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いろは神歌(1)『神霊界』大正6年12月号掲載

インフォメーション
題名:いろは神歌(1)『神霊界』大正6年12月号掲載 著者:
ページ:567 目次メモ:
概要: 備考: タグ:そしもり(ソシモリ) データ凡例: データ最終更新日:2024-06-01 17:50:53 OBC :B195501c22021
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]神霊界 > 大正6年12月1日号(第54号) > いろは神歌
大正六年十一月三日
○何鹿の郡綾部の本宮の、拾里四方は宮の内、下津岩根の珍の国、高天原と称えつつ、天に坐す神八百万、地に坐す神八百万、集りまして幽世と、現つの世をば知ろしめす、其神業を神議り、議り玉ひて常夜往、烏羽玉の世を照さむと、伊都の御魂と現れまして、天津日嗣の動ぎなく、目出度御代を松の世の、常磐堅磐の礎を、搗固めます霊の地を、知らずに暮す世の人の、心の空の仇曇り、晴るる由なき憐れさよ。
○ろんどんのカラの都に預けたる、金山姫の御宝は、何時還り坐す術を無み、御姿さえも瑞穂国、豊葦原の中国の、力を削る曲津霊は、英米西大国西の海、底の藻屑と鳴る神に、臍を奪られし姿なり。
○はに安の彦の神言の現はれて、雲井に懸る群雲を、伊吹き放ちて春日なる、天津日蔭の隈も無く、輝き渡る日の本の、国の稜威は弥高く、鳴戸の海の弥深き、神の恵の鳴り鳴りて、鳴りも合はさる仇波を、大海原に加々呑て、世の大本の一筋の、誠の神の統べ玉ふ、国常立の神の代を、来さん為に三千歳の、道有る御代を松の大本神の出口の畏こけれ。
○にし東南と北の荒海に、艦充ち続け寄せ来る、醜の荒びの猛く共、御空に震う鳥船の、羽音は如何に高くとも、空より降らす迦具槌の、三ツの都を夜藝速男、如何なる神の猛びにも、少しも怖ぢぬ日の本の国に幸ふ言霊の、ウとアの水火にカラ鳥の、胆を抜かれて落ち此方に、神の稜威の著じるく、頭を地に逆様に、神の御国に何時までも、仇波立たぬ松の代と、駿河の国の不二の山、気高き姿の其儘に、世界の上に聳ゆなり。
○保日の命の現はれて、海の内外の嫌いなく、降らす血雨の河と成り、屍は積みて山を為す、カラクレナイの敷島の、赤き心は日本魂、火にさえ焼けぬ国魂の、光り輝く時となり、体主霊従の身魂を焼き尽し、水火の国の中津国、下津岩根に現はれし、厳の御魂の勲功の、天照る御代の楽もしさ。
○へだて無き、神の恵みは弥高き、高天原に現れまして、乱れ界てたる現し世乃、諸々の人草救はむと、誠の道をたてよこの、二柱神の勲功は、天之岩戸を開くなる、奇磐間戸の手力男、日本の人も外国人も、神の教えに手撫槌や、足撫の道に迷ひたる、身魂を善きに導びきて、ミロクの神の守ります、常磐の松の神の世に、覆して統ぶる世の本の、国常立の神ぞ尊とき。
○とつ国の醜の仇浪いや猛く、秋津島根に打寄せて、国の中分を洗ひ去り、浪花の土を汚しつつ、五十鈴川に襲い来て、清き宮川泥と為し、御国の魂を盗まむと、深き奸計は三重県、尾張半田に押寄せて、手配り為せる其刹那に、伊勢の神風吹起り、怒れる浪の物凄く、心の黒き黒船の、浮瀬に沈む神罰の、忽ち来ると白人の、国の末こそ憐れなりけり。
○千早振神代ながらの神国の、千代も八千代も動ぎなき、天津日嗣の大君は、豊葦原の中津国、瑞穂の国の主師親と、現はれまして天の下、四方の国々隈もなく、言向平し御恵の、露の御玉に潤ひし、日本御国の民草は、我大君の知食す、大御神業にあななひて、内外の国を助く可き、神の依しの天職を、身も棚知らに弥広に、尽せ日本の神の子等。
○りう球につづく台湾ボウコ島、御国に遠きこの島に、心を配れ日本人、外国魂のここかしこ、国売る曲の多くして、主人の留守の間鍋たき、柱を崩すカミ斗り、ヤンキーモンキー騒ぐとも、降る雨リカを妨ぐ由なし。
○ぬさ採りて和知の川辺に祈りつつ、この世の泥を滌がむと、明治の廿五年より、直なる針に餌も附けず、川王の鯉のツレ無くも、鮒や諸魚の屑のみぞ、神の恵の糸長く、釣下ろしたる一筋の、誠の瑞の魂いが、かかり玉ひし益良夫の、釣り合ふ御魂男子女子、太公望の大望も、西伯文王に見出され、国を治めし古事の、今目の前り北の空、光り輝き渡るなる、神の大橋いや太く、掛けし祈りの尊とけれ。
○るい卵の危ふき国と成り成りて、成り合はざりし異国の、国王は位を降されて、夏なほ寒き西伯利亜の、荒野の果に退らはれし、スラブ王家の憐れさは、聞くも涙の種なれど、我神国に刃向ひし、支那もスラブも天命の免れぬ道と覚悟せよ。続いて三つ四つカラの国、神の御国に仇を為す、報いは今に火の車、乗りて奈落ヘ落ぶれの、悪魔の頭ぞ憐れなり。
○をに大蛇狼よりも恐ろしき、異国魂の奸計は、口に蜜をば含み宛、尻に剣持つ蜂の如、大砲小砲の兵器を、残らず反古の紙と為し、尻の穴まで見済して、時待つ時の火車を、御国の空に轟かし、掠め取らんと曲津神、企みは実にも良けれども、日本の国は昔より、神の御幸ちの強き国、人は三分に減るとても、神の身魂は永遠に続く常磐の神国ぞ、異国魂の世の末と、成り定まりし幽世の、神の経綸も白人の、世の終りこそ憐れなりけり。
○わた津見の神の宮居に鎮まりし、玉依姫の現はれて、綾の高天に上り坐し、御供の神も数多く、集い来まして斯度の、神世の経綸助けむと、金竜界の島々に、今は潜みて時津風、松の神代と成る迄は、水分の神志那津彦巌の神や地震の、荒々しくも荒れの神、一度に開く竜神の、伊都の雄猛び弥猛く、天地四方の国々も、海山河野の生物も、震い慄のき地に附きて、眼も鼻も耳口も、何と詮方泣声も、轟き渡る皇神の、言葉の霊の限り無く、鳴り渡る時選まれし、日本心の身魂のみ、次の神代の御柱と、栄誉と共に残るなり。
○かくり世も現ツの世をも押並べて、天津御祖の大神の、依さし玉ひし其儘の、清き神代の御政に、曳き還さむと梓弓、巌も徹うす敏心の、日本心の弥固き、矢竹心の畏くも、世をうしとらの皇神が、下津岩根に現はれて乱れたる世を正さむと、月日さまねく一筋に、誠の道を証しつつ、勤しみ玉ふ惟神、神の出口の勇ましき。
○よに出でし守護神等の鼻高く、雲井の空に蔓こりて、天津日蔭の御光りを、包みかくして葦原の、中津御国を曇らせつ、下国民の苦しみを、余所に眺めて吾れの身の、しがく斗りに日も足らず、月日を送る曲津日は、落ちて散り行く秋の野の、木の葉の果ぞ憐れにも、踏み付けおきし民草の、足に踏れて泥まぶれ、泥海の世を固めたる、国の御祖の大神の、御袖に縋り歎くとも、神の審判の明けく、罪の隠るるスキも泣き、人の果こそ憐れなり。
○たよりなき、世の人々に便るより、神の御教にたよりなば、斯世の中に恐るべき、物は一つも荒魂、神の力に勇ましく、楽しく渡る和田の原、隔て遠き外国の、果しも知らに行くとても、天津日蔭の照る限り、安く守らせ玉ひつつ、恩頼の幸ひて、国の誉れと諸共に、遺る勲功千代八千代、万代迄も日本の、御魂を照らせ日本益良雄。
○れん合の国の軍は強くとも、心は割れて四ツ五ツ、いつか勝負の果も無く、力は既にイングリス、艮に以太利て雨りかの、フランス跡に地固めの、望みもつきてカイゼルの、甲斐なき終り世の終り、金も兵糧も尽き果てて、互に臍を噛みながら、猶ホ凝りづまに向きを替ヘ、良き支那物を奪はんと、命限りに寄せ来る、其時こそは面白き、茲に仁義の神の国、豊葦原の足に掛け、蹴え放ららかし息の根を、絶ちて悪魔を絶滅し、世界一つに統べ守り、祭政一致の神政を、天地と共に楽まむ。
○そしもりの山に天降りし素盞嗚男の、神の命は恐こくも、綾の高天に昇りまし、国に仇為す鬼大蛇、天津醜女や曲津霊を、十握の劍抜き持ちて、切り立薙ぎ立て遠近の、山の尾毎に斬り靡け、河の瀬毎に追い払ひ、はらひ清めて四方の国、草の片葉に至る迄、救ひ助けて艮の、皇大神と諸共に、二度目の天の岩戸をば、開けて目出度午の春、天の斑駒逆剥ぎの、世の醜魂を遺ちも無く、退いに退いて草薙の、心の劒皇神に、供え奉りて瑞穂国、瑞の御魂の美はしき、勲功辰巳や午の年、未申なる皇神の、称えを酉の秋の空、錦織りなす紅葉の、赤き心の現はれて、鬼さえ戌の天の下、治まる御代は斯神の、亥にしへよりの勲功ぞと、青人草の仰ぐ世を、松と梅との花の大本。
○つきも日も隠れて見えぬ叢雲の、中にも神の恵あり、人を奪り喰ふ鬼大蛇、地震雷鳴火の雨も、少しも怖ぢぬ正人は、男女の別ち無く、神の守りし人ぞかし。マサカの時の杖と為り、力と為るは信仰の、徳より外に何も無し。神の御子なる人の身は、神を誠の親と為し、心の限り身の限り、仕え奉りて天地の、諸の猛びも心安く、凌ぎ凌ぎて松の代の、人の鏡と鳴神の、轟ろき渡る高き名を、千代に伝えて神国の、国の真柱搗き固め、勲功を立よ万代に。
○ねの国に落行く霊魂を救はむと、厳の御魂の大御神、瑞の御魂と諸共に、綾の高天に現はれて、竜宮館の渡し場に、救世の船を浮べつつ、待たせ給へど烏羽玉の、暗に迷ヘる人草は、取り付嶋も荒塩の、塩の八百路の八塩路の、浪に漂よい迷ひつつ、沖の彼方ヘ走せ行くを、救いの船に棹さして、呼ベど叫ベど不知火の、浪のまにまに隠れつつ、海の藻屑と鳴戸灘、危ふき渦に近寄りて、行衛も波の底の国、流れ行くこそ悲しけれ。
○なに波津に咲くや兄の花冬籠り、今を春辺と咲匂ふ、我大神の言霊の、鳴り渡ります竜の春、罪も(けが)れも内藤(ないとう)の、家に集える信者(まさびと)を、大本(おほもと)王仁(わに)引連(ひきつ)れて、御稜威(みいづ)もたかき神の森、(おほ)阪本文雄(ふみを)大人(うし)其他(そのほか)あまた伴なひて、大和の国に名も高き「罪も穢れも内藤の」から「大和の国に名も高き」までが、王仁文庫では「御稜威もたかき大和路の」になっている。、畝火の山に参上り、四方の国々見はるかし、蜻蛉の臀咋せる国と、詔らせ給ひし神倭、磐余の君の斎きたる、最も畏こき橿原の、珍の御宮殿伏し拝み、皇御国の幸いを、赤心籠めて祈りけり。
○らうそくの我身焦して暗の夜を、照すは神の御心ぞ。神に仕えしともがらは、世の為人の為ならば、家をも身をも省みず、人の譏りも斑駒の、耳に東風吹く心地して、世人の為に尽さむと、朝な夕なに命毛の、筆採り坐して千早振、神の御教を説き給ふ、教御祖の勲功は、高天原と現はれて、四方の民草靡けつつ、神の出口の道開き、広き斯世の宝ぞと、天に坐す神地の神、歓こび勇み賞で玉ふ、錦の機の目出度けれ。
○むかしより花に名高き吉野山、八幡の山の奥深く、ミロクの世まで隠されし、音姫どのの御宝の、在所尋ねて千代八千代、動かぬ御代の大本の、千歳の松の神の子が、鶴殿君に従ひて、未だ散り終えぬ八重桜、日本心の大丈夫が、高天原を立出て、折も吉野の上市に、一夜を明かし妹背山、吉野の川に隔つれど、誠心の隔てなき、浅野、豊本、牧、村野、梅田、秋岡、出口王仁、星田、多慶子や金谷の、清き身魂は吉野川、流れに添ひて上り行、十里の道も山吹の、一重の花に引かされて、神の教へのかしこくも、早柏原に着にけり。雲井の空の神人と、ひなに育ちし賤の男が、深山の奥に手を曳きて、峻しき山を辿りつつ、御国の為に赤心を、尽すも神の引き合せ、黄金の山の奥深き、神の経綸は白雲の、花の吉野の水清く、治まる御代の礎を、踏み固めたる千代の鶴、八千代の亀の末長く、開け行く世を楽しみに、松まの長き真鶴の首。
○うしとらの神の御言を畏こみて、下津岩根の本宮の、神に仕ふる教子が、教御祖に従ひて、巳年五月の八ツの日に、息長姫の祭りたる、木村の里の庵我の宮、車軸を流す雨空を、厭ひ給はず出坐しの、御供の人は四百人風も福知の町過ぎて、車の音も静々と、神の御前に着き給ひ、唱ふる祝詞の声清く、御国の為に皇神の、東の国ヘ神幸を、祈り給ひし赤心を、神も諾ひ玉ひけむ、三日を経たる夕空に、神の証しは丹頂の、鶴飛び来り高杉の、上に宿りて只三声、鳴き渡りつつ産土の、一宮神社の神の森、さして飛び行く吉瑞は、千代の栄えの松の代を、祝ぎ給ひたる惟神、神の稜威のいや高き、事の証明を水茎の、文字に写して皇神に、日々に仕ふる神職、田中の大人の送られし、御文は神の御宝と、世の大本に留めけり。
○ゐすくわし神の光に照されて、曇り果たる村肝の、心の空も晴れ渡り、月日輝き幽世も、現つの世をも明らけく、覚り開きし神心、瑞の御魂と現はれて、御国を守る神と成り、斯世の母と成々て、恵を四方にたらちねの心も熱田の神の宮、つるぎの稜威いやちこに、日本建と生れましぬ、是須佐之男の身魂なり。
○のあの言霊なと反り、なおの言霊のと反る、のあとなおとの方舟の、真中に住みきるすの御霊、すめら御国のすがた也。のの言霊を調ぶれば、地に泥水充ち溢れ、渦巻廻る御霊なり。あの言霊を調ぶれば、天津御空に昇り行き、成り合まさぬ御霊なり。のあの御霊は泥水の、世界を浸し山を越え、賤しき身魂の雲の辺に、上りて天を汚すなり。さは去り乍ら世の人よ、昔の事と思ふなよ、のあの御霊の災は、今眼の当り現れにけり。なの言霊を調ぶれば、火水の結びの御魂にて、天津御空に二柱、鎮まり坐す姿也。おの言霊を調ぶれば、汚れし地を清めつつ、六合を治むる御霊なり。地より生れし埴安の、神の御霊もお声なり。五大州の中心に、皇ら御国の天皇の四方の国々統べ給ふ。此の言霊を省みて、皇ら御国の天職を、覚りてなおの方舟の、さとしの舟に乗り移り、瑞の御魂に神習ひ、泥に漂ふ世の人を、なお霊に見なおし詔りなおす神の大道に導きて、世人救ひてヒマラヤの、山より高く名を上げて、二度目の神代の種と成り、万代までも世の人の、救ひの神と鳴り渡る、言霊の道尊とけれ。
ノアとナオの方舟
[#図 ノアとナオの方舟]
○おちこちの寺の金仏、金道具、釣鐘までも鋳潰して、御国を守る海陸の、軍の備えに宛つる世は、今眼のあたり迫り来て、多具理に成ります金山の、彦の命の御代と化り、下国民の持物も、金気の物は金火鉢、西洋釘の折れまでも、御国を守る物の具と、造り代えても足らぬまで、迫り来るこそ歎てけれ。
○くに挙り上は五十路の老人より、下は三五の若者が、男、女の別ち無く、坊主も耶蘇も囚人も、戦争の庭に立つ時の、巡りくるまの遠からず、遠津御神の造らしし、御国を守る兵ものと、日本心を振起し、伊都の雄猛び踏み健び、厳のころびを起しつつ、海往かば水潜しかばね山往かば、草生す屍大君の、御為に死なむ徒らに、閑には死なじ一足も、顧みせじと弥進み、いや迫りつつ山の尾に、追伏せ散らし川の瀬に、追払ひつつ仇軍、服従え和して浦安の、御国を守れ秋津人、現津御神と大八洲、国知食す天皇の、高き恵みに酬えかし、日本島根の神の御子。
○やすみしし吾大君の高光る、天津日嗣の日の御子の、聖の御代の明らけく、大く正しぎ大御代は、都もひなも押並べて、恵みの露の隈も無く、草の片葉に至るまで、高き稜威を仰ぐ世の、六年の秋の末つ頃、四尾の山の佐保姫も、錦の機を織りなして、四方の景色の麗かに、牡鹿妻呼ぶ時もあれ、御国の光り照妙の、綾の錦の山里に、御国の母とあを雲の、雲路遙かに掻別けて、民の蚕飼の事業を、嘉し給ひて天降り坐す、大御恵を嬉しみて、遠き国より近きより、老も若きも押並ベて、御影を拝む国民の、道も狭きまで群集り、伊迎い奉る真心は、嬉し涙に紅の、赤きもみぢの柏手の、高き稜威を仰ぐなり。千早振神代も聞かず丹波路に、斯るためしもあら尊と、君の恵のあなかしこ、賢こき御代に生ひ出し、此上なき幸に大本の、神に仕ふる王仁が、御空を仰ぎ地に伏し、身の賤けきも打忘れ、心の限り身の限り、今日の行啓を祝ぎ奉る。
○まが津霊の猛き荒びに奥山の、紅葉の色も光り浅せ、鳴く鹿の声悲しくて、錦織り成す佐保姫の、頭も真白に成相の、山に連なる大江山、鬼の鼻より吹降ろす、冷たき風に遠近の、木々の稍も皆散りて、行衛も知らず真木の葉の、東の空に舞ひ狂ひ、狂ひ還りて四ツ尾の、山に黒雲天を蔽ひ、世の大本を見下せど、古き神代の昔より、隠れ坐したる艮の、神の稜威に退はれて、あと白雲となりにけり。
○けがれたる斯世の中を如何にせむ、誠の神の御教えを、家をも身をも打忘れ、朝な夕なに一筋に、心を尽し身を尽し、筑紫の果も東路も、至らぬ隈も無き迄に、教え諭せど食う物と、衣るより外に心無き、心卑しきけだものの、角振つ立て反対に、力限りに攻め来り、救ひの綱も切れ切れに、何と詮方なく斗りなり。
○ふる里に老ひたる母を振り残し、御国に尽す益良夫の、心の空は五月暗、暗き斯世を照さむと、千々に思ひを砕きつつ、二十年余りて惟神、神の御教を伝へつつ、治まる御代を待乳山、山郭公血も涸れて、呼ぶ声さえも暗の夜の、人の心の鞍馬山、深山に猛き狼の、古巣を潜り蛇むかで蜂の室屋に幾度か、投げ入れられて猶も又、針の蓆に居りつつ、袖は涙の三瀬川、渡りあぐみし丸木橋、生命を掛けて渡会の、宮に坐ます皇神の、稜威に開けし大本は、斯世の中の大橋と、遠き近きの別ち無く、問ひ来る迄に進みしは、清き和泉の住の江の、神に仕えし生神の、小松林の勲功なり。
「神霊界」大正六年十二月号
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