霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(四)

インフォメーション
題名:(四) 著者:浅野和三郎
ページ:248
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142400c69
 一方に於て出勤のつらさはあつたが、他方に於ては、これしきの苦痛を償うて余りある、愉快と満足とが与へられて居た。それは自宅(うち)へかへると、大本の共鳴者が自分の周囲に集まりつつあることであつた。()うも苦楽は常に(あひ)伴ふもので、()(らく)(たね)、楽は苦の種、一方が大きい丈けそれだけ他方も(また)大きく、形と影と相伴ふが如く、表と裏と引き離すことの出来ぬが如きものであるらしい。
 午後三時退庁の時刻を待つて、自分は単身で役所を引揚(ひきあげ)て来る。白浜から山王町に抜けて、諏訪神社の(わき)坂路(さかみち)伝ひに忠魂(ちうこん)祠堂(しだう)の山道にかかる。この十幾年間(ほとん)ど毎日通ひ慣れた山道も、いよいよ近くお別れかと思ふと、何となく懐かしみが湧いて来て、幾度(いくたび)(つゑ)をとどめて、(あらた)なる気分で四辺(あたり)の風光を見まはすのであつた。頂き近くコンモリと樹木の茂つた武山(たけやま)、なだらかに群丘(ぐんきう)の上に(そび)ゆる大楠山(おほくすやま)、海を越えて薄くかすめる鋸山(のこぎりやま)、覚えず凝乎(ぢつ)と四五分間も見つめたまま、立ち去りあへぬ事もあつた。
 帰つて洋服を脱ぎすてて、幾らかゆツたりした気分になつて、書斎に坐る間もなく、大抵誰かが尋ねて来る。話の題目はきまり切つて神様の事、教祖の事、霊魂の事、立替立直しの事(とう)で、そして最後は必ず鎮魂の実修をやる。晩餐後が又その通り、(ほとん)()(ばん)としてこの種の来訪者なしに済むといふ事がなかつた。
 来訪者の種類は土地の関係上、()うしても海軍将校及び其家族が多かつた。男も来れば又屢々(しばしば)女も来る。三箇月間に鎮魂した人数は、五十人か百人位には(のぼ)つたらうと思ふ。一々記憶に残つて居らぬが、しかし印象の深かつたもの(だけ)はドウしても忘れられない。自分はこれから其(うち)の参考になるやうな所を()り出して紹介するとせう。但し今(なほ)現役で奉職中の人に迷惑をかけてはならぬから、絶対必要のない限りは、頭字(かしらじ)一字だけ(かか)げて置くことにする。
 K少将の鎮魂状態は余程変挺(へんてこ)であつた。身体(からだ)()づグニャグニャになる。(あめ)が流れ出したといふ恰好である。到底これが軍服いかめしく、金鵄勲章功四級をブラさげて潤歩(くわつぽ)する少将閣下とは受取れない。試みにこの憑霊に(むか)つて名告(なの)らせようとすると、腹一ぱい(くち)を明け放しにして叫ぶので、さつぱり呂律(ろれつ)がまはらない。それでは()かん。舌を使へと憑霊に教へると、三寸も長く延ばして見たり、捲いて上顎(うはあご)にヒツつけて見たり、頬辺(ほほぺた)(むか)つてスーツと突き立てて見たり、極端な舌の曲芸を演ずるばかりで、(ただ)レロレロベロベロ雑音を発するにとどまる。雑音を発するのはかまはぬが、ただいかにも其面貌が珍妙無比で、時にはヒヨツトコの笑ふが如く、時にはビリケンの(くしゃみ)せるが如く、とても真面目に見て居れない。覚えずブツと審神者が噴き出して了ふ。
 無論()いて居るのは低級の副守護神で、K少将の肉体を巣窟とし、或る程度まで之を病気にするのが目的である。病気にして置くので滋養物が食へる。K少将の口を借りて副さんが食ふのである。実際海軍部内でもK少将の持病は念入りなので有名であつた。胃も悪く、腸も悪く、脱腸で、痔疾(ぢしつ)で、糖尿病で、その(ほか)にも病名が二つ三つつけられて居たと思ふ。始終何所(どこ)かに故障があるが、さりとて職務に差支(さしつかへ)を生ずる程ではない。現に今でも枢要の地位に奉職して居る。自分は出来る丈この悪霊を退治してやらうと思つて、散々(いぢ)めてやつたが、既に二十年来の痼疾(こしつ)で、悪霊と肉体とシツクリ抱合(だきあ)つて居るので、とても一気(いつき)呵成(かせい)に駆除する事は出来なかつた。無理に退去を命ずると、直腸(へん)に非常な疼痛(とうつう)を起して、流石の少将も悲鳴を揚げる。とても辛抱しきれないさうであつた。その後数年間少将と会はぬが、今に勤務中なところを見ると、悪霊は余程屏息(へいそく)して居ると見える。
 滑稽なのはM機関中佐の夫人であつた。鎮魂の姿勢を取りて坐ること五分とたたぬに、(はら)の底からキアツキアツと笑ひ出す奴がある。何か審神者(さには)から質問して見ても、馬鹿笑ひをやる丈けで返事をせぬ。ウフフフアハハハと転がつたり、()りかへつたり、のめつたりして(ただ)笑ひに笑ふ。髪も壊れ、衣紋(えもん)も乱れ、(ひざ)もあらはになる迄、姿勢を(みだ)して笑つてのけるといふ、大々的笑ひ上戸であつた。
 仕方がないから、自分も善い加減にして鎮魂を終ると、夫人は(たちま)ちケロリとして元の上品な態度に復して、いかにも気まりの悪さうに、
『わたし()うしませう。失礼だと思つて一所懸命笑ふまいとしたのですけれど、お(なか)の方から笑つて笑つて笑つて、とても(おさ)へられませんでした……』
 自分はその後何回もかかる実例に出会(でつくわ)したが、その時は初めての事でいささか戸惑ひをした。斯んなのは大抵不真面目な、イタヅラ好きの狸の霊などが多い。
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