麦かをる国分寺の古寺立ち出でてわれは出雲の宮に向へり
国分寺立ち出で遠く亀岡の方眺むれば目に立つ銀杏
亀岡の銀杏の幹にくらぶれば国分寺の銀杏はほとんど三倍
国分寺の石材残らず光秀がうばひて亀岡城建てしと言ふ
国分寺をつぶせし明智光秀はまた秀吉につぶされにけり
時鳥銀杏に鳴きて南桑の野面一面五月雨そめたり
朝日山雨にけぶりて南桑の野づら小暗く雨そぼつなり
八雲立つ出雲千歳の大宮にわれ額づきて御国を祈れり
藤木宮司
大神に祈願をこむる折もあれ藤木宮司はわが前に来る
藤木氏は歌に名高き人なりきかつては歌席をともにせし人
上田さんこちらへ御こしと言ひながらわれを社務所に伴ひにけり
歌の話国体の話つぎつぎに絶え間もあらず日は暮れにけり
初夏の神苑
常磐木の松の先までからみ咲く白藤の花は竜に似たるも
白滝の落つるがごとく大ぬさをかけたるごとく見ゆる白藤
大宮の石の鳥居に苔むして青葉の初夏は神苑に来れり
たうたうと筧の落つる神池に真鯉緋鯉のひれふりて舞ふ
青葉にほふ梢にちらちら残りたる初夏を迎へしおそ桜花
朝日山新緑萌ゆる真昼間をほの明しつつ初夏の陽はてり
あかあかと霧島の花にほひたる千歳の宮の初夏の清しさ
昼もなほ時鳥なくこの宮の森のしげみの深く小暗き
潺潺と神苑ながるる谷水の清きひびきに神の声きく
大己貴神のみことを祀りたる出雲の宮は神さびにつつ
出雲神社参拝終りて午後の日を愛宕の神峯さしてのぼれり