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愛宕山

インフォメーション
題名：愛宕山 著者：出口王仁三郎
ページ：93
概要： 備考： タグ： データ凡例： データ最終更新日：2024-10-31 18:51:00 OBC ：B129900c20
保津山(ほづやま)の渓路(たにみち)のぼる初夏(はつなつ)の木木(きぎ)の緑のかをりやはしも
軣軣(がうがう)と渓川(たにがは)おつる滝津瀬(たきつせ)の音(おと)は左右の山にひびけり
昼もなほ小暗(をぐら)き保津(ほづ)の渓路(たにみち)を辿(たど)ればきこゆる山時鳥(やまほととぎす)
山池(やまいけ)の堤(つつみ)にしばし腰おろし山路(やまぢ)の疲れをやすらひにけり
かいつむり円(ゑん)をゑがきて池の面(も)に浮きつ沈みつ遊べる初夏(しよか)なり
山池(やまいけ)の堤(つつみ)のあちこち紅(べに)つつじかげをおとして水底(みなそこ)あかし
さつと吹く初夏(しよか)の山風(やまかぜ)忽(たちま)ちに池の水(み)の面(も)に鱗波(りんぱ)を描けり
五月雨
山路(やまみち)を左にとれば若き日にわが通ひたる越畑(こしはた)の道
若き日に腰をいためて悩みたるこの渓路(たにみち)を淋しくおもへり
右(みぎ)すれば愛宕の参道山(やま)深(ふか)み老木(おいき)茂(しげ)りて昼も小暗(をぐら)き
急坂(きふはん)をよづる折しも雲の幕(まく)破れてさつきの雨落(お)ち来(きた)る
このあたり大蛇(をろち)ひそむと人のいふ尾根の笹原(ささはら)雨風(あめかぜ)にさやぐ
ざわざわと山風(やまかぜ)の音(おと)笹の葉をなでつつ雨は横さまに降(ふ)る
ただひとり愛宕の山に登りゆく吾(わ)れ夏ながら淋しかりけり
尾根の山道
路(みち)にあひし一人の杣(そま)に道とへば笹原(ささはら)十町(じつちやう)嶮(けは)しと答(こた)ふ
愛宕山(あたごやま)尾根にしたてば天津(あまつ)日(ひ)はわが目の下(した)に輝きてをり
いつしかに五月雨(さみだれ)はれて紺碧(こんぺき)の空あちこちにあらはれにけり
天津(あまつ)日(ひ)は半国山(はんごくさん)の尾根近く異様の光を投げてしづめり
山上(さんじやう)より丹波平野を見下(みおろ)せば亀山城址(じやうし)眼下(がんか)に横(よこ)たふ
愛宕の宿
やむをえず愛宕の宿に夏の夜(よ)をやどりて尾根吹く風の音(おと)きく
老松(らうしよう)の梢(こずゑ)をゆすりて渡りゆく愛宕の尾根の風は強しも
ありし日のことつぎつぎに思ひ出(い)でて今日のわが身の何か淋しも
道のため世のため辿(たど)る旅ながら語る友なき尾上(をのへ)は淋しき
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