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荷車

インフォメーション
題名：荷車 著者：出口王仁三郎
ページ：36 目次メモ：
概要： 備考：『故山の夢』p47-52 タグ： データ凡例： データ最終更新日：2023-10-30 08:40:08 OBC ：B121808c19
─十七八歳の頃─
霜(しも)の夜(よ)の一番鶏(いちばんどり)に起き出(い)でて凍(い)てたる道を荷車曳(ひ)き行く
凍(い)て道(みち)に足すベらせて土橋(つちばし)のうへより荷車もろともに落(お)つ
父と子が川底に落ちてさいはひに微傷(びしやう)だもせず神の救助か
生活の資料の荷車破壊して貧しき世帯のなやみは増しぬ
亀岡の寝しづまりたる町中(まちなか)を毎夜カラカラ荷車曳(ひ)きゆく
篠村(しのむら)のとろとろのぼり坂道を霜夜(しもよ)に汗して荷車を曳く
大枝坂(おほえざか)松風洞(しようふうどう)を出(い)づるころ東(ひがし)の空はしらみそめけり
松風洞(しようふうどう)東に出(い)づればくだりざか車の轍(わだち)やすやすころがる
大枝坂(おほえざか)七本杉(しちほんすぎ)のかげに立ち霜夜(しもよ)の汗を拭(ふ)きつつやすらふ
真夜中を大枝(おほえ)の坂に車曳(ひ)きて山賊共(ども)におびやかされたり
夜(よ)から夜(よ)へ働きてえし利得をば一度は残らず山賊にとらる
霜(しも)の朝も夏の真夜中も厭(いと)ひなく荷車曳(ひ)きし若き日のわれ
生活におびやかされて止(や)むを得ず昼夜(ちうや)わかたず働きしわれ
田を作るいとまいとまに柴を刈り車をひきて若き日はすぐ
生活に忙しき身も歌を詠み句を作りつつ楽しき日ありぬ
○
音頭の声破(やぶ)らむとして囂囂(がうがう)とみなぎり落つる瀧(たき)浴び唄ふ
瀧(たき)の音と声を競ひて咽(のど)を破り血を吐きしこと毎度ありけり
七匹(しちひき)の狸の昼寝(ひるね)発見し鎌をふるつて二匹まで獲(と)る
柴の荷に狸(たぬき)ぶらさげ帰るさの月夜にあやまり山池(やまいけ)に落ちぬ
たそがれて柴担(にな)ひつつ墓の下ものをもいはず走りてかへる
穂芒(ほすすき)の風になびける夕(ゆふ)まぐれ墓下道(はかしたみち)にきもをつぶしぬ
臆病とひとにわらはれ腹立てど墓の下道(したみち)何時(いつ)もいやらし
薮蔭(やぶかげ)の辻の地蔵に線香(せんかう)立ついやらしき道も恋許(こひが)り通へり
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