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皇道我観(七)

インフォメーション
題名:皇道我観(七) 著者:出口王仁三郎
誌名:神霊界 掲載号: ページ:17 目次メモ:
概要:皇国の神蹟 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-09-24 04:03:59 OBC :M192919190615c02
第十章 皇国の神蹟
 我が皇国は古来神国と称し、独一の真神なる、天之御中主之大神の主宰の下に、天津神八百万、国津神八百万在し坐して、国土を守り幸はひ給へば、古往今来、外国に優りて神異神蹟極めて多く、僕を更ふるも数ふべからず。余は今日唯に一、二の神蹟を挙げて、以て皇国固有の大道の信仰遵奉せざる可らざるを徴せむとす。中古称徳天皇は、元来深く宇佐八幡宮を信奉帰依し給ひて、大神の憑語と言へば虚実を問ふの暇無く、事々物々其神憑の語に従ひ給ふを奇貨と為し、時の妖僧弓削道鏡なるもの天皇の殊寵を得て、心行共に日と共に増悪の域に進み、出警入蹕僣に乗輿を擬し、自ら号して法王と謂ふに至れり。時に太宰府の神主にして、中臣の習宜阿曾麻呂なるもの、権勢並び無き自称法王妖僧弓削道鏡に媚附き、己が勢力を得んため、畏れ多くも矯めて、宇佐八幡大神の教言なりとて朝廷に奏す。即ち曰く『天皇若し、道鏡をして天津日継の位に即かしめ給はば、天下は永遠無窮に太平なる可し』と、茲に天皇は、殊寵殊愛の道鏡と雖も、事余りに重大なるを以て、御神慮決し兼ねたまひ、密かに和気清麿を召し出し、往きて宇佐大神の神教を請はせ給ひぬ。発するに臨み、妖僧道鏡亦清麿を招き、目を瞋らし劔を按じ清麿に謂ひて曰く『八幡大神深く我が忠誠を嘉みし、我をして天津日継の位を践ましめむと欲し給ふ。故に今汝をして再び神教を乞はしむ。汝克く神教を奉じ、我をして欲する所を得せしめなば、即ち我は汝をして太政大臣の官を授く可し。若し我言に違ふあらば、即ち必ず重き刑罰に処す可し』と。茲に誠忠無比の清麿は固く意を決し、直ちに往きて宇佐八幡に詣で、厳粛なる祀典を修し、心神を清めて、恭しく神教を乞ひ奉る。大神即ち清麿に神懸して具に教へ覚し給へり。清麿更に祈りて曰く『今大御神の教へ給ふ所の語は、是国家の一大事なり、大神の憑語信じ難し。願はくは神異を示して其真否を決せしめよ』と。自己審神者の神術を修するや、是に大御神は忽然として神形を顕示し給へり。其身長三丈に余り、光輝満月の如し。神勅に曰く。
『我国家開闢以来君臣の大義明分定まれり、未だ臣を以て君と為し、君を以て臣と為せし事あらず天津日継は必ず皇緒を立てよ。道鏡の悖逆素より天地容れざるの大罪なり。宜しく速に剪除せよ汝道鏡を怖る瓦勿れ、吾は必ず相済けむ云々』
 清麿還りて具に神勅を奏す。道鏡事の成らざるを以て大に怒り、遂に清麿を大隅に流謫し、人を使て之を途中に追殺せしめむとす。俄然大雷雨来りて、天地晦冥咫尺を弁せず。使者未だ発せざるに、勅使来りて免る丶を得るに会ふ。次で光仁天皇位に即き給ふに及んで、道鏡の大逆を悪み、直ちに之を下野に竄し、和気清麿を召還し給ふ。清麿時に脚を病み起つこと能はず。強ひて病を輿して途に上る。忽ち宇佐を過ぎ大神を拝するや、脚即ち起ち、遂に馬に乗りて還る。観る者神威神蹟の顕著なるに、歎異せざるは無し。夫れ道鏡妖僧之神器を覬覦するや、凶焔人に逼り勢当にあたる可らず。事の成否は、即ち使臣和気氏の一言に決するなり。国家存廃の分水嶺上に立てる清麿の責任や、実に大なりと謂ふべし。皇道の本義を体得せる、誠忠無比の和気氏、乃ち毅然として撓まず屈せず、一身の安危を度外に措き、直ちに神教を朝廷に奏上す、其の志操や、国家を匡救し、気節、姦侫の心胆を震愕せしむ。是固より和気氏忠義の節、天地に貫徹せるに由る可しとは雖も、神明皇祚を護佑し玉ふに非ずんば、焉ぞ能く、此の如くなるを得むや。実に皇道の大本毅然として、万古に卓立する所以を知るべきなり。
 胡元宋国を滅し、次で諸多の隣国を征服し、四百余州に君臨し覇を称ふるや、独我皇国のみ使聘を通ぜず。元主韓人を使て、書を皇国日本に致さしめて曰く『我要求に服せざる時は、即ち尋問の師を出さむ』と。朝廷忽ち、令を鎌倉に下して議せしむ。時の執権北条時宗大に怒つて曰く『書辞以て甚だ礼を失す。報復するに及ばず』と。則ち使者を追ふ。其後元の使者、幾度来りしと雖も、悉皆拒否して納れず、且つ一々其使者を斬る。其後元主大に怒り、文永十一年冬元軍西境に仇す。鎮西の猛将勇士、拒み戦ひ且つ之を退く。建治元年夏、元の使節「杜世忠」等復た来る。時宗怒つて之を鎌倉竜ノロに斬る、乃ち北条実政を以て筑紫の探題と為し、鎮西の将士を監し、辺海を鎮戍し、大に戦備を為し急変に備ふ。未だ幾何も経ざるに、元の使節復た来る。時宗また之を斬る。元主「忽必烈」我国の再び元使を誅せるを聞き、大に憤怒し、大に舟師を興し「茫文虎」を以て之に将とし入侵す。弘安四年七月。博多に抵り舳艫相銜む。実政が部下の将士等、克く拒ぎ戦ひ殺傷相当る。時宗爰に宇都宮貞綱を遣はして之を援く、未[#レ]到。是時に当つて朝野心を一にし、全国の神社並びに仏宇に祈薦を修す。畏くも亀山上皇は、躬自ら徒洗して石清水八幡宮に詣で、精疇一夜、従臣をして神楽を奏せしむ。また権大納言藤原経任を伊勢に遣はし、幣帛及び宸筆宣命を皇大神宮に奉り、身を以て国難に代らむことを請ひ給ふ。閏月朔太陽蝕に当る。天陰見えず。黒雲一点石清水宮より起り、雲中隠々白羽の鳴矢あり、西の天に向つて飛び去る。皇大神宮の摂社たる風神の社殿内より、忽ち一道の神光を発し天地に照耀す。大風暴び起る、西海最も激烈なり。雷迅竜跳、怪異百出、海水篏蕩し、賊艦四千艘悉く皆覆没破壊し、虜兵全部滅亡し、十万人中脱れ帰る者、僅に三人なりと謂ふ。是より元再び、我皇国の辺境を窺はざりき。
 夫れ胡元、強大の武力を以て我国に臨み、一挙にして忽ち我を併呑せんとする、其猛勢や恰も巌を投げて卵を打つ如し。然りと雖も、皇道の大本に、惟神的に合成し、奮然として撓まず、屈せず、数々其無礼極まる使節を斬り、以て彼の兇威を挫き、民志の団結を固め、死を決して之を待つや、天下の志気大に振ひ、戦はずして敵を呑み、仇に勝つの慨あり。是固より時宗が、国家の一大事に際して少しも騒がず、悠然として志を決し、防禦宜しきを得たるに由るとは雖も、神明の霊威皇国を護佑し給ふに非ずんば、焉ぞ能く斯の如き大勝を得、以て国威を万世に伝ふるを得んや。抑道鏡の徒が姦曲殆ど皇祚を移さんとし、胡元の仇、殆ど皇国を傾けんとせり。然るに皇国の神明、深く国家を保護佑助し、大に威霊を顕示し給ひて、妖鬼沮喪し黠虜殲滅し、今日に至る迄纂奪の禍害無く、対外戦に於ける敗なし。其神蹟の彰々たるや此の如し。
 嗚呼皇国は、天神地祇の佑護に成れる、建国以来の歴史によりて、克く其の国粋を保ち、時に精華を開きたりと雖も、現代の風潮は、漸く妖蘖の兆を醸成し、国民思想の根底は、油水の浸潤するが如く、腐敗蝕すること、元寇の禍害に幾百倍し、外来思想の伝播は妖僧の如く、皇道を無視し且つ軽侮し、祖神が以て、天壌無窮なりとして依さし給へる神国の基礎、また以て不測の禍根なきを保ち難からむとす。見よ、上下生活難を絶叫するは何の為ぞ、安分の念なくして、虚栄浮華に奔るを以てなり。六親相怒り、郷呂相鬩ぐは何の為ぞ、誠敬の心無くして、自他相欺くを以てなり。父子の情殆ど絶え、君臣の大義将に滅せむとす。於是乎社会共産主義あり、自然主義あり、民主々義あり、共和主義あり、厭世主義あり。曰く吾人の意志は自由にして、人権は平等なり、故に共和政治は、最も人生に適すと。曰く、天は人を平等に生み平等に愛す、須らく共産主義を行ふ可し。曰く、人は自然に生れ、死するも亦自然なり、故に自然的情欲を恣にして、無政府たるべし。曰く、人生は猶ほ火宅の如く、身を焼いて止まず、甚だ厭ふべしと。或者は豺狼の如く、或者は羊豚の如くにして、民心常に薄氷を践むが如く、国家は日に月に、深淵に臨むが如し。噫思ひを此処に馳する時は、現代は是一大乱世に非ずや。古語に曰く、家貧にして孝子出で、国乱れて忠臣現はれ、天下無道にして、聖人起るとは宜なる哉。我皇国は、神の建て給ひし国なり。神の開きし国なり、神の作りし国なり、神の守り坐す珍し国なりと曰ふ。茲に国家の一大危機に頻し、畏くも国の大祖国常立尊、豊雲野尊の二神、下津岩根の高天原に、変性男子変性女子の二霊を降し、神如の慈教を宣伝して、此漂蕩へる民心を修理し、此漂蕩へる国家を固成し、以て世界をして、神祇聖代の徳沢に鼓腹せしめ、此の世界の各国土をして、五六七の神世に転化せしめ、此蒼生をして、高天原に安住せしめむが為に、去る明治二十五年正月、大本開祖出口直子刀自に、国祖の神の憑依し給ひ、前後通じて二十有七年の教莚を開き給ひ、国家国民の針指を発表し給ひて、顕幽両界に跨り、皇国を護佑し給ふも、全く皇道大本の、確固不変なる所以なり。嗚呼忝なき哉、国祖の殊恩。嗚呼尊きかな、天津日嗣天皇の、天壌無窮の皇運を保全し給ふ皇国。金甌無欠の我国体。

皇道我観(七)
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