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皇国の明鏡
王仁
皇国に明鏡あり、これを八咫鏡と名づけ奉る。天下至宝の神鏡なり。
この宝鏡の伝はりますこと、万有万姓の至幸にして、遠津祖神の御仁慈なり。この宝鏡は皇国に伝はりてこそ、無始無終を通じて、血脈承継の由来を知る事を得、本来の真面目を知悉する事を得るなり。宝鏡の前に一毫の虚偽あるなく、微毫の陰匿あるべからず。宝鏡の権威に何物か畏怖し何物か戦慄せざるものやある。霊威照々として光明無凝なり。古今の学者輩ども明鏡の威徳を拝せず、この宝鏡の威力を夢にだも知らざるなり。八咫の宝鏡を知るものは誰ぞ。
徒然草諸抄大成、御鈴の章の頭書に曰く、
八咫鏡は神書なり、神代の事懇にして、鏡にむかふて物を見る如くに明なれば、鏡と云ふなり。また八咫と云ふは、八方の事明に知る故に八咫と云ふ己上秘説なり。
吾人の知れる書籍の内にて、斯くの如く明瞭に八咫の鏡の秘奥を探り得たる書に接したる事なし。秘説とは何物の秘説にや、兎まれ角まれこの秘説実に八咫の鏡の御霊徳を漏したり。八咫鏡は神書なり。これを一名言霊とも名づけ奉るべし。