弖(ゑみさかえきて)多久豆怒能(たくづぬの)
(八)斯路岐多陀牟岐(しろきただむき)阿和由岐能(あわゆきの)和加夜流牟泥遠(わかやるむねを)曽陀多岐(そだたき)
(九)多多岐麻那賀理(たたきまながり)麻多麻伝(またまで)多麻伝佐斯麻岐(たまでさしまき)
(十)毛毛那賀爾(ももながに)伊波那佐牟遠(いはなさむを)阿夜爾(あやに)那古斐支許志(なこひきこし)
(十一)夜知富許能(やちほこの)迦微能美許登(かみのみこと)許登能(ことの)迦多理碁登母(かたりごとも)許遠婆(こをば)
 
  第二 神歌の真意義
 
(一)やちほこの、かみのみこと、ぬえくさの、めにしあれば、
 日本国の天皇は、世界各国の天賦的本能の経綸を闡明(せんめい)して、其の本末を統一し給ふ御事(おんこと)なり。
(二)わがこころ、うらすのとりぞ、いまこそは、
 万世一系の御皇統を保ち給ひ、天下を治むる御天職を帯び給ふ天津日嗣(ひつぎ)天皇は、神聖なる人生的精神教育の教主に(おは)します御事(おんこと)なり。
(三)ちどりにあらめ、のちは、などりにあらむを、
 神聖なる皇祖御遺訓に示し給ふ、天地造化の大経綸なる天理を闡明(せんめい)し、(これ)によりて天下の経綸を整調し給ふ御事(おんこと)なり。
(四)いのちは、なしせたまひそ、いしたふや、
 天津日嗣(ひつぎ)天皇は、天地経綸の中心主宰たる天職を発揮し給ひ、神聖なる天理人道を顕彰して、大日本皇国天賦の本能を発揮せしめ給ふ。
(五)あまはせづかひ、ことのかたりごとも、こをば。
 天津日嗣(ひつぎ)天皇の(おは)します日本国には、皇大御親神(すめおほみおやがみ)の御神霊と、世界の神機(しんき)が集中せられ居るが故に、神聖なる皇祖御遺訓を奉体して、世界を経綸するに(のぞ)みては、如何(いか)なる大小(だいせう)事件も、一切の目的を解決し得る、威力が備はり居る(おん)意義なり。
(六)あをやまに、ひがかくらば、ぬばたまの、よはいでなむ、
 大日本皇国の各国には、分担的に世界を経綸する本能を具有するが故に、其の本能を発揮して、(おん)国体の精華を顕彰し(たてまつ)り、以て天下和平の枢軸となるべき(おん)意義なり。
(七)あさひの、ゑみさかえきて、たくづぬの、
 天津日嗣(ひつぎ)天皇の御稜威(みいづ)を輝かし(たてまつ)り、(おん)国体の精華を発揚し(たてまつ)ることは、日本国民一般が其の天賦的に出生(しゆつしやう)せる本国に(おい)て、その天賦的身心(しんしん)稟有(りんいう)する徳性を発揮すべき事を示し給ふ(おん)意義なり。
(八)しろきただむき、あわゆきの、わかやるむねを、そだたき、
 日本全国の風土、人質(じんしつ)産物(さんぶつ)(とう)(いやし)くも国家経綸に必要なる、一切の事項を各地方に適応して、闡究(せんきう)すべき(おん)意義なり。
(九)たたきまながり、またまで、たまでさしまき、
 日本全国には天下を(たひら)かに治め、天災地妖無く、安民治国の経綸を定むるに必要なる水陸(すゐりく)の産物、及び其他(そのた)経綸的基礎が、分布的に享有(きやういう)せられ居る(おん)意義なり。
(十)ももながに、いはなさむを、あやに、なこひきこし、
 皇国には人生経綸に最も必要なる宇宙空間に充実せる諸原素を利用して、人生の利福を計り、崇大なる済生(さいせい)的経綸を闡顕(せんけん)して、世界的徳性を発揮すべき要素を具備する事を示し給ふ(おん)意義なり。
(十一)やちほこの、かみのみこと、ことのかたりごとも、こをば。
 世界平和の基礎となる済生安民の経綸を定め、天下を平かに治むる一切の枢機を、大日本皇国が司る(おん)意義なり。
 
  第三 八千矛神歌
 
(一)奴婆多麻能(ぬばたまの)久路岐美祁斯遠(くろきみけしを)麻都夫佐爾(まつぶさに)登理与曽比(とりよそひ)
(二)淤岐都登理(おきつとり)牟那美流登岐(むなみるとき)波多多芸母(はたたぎも)許礼婆布佐波受(これはふさはず)
(三)幣都那美(へつなみ)曽邇奴岐宇弖(そにぬぎうて)蘇邇杼理能(そにどりの)阿遠岐美祁斯遠(あをきみけしを)
(四)麻都夫佐邇(まつぶさに)登理与曽比(とりよそひ)於岐都登理(おきつとり)牟那美流登岐(むなみるとき)
(五)波多多芸母(はたたぎも)許母布佐波受(こもふさはず)幣都那美(へつなみ)曽邇奴棄宇弖(そにぬぎうて)
(六)夜麻賀多爾(やまがたに)麻岐斯(まぎし)阿多泥都岐(あたねつき)曽米紀賀斯流邇(そめきがしるに)
(七)斯米許呂母遠(しめころもを)麻都夫佐邇(まつぶさに)登理与曽比(とりよそひ)
(八)淤岐都登理(おきつとり)牟那美流登岐(むなみるとき)波多多芸母(はたたぎも)許斯与呂志(こしよろし)
(九)伊刀古夜能(いとこやの)伊毛能美許等(いものみこと)牟良登理能(むらとりの)和賀牟礼伊那婆(わがむれいなば)
(十)比気登理能(ひけとりの)和賀比気伊那婆(わがひけいなば)那迦士登波(なかじとは)那波伊布登母(なはいふとも)
(十一)夜麻登能(やまとの)比登母登須須岐(ひともとすすき)宇那加夫斯(うなかぶし)
(十二)那賀那加佐麻久(ながなかさまく)阿佐阿米能(あさあめの)佐疑理邇(さぎりに)多多牟叙(たたむぞ)
(十三)和加久佐能(わかくさの)都麻能美許登(つまのみこと)許登能加多理碁登母(ことのかたりごとも)許遠婆(こをば)
 
  第三 神歌の真意義
 
(一)ぬばたまの、くろきみけしを、まつぶさに、とりよそひ、
 世界を通じて、国家を経綸すベき天賦の邦土(ほうど)には、其の国土に生ずる人類の生活するに適当なる衣食資料が、天恵的無窮(むきう)に備はり居る(おん)意義なり。
(二)おきつとり、むなみるときは、たたぎも、これはふさはず、
 本来人類が、この世界に(うま)()でたるは、天地経綸の()を補助経綸すベく、其の天賦的本能を発揮すべき国土に自然に生れ出でたるものなり。この故に其の所生(しよせい)の本国を離れずして、人生本来の天職を発揮すべき事を示し給ふ(おん)意義なり。
(三)へつなみ、そにぬぎうて、そにどりの、あをきみけしを、
 人類は天賦出生(しゆつしやう)の国土に於て、各人の天賦的本能を発揮して、その人生の本分を尽し、死すれば循環往来する造化機関によりて、また同一系統の後嗣(あとつぎ)に再生するものなる事を、示し給ふ(おん)意義なり。
(四)まつぶさに、とりよそひ、おきつとり、むなみるとき、
 世界各国の経綸を司るべき人類発生の土地には、其の衣食の資料は必ず天賦的無窮に発生すべきものなるが故に、各国民の子孫は其の天賦的職業を継承して、天恵を開発し、所生(しよせい)の地を離散すべからざる事を、示し給ふ(おん)意義なり。
(五)はたたぎも、こもふさはず、へつなみ、そにぬぎうて、
 所生(しよせい)の地を離れ所々(しよしよ)を漂浪するものも遂には転々して、祖先天賦発生の地に帰還するものなる事を示し給ふ。
(六)やまがたに、まぎし、あたねつき、そめきがしるに、
 世界を経綸統一する要素を具備せる、大日本皇国に天津日嗣(ひつぎ)天皇が、万世一系の御皇統を保ち給ひて鎮座まします所以は、これ天下の(しゆ)()(しん)三徳(さんとく)(おん)具備の天皇におはしまして、其の天職なる天下を治むる一切の経綸を(さだ)め、世界の平和を司り給ふが為なる事を示し給ふ。
(七)しめころもを、まつぶさに、とりよそひ、
 大日本神国の地勢は、世界一切の本性を闡明(せんめい)すべき機能と万象を包括し、その国々には分科的に世界各国の経営を闡顕(せんけん)すベき本能を具備し居る事を示し給ふ。
(八)おきつとり、むなみるとき、はたたぎも、こしよろし、
 天賦の国土を離れずして、人生の天職を司らしむることは、世界君主の等しく遵守(じゆんしゆ)すべきものなる事を示し給ふ。
(九)いとこやの、いものみこと、むらとりの、わがむれいなば、
 大日本皇国の国土が分割され居る所以は、世界的天地大経綸の本末を統一すべき天職の存在するが故なり。(しか)して神聖なる皇祖御遺訓を奉体して、世界経綸の要素を闡明(せんめい)すベき事を示し給ふ。
(十)ひけとりの、わがひけいなば、なかじとは、なはいふとも、
 神聖なる天津日嗣(ひつぎ)天皇の経綸を以て天職を司り給ふ御時(おんとき)は、皇祖の御神勅を奉体して皇国経綸の枢機を定め給ふ御事(おんこと)を示し給ふ。
(十一)やまとの、ひともとすすき、うなかぶし、
 神聖なる天津日嗣(ひつぎ)天皇の天職を発揮して、世界の本末を()べ定め給ふ御時(おんとき)は、皇祖天照大神の御教訓を仰ぎ給ふ御事(おんこと)を示し給ふ。
(十二)ながなかさまく、あさあめの、さぎりにたたむぞ、
 忠誠なる天津(まこと)の精神を保ち、経綸の枢機に参与する人に神意感通(かんつう)して皇祖の御神勅を宣伝せしめ給ふ御事(おんこと)なり。
(十三)わかくさの、つまのみこと、ことのかたりごとも、こをば、
 万世一系天津日嗣(ひつぎ)天皇の御天職は、神聖なる皇祖の言依(ことよ)さし賜ふ御経綸の要旨によりて、その御稜威(みいづ)の光輝を(てら)し給ふ御事(おんこと)を示し給ふ。
 
  第四 神歌の大要と意義
 
 皇典古事記の本文に、
  (すなはち)(その)(きさき)取大御酒杯(おほみさかづきをとり)立依(たちより)指挙而(ささげて)歌曰(うたひたまふ)
 この御神歌の根本精神は、神聖なる天津日嗣(ひつぎ)天皇の光輝を発揚し給ふ国家経綸の(もとゐ)を示し給ふ御事(おんこと)なり。
 
  第四 八千矛神歌
 
(一)夜知富許能(やちほこの)加微能美許登夜(かみのみことや)阿賀淤富久邇(あがおほくに)奴斯許曽波(ぬしこそは)
(二)遠邇伊麻世婆(をにいませば)宇知微流(うちみる)斯麻能佐岐耶岐(しまのさきざき)
(三)加岐微流(かきみる)伊蘇能佐岐淤知受(いそのさきおちず)和加久佐能(わかくさの)都麻母多勢良米(つまもたせらめ)
(四)阿波母与(あはもよ)売邇斯阿礼婆(めにしあれば)那遠岐弖(なをきて)遠波那志(をはなし)那遠岐弖(なをきて)都麻波那斯(つまはなし)
(五)阿夜加岐能(あやかきの)布波夜賀斯多爾(ふはやがしたに)牟斯夫須麻(むしぶすま)
(六)爾古夜賀斯多爾(にこよがしたに)多久夫須麻(たくぶすま)佐夜具賀斯多爾(さやぐがしたに)阿和由岐能(あわゆきの)
(七)和加夜流牟泥遠(わかやるむねを)多久豆怒能(たくづぬの)斯路岐多陀牟岐(しろきただむき)曽陀多岐(そだたき)
(八)多多岐麻那賀理(たたきまながり)麻多麻伝(またまで)多麻伝佐斯麻岐(たまでさしまき)
(九)毛毛那賀邇(ももながに)伊遠斯那世(いをしなせ)登与美岐(とよみき)多弖麻都良世(たてまつらせ)
 如此(このごとく)(うたひ)即為宇伎由比而(うきゆひして)宇那賀気理弖(うなかけりて)至今(いまにいたりて)鎮坐也(しずまりますなり)此謂之神語(このこれかみがたりといふ)(なり)
 
  第四 神歌御真義説明
 
(一)やちほこの、かみのみことや、あがおほくにぬしこそは、
 世界各国の(その)天賦的国体の本性を顕彰して、(その)君民(くんみん)の徳器を成就せしむる事を教導する(おん)意義なり。
(二)をにいませば、うちみるしまの、さきざき、
 神聖なる皇祖御遺訓の示し給ふ所に()りて、世界各国の天賦的経綸の基礎を定め、其天職を司らしむる(おん)意義なり。
(三)かきみるいその、さきおちず、わかくさの、つまもたせらめ、
 世界各国が其天賦的本性の機能を発揮して、天地造化経綸の本能に伴ふ経綸を司り、以て人生本来の精神教育を宣伝すべき事を示し給ふ(おん)意義なり。
(四)あはもよ、めにしあれば、なおきて、をはなし、なおきて、つまはなし、
 人類動植物を始め天下一切の世に形を有するものは、男女性の如く陰陽両性(あひ)結びて結実(けつじつ)して、以て子孫相続するが如く、新陳代謝するが天地経綸の神則なる事を示し給ふ(おん)意義なり。
(五)あやかきの、ふはやがしたに、むしぶすま、
 世界一切の有形物は(ことごと)く世の経綸的活用の名実(めいじつ)に相当する名称を天賦的に保ち居り、(しか)して人類は是等(これら)の結論を司るべき機関的形質を具備して、天賦の人類を通貫せる智機(ちき)を保ち居る事を示し給ふ(おん)意義なり。
(六)にこやがしたに、たくぶすま、さやぐがしたに、あわゆきの、
 天賦の土地に発生せる人種は、(その)国土経営に適当せる智能(ちのう)と機能を先天的に併有(へいいう)して、生死循環往来し居るものなる事を、示し給ふ(おん)意義なり。
(七)わかやるむねを、たくづぬの、しろきただむき、そだたき、
 人は世を経綸するがために、子孫永世(えいせい)無窮に顕はれ出で、能く人生の天職を務め、(かく)(その)国体的本則たる国家経綸の範囲に於ける、天賦の富源(ふうげん)本能的智機の啓発に務め、以て其の本然(ほんぜん)の天職を経綸すべき事を示し給ふ(おん)意義なり。
(八)たたきまながり、またまで、たまでさしまき、
 世界各国は各天賦の経綸を司り、(かく)(その)天職なる人生の本能を発揮すれば、天恵無尽(むじん)の衣食に満足するものなる事を、示し給ふ(おん)意義なり。
(九)ももながに、いをしなせ、とよみき、たてまつらせ。
 世界各国の君主は大日本皇国に鎮まります、天津日嗣(ひつぎ)天皇を(しゆ)()(しん)と仰ぎ(まつ)るが神聖なる根本天則たるなり。
 而して世界各国親和(しんわ)輔導(ほだう)大猷(たいいう)は、神聖なる皇祖御遺訓に示し給ふ天津日嗣(ひつぎ)天皇の経綸に因りて、世界各国本然(ほんぜん)位次(ゐじ)人位(じんゐ)の階級を定め給ひ、人本的(じんほんてき)階級を定め給ふ天理人道の本義を遵奉(じゆんぽう)し、以て治国安民の経綸を司るべきものなる事を示し給ふ(おん)意義なり。
 このごとくうたひ、うきゆひして、うながけりて、いまにいたりて、しずまりますなり、このこれ、かみがたりといふなり。
 天理人道を(あきら)かにして、世界平和の枢要を司り、以て天津日嗣(ひつぎ)天皇の天職を発揮し玉ふ(もとゐ)は、神聖なる皇祖天照大御神の御神意(ごしんい)御旨(おんむね)奉体(ほうたい)して、天下経綸の枢機を定め給ふ御事(おんこと)が、神聖なる天津日嗣(ひつぎ)天皇の皇道経綸の基本にして、万代(ばんだい)不易(ふえき)天壌(てんじやう)無窮(むきう)なる祭政一致の惟神(ゐしん)精華たる事を、示し給ふ(おん)意義なり。
 
第七章 皇道経綸の根本要義
 
 現代地上の人類は、(ことごと)(わが)大日本国天津日嗣(ひつぎ)天皇の赤子(せきし)にして(また)天祖の神裔(しんえい)なり。世界異性の同胞、(しん)の親を知らず、人生の天職を知らず、東西道徳倫理の異同宗教の異説は、()いて百千の弊害を胚胎(はいたい)し、(また)一面よりは黄金中毒病を醸成(じやうせい)し、人生の意義をして五里霧中に彷徨せしむるに至る。これ畢竟(ひつきやう)政教無道(むだう)の現象なり。この根本治療は大御親神(おほみおやがみ)の大手術を要す。(しか)して()皇御親神(すめみおやがみ)稜威(みいづ)を発揮し給ひて、根本的大革正を断行し給ふの時は愈々(いよいよ)到来せり。わが昭和聖代の大神業は即ち(これ)なり。
 昭和の聖代──これ一躍(いちやく)回天の時機。
 昭和の聖代──これ一陽来復の時機。
 昭和の聖代──これ大人(たいじん)虎変(こへん)の時機。
 昭和の聖代──これ乾霊(けんれい)御稜威(みいづ)発揮の時機。
 昭和維新──大日本国教(こくけう)皇道の発光(はつくわう)
 昭和維新──空前絶後の大神業。
 
  神聖なる三種の神器
 
(一)八尺(やさかにの)勾璁(まがたま)の御実体は、畏れ多くも万世一系の御皇統を保ち給ふ天津日嗣(ひつぎ)天皇の(おん)国体なり。
(二)八咫(やあたの)(かがみ)の御本質は、天照大御神の言依(ことよ)させ給ふ神聖なる皇祖御遺訓なり、即ち天津日嗣(ひつぎ)天皇の御経綸を示し給ふ皇典古事記なり。
(三)草那芸(くさなぎの)(つるぎ)の御本体は、大日本国土(なり)。皇祖須佐之男(すさのをの)(みこと)この神剣(しんけん)()(たま)ふ。八俣(やまた)遠呂智(をろち)は地球上全世界各国の総称なり。
 
 古書に『八咫(やあたの)(かがみ)神書(しんしよ)なり、神代(かみよ)のこと(ねんごろ)にして、鏡に向つて物を見る如くに明かなれば鏡といふ也……又八咫(やあた)といふは、八方のこと明かに知る故に八咫といふ、以上秘説(ひせつ)なり云々』とあり。(しん)に哲学の本義を()洞見(どうけん)したるものと謂ふべし。(そもそ)も哲学とは何ぞや、その文学的意義の解釈より見るも、人間として総ての問題を、明瞭公平円満に解決を与ふべきが、その本領たるなり。この故に宇宙観、人生観、宗教観、心理、物理、天地文(てんちもん)其他(そのた)一切の科学に至るまで、哲学の根本原理を基礎として研究すべきものなり。本来哲学の根本義は、幾多の種類の有るべき筈のものに非ず、世に哲学と称するもの実に僣上(せんじやう)の沙汰なり。自称哲学也。故に事物の解決に当つて矛盾衝突を(きた)せるは、当然の理たる()きなり。神聖なる哲学は、天地万有の真理を厳密適切に徹底して説明し尽して、これに基いて如何(いか)なる事柄を実行するも、(いささ)かの矛盾なく八方に透徹して、一塵(いちぢん)障碍(しやうがい)を見ざるものならざる()からず。()くいへば、その(やう)なる普遍的完全なる哲学は、恐らく有るべからずと速断するが、所謂(いはゆる)現代の盲目(めくら)学者なり。現代日本の学者は、(おん)国体の神聖なる根本大義を知らず、国学者は天佑的御稜威(みいづ)と、万世一系の宏遠なることと、皇室の尊厳を称揚し(たてまつ)る事を以て能事(のうじ)(をは)れりとなし、(あへ)て神聖なる皇祖の言依(ことよ)させ給ひし、皇国経綸の大道(だいだう)闡顕(せんけん)し以て皇運を扶翼(ふよく)(たてまつ)るべき、至重至大の要義を知らざる(やから)なり。(また)欧米崇拝の盲目(めくら)学者は、物質的にも精神的にも欧米万能の如くに盲信して、(みづか)ら神聖なる(おん)国体を軽蔑して無能野蛮となし、日本神国をして全然欧米化せしむるを以て本領となす。性根の堕落気骨(きこつ)頽廃(たいはい)まことに慨嘆(がいたん)の至りなり。
 さて(ここ)に皇祖御遺訓に示させ給ふ、日本神国の世界経綸に対する哲理的本能を謹録(きんろく)して、(いささ)か学道の人に示す処あらんとす。
 
皇典古事記 上巻
於是。八百万神共議而。於速須佐之男命。負千位置戸。亦切鬚及手足爪令祓而。神夜良比夜良比岐。又食物乞大宜津比売神爾大宜津比売。自鼻口及尻。種々味物取出而。種々作具而進時。速須佐之男命。立伺其態。以為穢汚而奉進。乃殺其大宜津比売神。故所殺神於身生物者。於頭生蚕。於二目生稲種。於耳生粟。於鼻生小豆。於陰生麦。於尻生大豆。故是神産巣日御祖命。令取茲成種。底本には訓点が付いているが、ここでは省略した。読み下し文「ここに八百万の神共に(はか)りて、速須佐の男の命に千座(ちくら)置戸(おきど)を負せ、また(ひげ)と手足の爪とを切り、祓へしめて、神逐(かむやら)ひ逐ひき。また食物(をしもの)大気都比売(おほげつひめ)の神に乞ひたまひき。ここに大気都比売、鼻口また尻より、種種の味物(ためつもの)を取り出でて、種種作り具へて(たてまつ)る時に、速須佐の男の命、その(しわざ)を立ち伺ひて、穢汚(きたな)くして奉るとおもほして、その大宜津比売(おほげつひめ)の神を殺したまひき。かれ殺さえましし神の身に()れる物は、頭に()生り、二つの目に稲種(いなだね)生り、二つの耳に粟生り、鼻に小豆(あづき)生り、(ほと)に麦生り、尻に大豆(まめ)生りき。かれここに神産巣日(かむむすび)御祖(みおや)の命、こを取らしめて、種と成したまひき。」〔角川文庫『古事記』(青空文庫データを使用)〕
 
 以上御本文(ごほんぶん)の真義は、世界的国家経綸の根本基礎と為すベき大道(だいだう)を明示し給ふ也。即ち、
(一)人生天賦の徳を顕はす根本義
(二)人の天賦の性能を発揮せしむる根本義
(三)人類及び動物の食料が、天賦的に給与せられ居る生産的経綸の根本義
(四)天賦的給与の食料及び物質により、人生天賦の経綸を司るベき根本義
(五)世界各国が頭、目、鼻、(ほと)、尻の作用を為すベき国家的天職ある根本義を示し給ふ。
 
故所避追而。降出雲国之肥河上在鳥髪地。此時箸従其河流下。於是須佐之男命。以為人有其河上而。尋覓上往者。老夫与老女二人在而。童女置中而泣。爾問賜之汝等者誰。故其老夫。答言僕者国神。大山津見神之子焉。僕名謂足名椎。妻名謂手名椎。女名謂櫛名田比売。亦問汝哭由者何。答白言。我之女者自本在八稚女。是高志之八俣遠呂智(此三字以音)毎年来喫。今其可来時故泣。底本には訓点が付いているが、ここでは省略した。読み下し文「かれ避追(やらは)えて、出雲の国の肥の河上、名は鳥髪(とりかみ)といふ(ところ)(あも)りましき。この時に、箸その河ゆ流れ下りき。ここに須佐の男の命、その河上に人ありとおもほして、()ぎ上り往でまししかば、老夫(おきな)老女(おみな)と二人ありて、童女(をとめ)を中に置きて泣く。ここに「汝たちは誰そ」と問ひたまひき。かれその老夫、答へて(まを)さく「()は国つ神大山津見(おほやまつみ)の神の子なり。僕が名は足名椎(あしなづち)といひ()が名は手名椎(てなづち)といひ、(むすめ)が名は櫛名田比売(くしなだひめ)といふ」とまをしき。また「汝の哭く故は何ぞ」と問ひたまひしかば、答へ白さく「我が女はもとより八稚女(をとめ)ありき。ここに高志(こし)八俣(やまた)大蛇(をろち)、年ごとに来て()ふ。今その来べき時なれば泣く」とまをしき。」〔角川文庫『古事記』(青空文庫データを使用)〕
 
 以上の真義は、全世界の陸地には人類棲息し居りて、其性質及び能力は各々(おのおの)其の気候風土の異別あるが如く、根本的に区別あり。(けだ)し其土地を経営すべき適当なる性質を、先天的に賦与せられ居る故に、その風土気候(とう)の異別によりて(ことな)り居るものなり。(また)其の天賦的自然に発生せる人類及び、人類の国家経綸の努力を補助すベき機関の働きをなすベく、発生せる動物の生活すべき糧食は、その土地に相応して生産す。この故に天賦発生の土地を離散せずして、子孫繁栄し相続してその天命的国土を経綸すべき事を示し給ふ。
 
爾問其形如何。答白。彼自如赤加賀智而。身一有八頭八尾。亦其身生蘿及檜椙。其長度谿八谷八峡八尾而。見其腹者。悉常血爛也(此謂赤加賀智者。今酸醤也)底本には訓点が付いているが、ここでは省略した。読み下し文「ここに「その形はいかに」と問ひたまひしかば、「そが目は赤かがちの如くにして身一つに八つの(かしら)八つの尾あり。またその身に(こけ)また檜榲(ひすぎ)生ひ、その(たけ)(たに)八谷()()を度りて、その腹を見れば、悉に常に()垂り(ただ)れたり」とまをしき。ここに赤かがちと云へるは、今の酸醤なり。」〔角川文庫『古事記』(青空文庫データを使用)〕
 
 以上御本文の真義は、所謂(いはゆる)哲学的天地文(てんちもん)、及び物理の根本基律と成るベき、森羅万象の原理を示させ給ふ。この説明は実は容易に尽すべきに非ざれども、大体の見地を解せしむる為めに、一二の目標を()に示すべし。(ただ)(こころざし)ある者は進みて深く研究するを要す。軽忽(けいこつ)に批評し去らんとせば、(むし)ろ始めより()を塞ぎて着手せざるに()かじ。
 高天原(たかあまはら)は……(宇宙)
 高見産日(たかみむすびの)神は……(圧力)
 神御産日(かむみむすびの)神は……(引力)
 天之常立(あめのとこたちの)神は……(天体)
 宇麻志(うまし)阿斯訶備(あしかび)比古遅(ひこぢの)神……(瓦斯体(がすたい)、電気(とう)
 
爾速須佐之男命詔其老父。是汝之女者。奉於吾哉。答白恐亦不覚御名。爾答詔。吾者天照大御神之伊呂勢者也(自伊下三字以音)故今自天降坐也。爾足名椎。手名椎神。白然坐者恐立奉。底本には訓点が付いているが、ここでは省略した。読み下し文「ここに速須佐の男の命、その老夫に詔りたまはく、「これ(いまし)が女ならば、吾に奉らむや」と詔りたまひしかば、「恐けれど御名を知らず」と答へまをしき。ここに答へて詔りたまはく、「吾は天照らす大御神の(いろせ)なり。かれ今天より降りましつ」とのりたまひき。ここに足名椎(あしなづち)手名椎(てなづち)の神、「然まさば(かしこ)し、奉らむ」とまをしき。」〔角川文庫『古事記』(青空文庫データを使用)〕
 
 以上の真義は、天命的国土を経綸せしむるが為に、天賦の地に(うま)()でたる人類動植物は、(つね)に一定の範囲に生死往来して生れ出て、以て国土経綸の天職を尽すベき人生の本義を示し給ふ。
 
爾速須佐之男命。乃於湯津爪櫛取成其童女。而刺御美豆良。告足名椎。手名椎神。汝等醸塩折之酒。且作廻垣。於其垣作八門。毎門結八佐受岐(此三字以音)毎其佐受岐。置酒船而。毎船盛其八塩折酒而待。底本には訓点が付いているが、ここでは省略した。読み下し文「ここに速須佐の男の命、その童女(をとめ)湯津爪櫛(ゆつつまぐし)に取らして、御髻(みみづら)に刺さして、その足名椎、手名椎の神に告りたまはく、「汝等(いましたち)八塩折(やしほり)の酒を()み、また垣を作り?(もとほ)し、その垣に八つの門を作り、門ごとに八つの仮庪(さずき)()ひ、その仮庪ごとに酒船を置きて、船ごとにその八塩折の酒を盛りて待たさね」とのりたまひき。」〔角川文庫『古事記』(青空文庫データを使用)〕
 
 以上本文の真義は、天地造化の大活動的根本機関たる、高御産巣日神、神産巣日神の霊機(れいき)が、天地往来し給ふその機能の天賦的経綸の顕現なり。即ち天賦の気象及び人類動植物の、先天的性能を基礎として、その天地自然の法則に応じたる経綸を遵守すベき事を示し給ふなり。
 
故随告而。如此設備待之時。其八俣遠呂智。信如言来。乃毎船垂入己頭飲其酒。於是飲酔。留伏寝。爾速須佐之男命。抜其所御佩之十拳剣。切散其蛇者。肥河変血而流。故切其中尾時。御刀之刃毀。爾思怪。以御刀之前。刺割而見者。在都牟刈大刀。故取此大刀思異物而。白上於天照大御神也。是者草那芸之大刀也。底本には訓点が付いているが、ここでは省略した。読み下し文「かれ告りたまへるまにまにして、かく()け備へて待つ時に、その八俣(やまた)大蛇(をろち)(まこと)に言ひしがごと来つ。すなはち船ごとに(おの)が頭を乗り入れてその酒を飲みき。ここに飲み酔ひて留まり伏し寝たり。ここに速須佐の男の命、その御佩(みはかし)十拳(とつか)の劒を抜きて、その蛇を切り(はふ)りたまひしかば、()の河血に()りて流れき。かれその中の尾を切りたまふ時に、御刀(みはかし)の刃()けき。ここに怪しと思ほして、御刀の(さき)もちて刺し割きて見そなはししかば、都牟羽(つむは)の大刀あり。かれこの大刀を取らして、()しき物ぞと思ほして、天照らす大御神に白し上げたまひき。こは草薙(くさなぎ)の大刀なり。」〔角川文庫『古事記』(青空文庫データを使用)〕
 
 この御本義は、世界各国経綸の根本方針を定むる規範的基礎は、万世一系天津日嗣(ひつぎ)天皇の鎮まりいます大日本皇国の天賦的経綸によりて、組織統轄せらるべきものにして、惟神の天理人道の御教憲(ごけうけん)は、大日本国神皇の宣布し玉ふ処なるを明かにし給ふ。
 以上は神聖なる皇祖御遺訓に示させ給ふ世界的経綸の根本哲理を教ヘ給へる、大日本皇道経綸の根本要義なり。
 
 昭和維新の皇猷(くわういう)は明治天皇(すで)教覚(けうかく)し給へり。則ち神聖なる祖宗御遺訓皇典古事記の精神を宣告し給へる也。(しか)りと(いへど)も古往今来、この神聖なる大日本皇国経綸の宣顕(せんけん)せられたる事なかりしも、時なる(かな)、天運循環の神則は皇運発展に伴ひて、神聖なる皇国独特の霊能を享有(きよういう)せる大日本国言霊学(ことたまがく)の活用によりて、皇典古事記の精義、則ち(かしこ)くも皇祖天照大御神の皇孫(くわうそん)に授け給ひし、大日本国経綸の大道(だいだう)拝知(はいち)(たてまつ)ることを得たるなり。
 由来この大日本皇国経綸を宣揚し給ふは、畏れ多くも天津日嗣(ひつぎ)天皇の御天職に(まし)ますが故に、(みだり)に発表し(たてまつ)るは僣越(せんゑつ)(おそれ)あり。()つは時機(すこ)しく尚早(しやうさう)(かん)無きを得ざれば、(いば)らく筆硯(ひつけん)(つつし)み、(ここ)にはその経綸の二三に()いて、()づ発表しても()なるベしと思惟(しゐ)さるる程度に、その大概(たいがい)一言(いちげん)して()まんと欲す。経綸の大要を一括して言はば、世界大家族制度の実施なり。これ皇国経綸の根本義にして、その世界大家族制度の家長たるは、万世一系の皇運を保ち給ふ、大日本天津日嗣(ひつぎ)天皇に(まし)ますなり。これ実に皇道に於ける世界統治の基礎たる()きものなり。
 人生和平の基本となる、国家家族制度を実施せんとするに当りては、現代の弊政(へいせい)を根本的に変革して、神聖なる大日本皇道を行布すべきものなるが故に、国家家族制度の内容を発表するに先だちて、皇国二千年()弊政(へいせい)弊習(へいしふ)を根本革正し、現代の秕政(ひせい)を変革すべき次第を簡直に説明すべし。
 
第八章 財政経済の根本変革
 
 古来金銀為本の財政運用を以て、国家経綸の基礎となし(きた)れり。(こと)に近代経済学なるもの(おこ)りて財政経済の方法を討究し、或ひは政治的に、(あるひ)は社会的に其の調和に努力すと(いへど)も、未だ以て国家社会の平和幸福に貢献するに至らず。財政の不安と生活の困難は年を逐うて迫り、遂に人生は戦場なりとして、自他共に経済的競争を是認(ぜにん)するに至り、その究極する処、国家の存亡を()し、幾千万の生霊(せいれい)を犠牲となし、弱肉強食、優勝劣敗の淘汰を以て、人間社会自然の条理なりとなすに至れり。要するに是れ財政経済伸縮の結果にして、人生の惨害これより(だい)なるはなし。(しか)して財政経綸は租税によりて衣食する寄生虫的人物を生ずるの不経済を招来し、この種類の人物は、所謂(いはゆる)富国強兵の充実を()せんがため、租税増加を追求するに汲々(きふきふ)として、遂に国民をして財力窮乏を訴へしむるに至り、国家存立上の危機に到達せしむるに至る也。又一面に於ては、金銀為本の財政経済のために、人心の不安、不平、腐敗を(きた)し、その結果は病素(びやうそ)醸因(じやういん)を生ずるにさへ至り、人生各般(かくはん)禍根(くわこん)多く()れより発する也。
 
第九章 天産自給
 
 人生の本義たるや、其の天賦(てんぷ)所生(しよせい)の国家を経綸するを以て根本原則となす。されば其の人類の生活に適当する衣食住の物は、必ず其の土地に産出するもの也。故に天賦所生の人間は其の智能を啓発し、以て天恵の福利を開拓して、文明の利用を研究し、その国土を経営するは、人生の根本天則たる也。
 由来世界各国経済は、天造(てんざう)草昧(さうまい)天造草昧(てんぞうそうまい)…乱雑という意味。もとは易経の言葉で「天地創造のとき、この世にまだ秩序がなく混沌として定まらないこと。また、世の中に秩序がなく、天下のまだ定まらないことにもいう。」〔三省堂 新明解四字熟語辞典〕なる野蛮の遺風(ゐふう)也。(そもそ)も人文未開の遊牧時代は、天産自給の天則を知らず、腕力を以て他民族を征服し、巡遊(じゆんいう)侵略以て国家を組織し、(ここ)に租税徴貢(ちようこう)の制を定むるに至れる也。この強食弱肉の蛮風(ばんふう)は、世界を風靡(ふうび)して遂に自称文明強国を現出せるもの也。彼等(かれら)曰く、優勝劣敗は天理の自然なりと、咄々(とつとつ)何等(なんら)囈語(たわごと)ぞ、この天理破壊の魔道は、今や大日本皇道大本開祖の神示によりて、根本より廃滅さるべき時代の到着せる也。
(大正四、一二、一五稿 大正七、一〇、一号 神霊界誌
 
[#『出口王仁三郎全集 第六巻』に掲載されているのはここまでだが、神霊界(大正7年10月1日号)と『皇道維新と経綸』には次の「教育制度の根本革」という章がある。参考のために『皇道維新と経綸』から転載する。]
 
第一○章 教育制度の根本革正
 
 畏れ多くも教育勅語は明治天皇の(あきら)かに国民教育の根本義を示させ給ふ処なりと(いへど)も、国風(こくふう)頽廃(たいはい)、民心の腐敗は日に月に(はなは)だしく、教育者数十万の精励努力も(ほとん)ど水泡に帰せむとする所以(ゆゑん)(そもそ)も何ぞや。これ全く現代の教育制度なるものの、(おん)国体の本義に矛盾せると、国家経綸の方策が天理人道(天津(まこと))に矛盾せるとの二大原因に帰するもの也。現代の制度たる、昨是(さくぜ)今非(こんひ)、以て確固不動の国民教育の根本方針なく、支離滅裂なる弊風(へいふう)()いて下級教育者をして其の帰向を誤らしめ、その波及する処、国民教育の根本を破壊せしむるに至れるは実に現代教育の大欠陥たり。(ここ)に大日本国国民教育の根本方針を一言(いちごん)し置かむとす。
(一)小国民教育の根本義
 十三歳以下の児童教育は(おん)国体の精華を発揮し(たてまつ)る智能啓発の準備時代なり。この教育制度は全国統一的たるべきものなり。(しか)して大日本神皇国(しんくわうこく)の本義と国民の天職及び精神教育を根本基礎とす。
 (この)時代に於ける第一の要義は、児童の心理的天賦の個性を正確に査定すべきこと也。これ将来国体の精華を発揮すべき科学的専門の智能を啓発せしむる方針的基礎を定むる唯一の必要条件なり。この小国民教育の任に当るは特に女子を以て天賦的職責とす。
(二)中国民教育の根本義
 二十歳以下の中国民教育は国華発揮に要する専門的学芸を教授すべき時代なり。天賦の特色を享有する国別(こくべつ)的素質を発揮開拓せしむべく、内は工、理、化、芸、農、経済(とう)(そと)は語学、国教其他(そのた)世界を経理救済するに必要なる学科を専門的に教授すべきものなり。
(三)大国民教育の根本義
 二十歳以上の大国民とは国民全体の総称なり。この時代は既に教育せられたる処によりて、各天賦の智能を啓発し国家経綸の天職を(つかさど)り、以て国家に貢献し()べき徳器(とくき)を成就せしむべきものなり。
 
  祭政一致の国家経綸
 
 (ここ)(おん)国体の精華と称すベき大国民教育の根本義なる祭政一致の経綸は、その細目(さいもく)種々(しゆじゆ)なれども、其の一を示せば、毎年十月に一回(その)所在(あらゆる)産土神社に(おい)て神聖なる国民教育の表彰的儀式を厳粛に挙行すべき事なり。(しか)して国家の経綸に(あるひ)は学術に其他(そのた)国民的模範たるベき善行を表彰し、氏子(うぢこ)全部を列席せしめて以て神聖なる儀式によりて、奉斎せる神霊に奉奏(ほうそう)する也。
 
  宗教的国教の制度
 
 現行の諸宗教の国民精神に及ぼす処の結果は議論は如何(いか)(やう)にもあれ、事実として大体に有害無益なり。神道と称するものも(その)内容は(はなは)だ不完(きは)まるもの也。由来世界の宗教は人智未開なる天造(てんざう)草昧(さうまい)なる時代の姑息(こそく)なる慰安的産物にして、神聖なる天津日嗣(ひつぎ)天皇が大日本皇道を宣揚し給ふ聖代に在りては全く無用の長物たるなり。故に如斯(かくのごとく)亡国的宗教は根本より一掃して而して(のち)、従来諸宗教の布教に従事せる所謂(いはゆる)宗教家を選抜して、(これ)に神聖なる皇祖御遺訓及び開祖の神示を教授して、大日本皇道を奉体せしめ、統一的に其の従来の信徒に惟神の大道を普及せしめ、以て大日本国教を世界に宣揚せしむるは天祖の神慮なり。
 
  大国民教育の統一機関
 
 大国民教育及び国政運用の統一機関を制定するは昭和維新の皇猷(くわういう)たる弊政の根本変革を完成する上に於て最も重要なる事業なり。
 即ち現在発行せる全国の新聞を統一して之を社会教育的一大機関とするは最も簡便なる方策なりとす。(中略)
 世界の現状は済世主(さいせいしゆ)の出現を絶叫希望せり。(とき)なる(かな)(ここ)に皇祖の神慮を奉体して、遍照(へんぜう)男神(なんしん)の聖霊降下(かうか)され、国家経綸の要道は明示されたり。日本臣民が長夜(ちやうや)の眠りより()()づべき時は今なり。
 天津日嗣(ひつぎ)天皇は世界(しゆ)()(しん)の天権を帯び給ふ。今や神聖なる天権を発揮し給ひ、済世(さいせい)済民(さいみん)大業(たいげふ)(はじ)め給ふべき時機は迫れり。現時(げんじ)皇国の状態は危機一髪の(かん)にあり、(そと)は世界空前の大撹乱あり、(うち)は生活難と危険思想、嗚呼(ああ)二十五年、一日(いちじつ)の如く思君(しくん)思国(しこく)思民(しみん)至誠、窮極(きうきよく)発光(はつくわう)は大日本皇道の御稜威(みいづ)のみ矣(完)
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