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相思

インフォメーション
題名：相思 著者：出口王仁三郎
ページ：127 目次メモ：
概要： 備考：『故山の夢』p236-241。『故山の夢』では題が「想思」になっている。 タグ： データ凡例： データ最終更新日：2023-11-05 11:30:35 OBC ：B121808c58
─二十五歳の頃─
俳諧(はいかい)の席にまみえし十七の女性と視線のあへる夕暮(ゆふぐれ)
もの言はぬ彼女の心朧(おぼろ)ながら吾(われ)に会へりとほほゑみてかへる
大井(おほゐ)神社祭礼(さいれい)の夜半(よは)に逢はむものとたそがれかけて橋の上(へ)に待つ
彼(か)の女(をんな)母と妹(いもと)に手を引かれ吾(われ)に横目をむけてとほりぬ
もう駄目だ今夜は神の御利益(ごりやく)が無しとあきらめすごすご帰る
○
二三日たてば彼女の玉の文(ふみ)鳩のごとくに飛び入(い)りにけり
封切るもおそしといそぎ見る文(ふみ)の墨色(すみいろ)かをる濃紫(こむらさき)かな
紅筆(べにふで)のあとすらすらとなまめきて若き男(を)の子の血潮(ちしほ)湧き立つ
若き女(め)の文(ふみ)見てしより奪はれし恋の恨みもうすらぎにけり
○
朝夕に牧畜業にいそしめどおもひせまりて溜息つきぬ
奪はれし恋の面当(つらあて)と文(ふみ)を見てこころの泉(いづみ)にほこらひの湧く
富豪(ふうがう)の家にうまれし彼女等(ら)のわれに添ふかと胸は高鳴る
提灯(ちやうちん)に釣鐘(つりがね)の譬(たと)へまたしても破れはせぬかと悩ましき朝夕(あさゆふ)
形ある宝を愛(め)づる世の中にむづかしきかな貧者(ひんじや)の恋路(こひぢ)は
○
学問や知識なくとも富者(ふうじや)の子は人の恋までうばひてほほゑむ
神聖の恋愛なりせばかたちある宝も塵(ちり)のごとくなるベきを
ゆるしあふ互ひのこころ打ち消して終生(しうせい)泣かす無理解の親
生(なま)の木を裂かれし恋のわが身にはまたわづらひぬ彼女の上(うへ)に
プロの家に生(うま)れしわれとあなどりて相思のなかも呉れぬ親達(おやたち)
相(あひ)想(おも)ふこころは深き霧(きり)の海(うみ)へだててなきぬ晴れまなきまま
○
柿(かき)みのる秋の夕暮美装(びさう)せし彼女の母は吾(わ)が家(や)訪(と)ひ来(き)ぬ
喜楽さんの家はここかと訪(たづ)ねられはいと答へて座蒲団(ざぶとん)を出す
彼(か)の女(をんな)御免と言ひつつ座(ざ)になほりわが面(おも)つくづく眺めてほほゑむ
親切にお世話下さる○○の母です貴方(あなた)に頼みたいといふ
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