林 『ちょっと天下を相手の喧嘩は俺達には出来かねるね』
聖師 『天下を相手にせよと言うのは天下の曲津に対して喧嘩する事で、政府を相手にするのとは違う。天下を善化することで、愛善化して行く事だ。曲津と喧嘩することや』
林 『話は違いますが──英国に女の大臣がありますが日本も終いにはあのようにいわゆる女権拡張が高潮されるもんでしょうか』
聖師 『昔は女が一番偉かった。何でもそういう風に出来ている。蜂の巣でも一番大きいのが王さんで、それはメンやないか』
林 『そうすると結局男より女の方がえらいんかな』
聖師 『そらそうや、体質が違う』
高見 『俺達はあかんのう』
聖師 『男は女の奴隷や。働いたり土工の役をするのには男が一番よい。それが男の役や。女は家の中にいる……だから家内や。男は外で働く、つまり家外や……』
(笑声)
林 『結局、女権拡張は一つの真理なんで……』
聖師 『女権が拡張されんでも表面上、戸主にならんが女の方が実際偉い。その証拠には男から金をとって人にオメコさしているやないか(笑声)それだけでも男よりは偉い(嘆声)向こうは金を取ってさして、男は精力を取られた上にまだ金を取られる。だから女権拡張せんかって昔から女の方が権利が上に決まっている。女は今更にそんな謀反は起こさんでもええ。古から女の方が偉いに決まっている。男は看板にされているのんや。嬶は関白の位と古くからいうているやないか』
林 『奥さん奥さんで行かんならんのう。こんな事でも聞いてみろ、それこそ威張りやがって仕方がないぜ、聞かしたら十年目やな』
聖師 『しかし事実、女の方が偉い。男は女の自由になっている。何いうても女を怒らしたら怖いわい。家の中をどないされるか判らへん』
井上 『信仰でも嫁さんが固い信仰を持っている方が男が固い信仰を持っているよりしっかりやって行きますなア』
聖師 『そらそうやとも』
高見 『男でも○○県に男娼という奴がありますが、ああいうのは、どうなんですかなア』
聖師 『古からある。若衆とかいうて…。あれは女の風をさして白粉をつけていてそれを男が買いに行くのや。十三、四から十五、六くらいまで尻に毛が生えたらいかん』
井上 『女は買いに行かんのですか』
聖師 『女子も行くが男も行く。両刀使いや。それだから十五くらいを過ぎるとあかん。つまりその括約筋が固くなるし毛が生えて来るからいかん。男娼の事を陰間という。それは頼朝がカゲマサという若衆を寵愛した事が始まりで、それをカゲマ カゲマと呼んだ。それでカゲマというのや。それを略してカマというようになったのや』
寿賀麿師 『オカマを掘ると言いますなア』
聖師 『古は男色というた』
高見 『しかし現在でもあると聞いてビックリしました』
聖師 『九州あたりでは結婚するまでに女に相手になると、みんなが相手にしなかったもんや。それで男の取り合いが激しかった。そのために生命の果たし合いをやったくらいや。あんな事ばかり書いた本があるよ。「男色物語」とかいうんだったと思ったが……』
林 『何だか汚いなア』
聖師 『そんなこと考えたら出来やへん。学生などには随分流行っている。それに兵隊に坊主……何しろ小姓を置いたらキット嬶の代わりをさしている。その方面では徳川家綱なんて有名やがな』
寿賀麿師 『女を小姓に化けさして無理にやらしたら、食ってみたらうまかったんだろ……ハヽヽヽヽ』
林 『エート、今、廃娼問題が盛んに論議されているんだが俺は到底望めない事だと思うんだが……』
聖師 『あれを止めさしたら強姦などが流行って……』
林 『いわゆる神代になってもあるんでしょうか』
聖師 『自由結婚やから、自由にウーピーをやるやろう』
井上 『すると堕落するように思われますなア』
聖師 『堕落するかも知れんが人間という動物はマアそんなもんや』
井上 『今の世の中より益々ひどうなるね』
聖師 『今は警察がやかましいから表面に見せんだけで同じことや。昔をみい。そんな事ばかり仕事にしておったもんや。古の大宮人でもそんな事ばかりやっておった。歌でもそこから出て来ているのや』
井上 『昔とあまり変わっておりませんな』
聖師 『今の世の中が非常に乱れて来たというが、保元平治の時分は人を殺したり等ばかりやっておった。それくらいならいいが、陛下を島流しにしたり、君臣、父子、夫婦、兄弟の道というものはすっかり乱れていて……そんな事を思えば今の世の中は余程良い方や。保元物語でも読むと判るが日本もあれだけすたれた事はない。今は交通が便利だし、新聞に書き立てるから余計目立つのや──。大阪に三百万人住んでおって、二百軒もあるカフェーで一日二十人や三十人悪い事をしてつかまったと言ったって、そのくらいの事はある。大阪市民の九牛の一毛にも足らん事や、それを大きく書き立てるからそんな風に目立つのや』
林 『お筆先に「芸者娼妓は平らげる」云々と書いてありますが……』
聖師 『それは平らげる。つまり無くなる代わりに自由に許すようになる。好きな者同志にやれば良い。好きな者同志でやるのやから離れんに決まっとる。好きな同志が結婚するのは本当や。嫌いな同志をくっつけたって合わせものは離れてしまう……』
井上 『中途で男でも女でも嫌いになって他のが好きになったらどないします』
聖師 『中途で嫌いになるような者は本当に好きな同志ではない。未だそれは仇花や。──ワシらの若い時は若い娘は男の三人や五人持っていないのは恥だ、くらいだったがなア』
寿賀麿師 『綾部あたりでも、あそこの娘は固うなって、なんてよく聞きますね』
聖師 『ワシらの若い時は女が余計あるほど手柄やった。親もまた馬鹿や、それを喜んでいたのやから。まるで親が奨励しているようなもんや。──ワシがまだ綾部へ行った時分、夜分遅く友達が表に来て「お澄さん、これからどこそこへ泊まりに行くんや、五人連れで」なんてさそいに来たもんや。四人も五人も一緒に同じ所にさそい合って行ったもんや
──速記者の方を向かれながら──
コラ、こんなしょうもないこと書くなよ(一同大笑)…………(中略)…………実際今の若いものは可愛そうや』
一同 『早く生まれておけば良かったなア』
──大笑── 以下次号