三勇士
敷島の国のほまれと芳ばしき 花は桜木人は武士と 昔の聖も称えける そもそも年はこれ壬申、春まだ浅く 唐人どもの暴状を応懲せんと皇軍に 召されて進む三勇士 千重の荒波のり切りて 言の葉通はぬ上海の 戦の場に立ちにけり 敵の打出す砲弾は 雨や霞と降り頻り 空に飛行機群れ飛びて 地上に爆弾投げつける 進みもならず退きも成らぬ味方のつはものは 算を乱して倒れたり 見るに見兼ねし三勇士 皇軍の進路を開きて我国の 武名を万世に伝へむと 悲壮の覚悟を定めたる 勇士は茲に選まれて 鉄条網を破るべく 爆弾しかと抱き締め 敵陣近く阿修羅王の 熱ひ猛く進み入る 時も移さず百雷の 轟く音にまがひたる 爆発の音もろともに 木葉徴塵となりにけり ア、壮烈なるかな三勇士 貴きかばねは唐野の果に晒すとも その芳名と勲功は 並び称へて千歳に 日本桜と匂ふらむ ア、悲壮なり三勇士 吾が日の本の守り神 武士の千代の亀鑑となりぬべし ア、壮烈なるかな三勇士 忠勇義烈鬼神も泣かむ三勇士 わが同胞は云ふも更なり 外つ国人の心胆を 寒からしめたる三勇士 高き誉は駿河なる 不二の高嶺もおよぶべき 不二の高嶺もおよぶべき
於更生館 昭和7年3月9日作
昭和青年昭和7年4月号