霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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神霊座談会 長沢雄楯・出口王仁三郎

インフォメーション
題名:神霊座談会 長沢雄楯 著者:
ページ: 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-05-16 06:30:40 OBC :B108500c24
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]『昭和』昭和8年7月号
記者 今晩は長沢(雄楯(かつたて))先生を囲んで色々お尋ねしたいと存じます。どうぞよろしくお願い致します。

長春からきた電報

記者 では、今日、長春(ちょうしゅん)からきた電報の説明から始めて戴きましょうか!
長沢 そうそう今日長春から出口さんに電報が三通参りました。
 あちらで心霊研究会を開いたらその席上、出口さんのお姿が現れ、声も聞こえて、歌をお詠みになったそうです。
 これを説明する前に、霊魂というものはどういうものであるかという事を簡単に申し上げます。
 一体、霊魂は一霊四魂(いちれいしこん)であり、一霊とは直霊の魂で四魂というのは幸魂(さちみたま)荒魂(あらみたま)和魂(にぎみたま)奇魂(くしみたま)であります。
 電報によりますとお姿が現れ、そして声が現れたのでありまして、そしてあの電報には……
記者 ここにその電報を持って来ておりますから、ちょっと読みます。
 電文「昨夜神霊実験会にお顔とお声の物質化を一同深謝す、高野、城市、内山」
 電文「昨夜神霊実験会に多大の御神助を賜り御姿で御歌をたまわり一同感謝しまつる
 御歌 春の夜の集いうれしやわが思いここに初めて芽ふかんとする
 誤り御訂正を乞う」
出口 うれし「や」の「や」と「も」とだけが聞き間違っている。
長沢 これが証拠でございまして、日本書紀や古事記に大国主神(おおくにぬしのかみ)少名彦神(すくなひこのかみ)がこの国をおつくり遊ばされた時、未だ全く功を奏しないうちに少名彦神は常世の国へ御渡りになったので、大国主神は非常にお嘆きになり、吾一人でどうしてこの国がつくり終えられるかと仰せられた。
 この時、海を照らして寄り来たる神があります。その神に汝はいずれの神であられるかと大国主の神がお尋ねになると、寄り来たった神が、吾は汝の幸魂、奇魂であるとお答えになった。この謎はちょうど電報と同一のものであります。
 出口さんは御存じないのに向こうに姿を現し、歌を御詠みになったのであります。
 云いかえて申しますと、一霊四魂の働きが(たい)を現したのです。こうしたことは元来疑わるるべきものではないのですが、日本に仏教が渡来して来た後というものは全く神霊を御送迎申し上げることが衰えて神様へ感応することの術を失ってしまったのであります。
 神様から感応がなくなってから段々とこういう方面の智識にうとくなり、今日では信ずる信じないどころか頭から疑ってみる人ばかりなのであります、こういう事実は他にも色々ありますし、また西洋にも多くの例があり、決して奇怪な疑うべきものではないのであります。

サニワ

記者 先生は神霊の感応やサニワ審神等、どうしてお習いになったのですか
長沢 サニワはサニワで、こうした事を書いた本があります。そうした本を充分に読んで心を清め、清潔な濁りのないことに心がけ、更に天津神国津神を信仰しなければなりません。
 それでやはり一番大切なのは琴師(ことし)です。すべて神懸りは悪い心を持ってやると邪神に感応し、清潔な心をもってやると正神に感応しますが、琴師の心が一番大切です。この修業はどうしたらよいかとのお尋ねでございますね?
 それには先ず神様の本をよく読む事です。神様の書物ばかりでなく天文学とか或いは地質学とか、鉱物学とか物理とか内外歴史等、諸般の学術の本を務めて広く見て腹に入れておかねばなりません。何故かと申しますと、わずかな軍事の事をお伺いするにも、大略の事を心得ておかぬと、お示しの事を正確に受け入れかねるのであります。鉱物学の事をお尋ねする時には、やはり好物に関しての智識がないと、お伺いを立てるに支障を来します。これらが先ずサニワに一番必要な条件だと思います。

何故予言は的中するか?

記者 どういうわけで神示があたるのですか?
長沢 神懸りの大切なのはそこなんで、何故神示があたるかと申しますと、世の中というものは我々の眼には見えないが神様の世界でお定めになった通りに動いて来るのであります。
 神様の枢要な御方が色々御経綸をなされる、正神はおそばに仕えている間に機密が漏れる。それを神懸りの際にお告げになる。それであたるのであります。
 これに反して邪神の霊の場合は何故あたらんかというと、邪神は正神と(おの)ずから(くらい)する所が違い、到底正神界の経綸を知る(よし)もなく、その告げるところは曖昧であるばかりでなく、時としては正反対の事をさえ、平気で告げるのであります。
 しかしこの場合、審判が正しい心を持ち、正確な判断を下す時には、悪神(わるがみ)の霊の憑かった事がはっきりと判り、彼をたやすく喝破する事が出来ます。正しい神懸りのあった例も多々あります。
 神武天皇御即位以来、日本の国家に大事変が起こる度ごとに、必ずお知らせがあったという事が日本書紀に明瞭に出ています。
 これは単に日本書紀に限らず、今日まで事変のある時には何かの形式でお知らせがあったので、現に私どもが子供の時、徳川政府が倒れる直前でしたが、天からお札が降って来た事があります、この事は何かの本にも書いてありましたが、私も事実を見ました。日清役の時も日露役の時にも不思議な事が続出した事は世間にもよく言われております。
 これらはすべて神様の御仕業であったという事は、歴史をひもとけば一目瞭然であると思います。
 爾来(じらい)、我が国は神国として光輝ある国体を宣揚して来たのであるまするが、中世において仏教が伝来し我が国に非常な害毒を流しているのであります。
 崇神天皇を蘇我の馬子が(しい)(たてまつ)るような大逆無道な事が起こりました。これは朝廷はじめ大臣連が仏教を信仰してしまって、我が国の皇祖皇宗の天津神、国津神を忘れるに到ったからであります。
 現代においても、次第々々に国家が乱れ、赤化分子が暗躍を続ける有様ですが、これみな、国の守りである神々たちを忘れたる結果であることを証明しているのであります。
 今日においても、国家に事ある時にお告げのあることは日支事変の際においてさえ、実証を挙げる事が出来、歴史の上から実に一点の疑いもないのであります。
 先ずその一番手早い例を申し上げますならば、この皇道大本がかくの如き大きな団体になったのも神慮なんであります。出口さんが始めて私どもの所にお出でになったのは明治三十一年で、今年でちょうど三十六年目になります。
 その時分に御努力をされて今ようやく御神力によって芽を出し、支那の紅卍字会などと連合し、国家の為、国際的にも色々重大な仕事をするようになりましたが、若い当時、出口さんが霊学や神道を研究されたのも、神様から知らず知らずにさされていたので、出口さんが神様に一心に仕えられたというほかはないのであります。

霊界物語

出口 それから私のところに来て今後の世界、日本はどうなるというような事を聞かせという人があるけれども、霊界物語にすべてがわかるように、特に信仰してる人にはわかるように書いてある、日本はこれからどうなる。世界の動きはどうなるという事も、ちゃんと示してある。大正十年から示してあるのに、今日においても皆に分かっていない、早く次を出して下さいと言っている人もあるが、出す必要はない。みな食傷してしまっている。
 物語には滑稽(こっけい)諧謔(かいぎゃく)もあるけれども、それは一つの色をつけているのであって、そういうところにかえって余計書いてある。
 読み方がまだまだ足らぬ。
 物語は決して予言書ではない、確言書である。三十万年昔の事であるが、これから先、三年、五年のうちにそれがみんな出て来る。
 今のうちにしっかり読んでおかぬと、まさかの時に役に立たない。
記者 鎮魂帰神はただ今お()めになっていられますが、またいつかの時期に……
出口 あれはうるさいでネ…魂の研けた者で、よく解したものがやるのはいいが、そんなに研けた者はいない。そのくせ、やらすと邪霊がかかってさっぱりいけない。みな邪霊のかかりそうな顔ばっかりだ。
 (出口氏ほか一同大笑)
 本当や。……
記者 何か条件をつけて、ある程度のお許しを頂くといいのですが、修業者などがよく聞きたがっています
出口 条件をつけるにも、条件をつける資格がないやないか。
記者 霊界物語を拝読さして頂くのが鎮魂でないでしょうか?
出口 それはそうだけれど、まだ本当に霊界物語を解していないからいけない。もちっと研究会でも開いて勉強せねばいけない。
記者 修業者がよく鎮魂帰神を要求して「昔出来たのなら今でも出来そうなものだ」と言います。……
出口 自分と相談してみればよくわかる、審神(さにわ)の出来る者があると思うか? あの浅野氏浅野和三郎にしたって、悪霊がかかって来ると、一生懸命談判をやっている。朝から晩まででもウンウン言ってやっている。
 そこへ私が行って「オイオイ先生エエカゲンにしたらどうや」と言うて背中を叩いてやると、おさまってしまう(笑声)古い信者は経験しているだろう。神懸りをやらすのは狂人(きちがい)に刃物を持たすようなものだ。

学理と神懸り

長沢 私の考えでは、学術というものは進歩変化のつきないもので、一貫した真理とは云えませぬ。大略は学理によって解決出来ますが、解釈の出来ないことがあります。それを幽冥の研究、或いはお示しにより、学理の疑問を解釈して行きます。
 今日まで非常に苦しんだのは何であるかと申しますと、学理が実際と一致しない事でありましたが、最近では一致する事が多々あります。そうしますと人に説明するに学理の方がしよいものですから、学理の研究も一通りは必要であります。
出口 悪霊がかかって魂を犯されると自分が一番えらいもんになって来る。そうして団体を破壊してしまう。
 あちらに大将、こちらにも大将が現れて、全く統一を失う、そこへ訳のわからん面白い事でもやり出すと、みんなグルになってやり出す。
 相当な学問もあり、智識のある人と言っても、浅薄なものだ、何にしても、受け売りの学問は駄目だ。

邪霊の神憑

長沢 審判していて悪神が来た時ぐらい面白いものはありません。
 もっとも訳のわからんヤクザ神がかかって来た時には霊縛(れいばく)をかけるのですが、するとバタンバタンと苦しみます。それから何者かを(ただ)します。
 この時、審判する方に力がないと始末におえません。縛ると言っても霊の力で縛り上げるのですから、余程こちらに霊の力が要ります。また神様に御願いして悪神を退散して頂く場合もあります。御嶽教(みたけきょう)の神寄せにしても随分怪しげなものが多々あります。法華の神寄せにしてみましても、正神よりも邪神に使われている場合をよく見受けます。
 これは祈っている者の心が清くない事を物語っているのですが、この神懸りの場合に正邪の分かれて来るのは何であるかと申しますと、その信仰であります。
 仏道と神道の根本原理を極めてみますと、仏教というものは、釈迦のお経に出ている寂滅為楽(じゃくめついらく)是生滅法(ぜしょうめっぽう)を以て眼目としているのであります。
 滅亡するを以て楽しみとするというのですから、神様の方の道と根本的に違って来ます。
 神様の道では漂える国を造り固めなすというので、この地球を固めるに伊邪那岐命(いざなぎのみこと)夜見(よみ)の国からお出でになった章などには、明らかに地球を完成するに苦心された事が示されてあります。
 また天照大神は、青人草を恵みいつくしみ給わんがために、この地球をお造り下すったのです。
 そして神々がお造り下すったのは、滅びるを以て楽しみとせよとお造りになったのではなし、楽しく人類が生活し得るようにお造りになったのであります。神様はどこまでも人も栄え国も栄え、世界が繁栄して行くのを御意志とせられているのであります。
 人間同志は栄え楽しみをもってこそ、欲も起これば働きもする。それを仏教のように寂滅為楽なら死んでしまうより致し方がない。この一例として妻帯肉食を禁じていた事実があります。今日ではあまり励行もしていねば、そんな馬鹿げた真似はしていないようですが、これを以て仏の御胸にかなうものとしている事は、大きな誤りとせねばなりません。
 この地球上にある生物が男女の交接を絶ったならばどうでしょう。百年を待たずして滅亡するの他ありません。正邪の判別はここにおいて厳然としています。
 人間は(あめ)益人(ますびと)と言って、どんどん繁栄して行かねばなりません。それを色々な規則を設けて絶やすようにするとしたならば、それは罪悪の二字を使用しなければ致し方ないではありませんか? 自然を破壊するような教えは根本的に誤っているのでありまして、かような信仰の下にする神懸りに正神の降る事は到底覚束(おぼつか)ない事は当然であります。

印度では死んだ方が極楽

出口 印度のような暑い所では、水の中に入るのが一番極楽で、それで極楽に行く者は水の中に咲いている(はす)に乗って行くと教えたのだ。
 また、従って、あんな暑い国にフーフー言って苦しんでいるよりか、一層死んだ方が極楽だ。しかし印度ではそうであるが、日本では決してそうは行かない。
 日本は四季の国だから、そんな死ぬよりか生きておった方がずっと楽しみだ。釈迦の寂滅為楽は印度の事であって、日本の事ではない。
 坊主はこれをごっちゃにして有難がっている。
長沢 儒教でも仏教でも、その結果を見るとわかる。
 印度の国は産物も多く発達していなければならないのに、あの通り英国に占領されてしまい、完全に滅びの歴史をなめ、戦争もせずに哀れな民族となっている。
 また支那も戦争ばかり繰り返し、何ら国家としての治安なく、流浪の民族となってしまった。
 更に仏教王国であるかのような支那、大満蒙もしかりであります。
 この他、朝鮮、シャム現在のタイ等、仏教を信ずる国は滅亡し、仏教そのものも滅びを招くところであったが、ひとり日本に渡来して仏教は救われたようなものであります。
 今日、仏教は宗教として何ら必要はなく、むしろ宗教としての価値はないのであります。ただ髑髏屋(どくろや)をやっているだけであって、これをやめると仏教は駄目なのであります。
 また信者にしても釈迦の経典、キリスト教の新約聖書などを理解している人は少ないようです。
出口 信者どころか坊主にわかってない。納棺式も出棺式も埋葬式も死んだ時も年忌も忠魂碑の慰霊祭も同じ御経だ。
 御経がわからんから、そんな馬鹿な事が出来るのだ。出棺式と言っても、出棺式の御経でなく、死んだと言っても死んだ時の御経でない、兎に角、坊主は御経を知らんから有り難がっているのだ。わからないから阿保らしいと言うてやめると食えんからくっついている。
 大本は純粋の皇道で、世界一家を建造する宗教である。底本では出口の発言とつながっているが、ここから長沢の発言かも知れない頭に神が宿るのでありますが、仏教はそうではなく、時にのぞんで方便を使い、所によって違うように説かれています。
出口 今のうちはまるきり反対の教えでも、みな引き寄せておいて大きな力になったら、本当の皇道で仕事をする、ドイツのヒットラーにしてもだ、始めは全然反対の団体も結構々々と言うてよせて、あんな大きな党を結成した。
長沢 今日の世はまるきり何もかも一変して来ました。以前には皇道を唱えられないような時代もありました。
出口 皇道なんか唱えたら大正十年のように妙な眼を向けたもので、とても唱えられなかった。

神は皇道の原素

長沢 始めて皇道会が出来た時分には全国にも皇道主義を唱える者はほとんどないと言った有様であった。
 今度陸軍で皇道会というものを起こすそうですが、皇道主義は神様の事を充分腹に入れておらねば、皇道という事はわかるものではありません。皇道主義にとって神の一字は皇道の一大原素となって来なければなりません。
 日本の皇室の万世一系は何であるか。邇々岐尊(ににぎのみこと)が御降りの時、天照大神の御神勅によることはいうまでもありませんが、神の存在を否定して万世一系は解釈することは出来ないのであります。
 それから仏教では生物が土から生えたように人も土から出たのだと言っています。
 須弥仙(しゅみせん)という山があって太陽がその山にかくれた時に夜が来、山から出た時に昼となると言っている。しかし世界のどこをさがしてもそれにあてはまるような山はありはしない。
 それからキリスト教では天帝が地球を造るのに六日間で造り、やれやれというので一日休んだのが日曜日で、それが今日まで残って七日目に日曜が一日あって休むと言っております。
 いずれにしても今日の宗教は天地の理を説く事が出来ないのみか、その言うところは愚かの至りであります。ですから神懸りをして正しい神が懸かって来ずにいい加減のものが現れます。
 御嶽教(みたけきょう)などの神懸りになるととても滑稽な事があります。
 神懸りが始まると先ず
「名は何という? 国はどこ」
「天地開闢(かいびゃく)国の底津の神じゃぞよ」
「それなら天地開闢以来の天地の過程につき話してみよ。汝は開闢と言うが何故に開闢というか理由を申し立てよ」
「知らない」
 国の底津の神は真っ赤な偽りで畳に頭をすりつけて謝罪して、終いにはどたんと後ろに倒れて逃げてしまう。
 法華経のも同じ事で「お前はどこの者で何という名か」と警察の司法官が調べるようにして行くと、とうとう正体を現す。始めのうちはヤクザ神でも法螺を吹いて来るが、すぐ化けの皮をはいでしまう。
出口 御嶽教でも法華経でも中山そう(でん)の神寄せでも、みんなそんなもんだ。

江尻の法華坊主退治

長沢 江尻静岡の清水駅の西側にある地域のことか?に徳屋という貸座敷がある。ここで法華坊主が三、四十日も南無妙法蓮華経ぽんぽんをして一同を集めているという話を聞きまして、それは面白い事があろう。と私と出口様がそこへ行きました。
「この方は大阪の商人でお出でになる。今度商用でこちらへ来ているが、どうも身体がすぐれないので、あちらこちらの医者にかかったがちっとも効がない。どうかよろしく御祈祷を願います」と出口さん病人になってそこへ座るや否や、坊主の体が三、四尺天井へあたるほど上がった。それから足の根をつけてから出口さんがそれに向かって仲言(ちゅうげん)するのに
「汝は何者であるか、愚民を欺している不届き千万な奴じゃ。これにてやめればよい? やめなければただでは置かんがどうじゃ」
 坊主は頭を畳にすりつけて「今後は致しませんから、どうか御許し願います」、それでその場はすんだが、この法華坊主を信仰している博奕打ちが大勢おりましたが、それらが非常に怒り出口さんを叩き殺すと言って手に手に凶器を持ち、帰り路に待っていました。
 幸いに危険な目に合わず帰りましたが、なかなか奇譚でした。
出口 あの晩には沢山棒を持ったゴロツキが、辻に並んでおった。
 この江尻は遊郭街であるが、ある家の二階へだまって上がり、それから裏口から田圃を伝って帰って来た。
長沢 それがまたどうも不思議で、遊郭の人も一人も知らずにいました。

淫乱上人

出口 それからいよいよ綾部への帰りに大槻伝吉さんの家へ寄って行こうと思って、岐阜で下車したら、まだ夜明け前であった。どこか宿へでもと思ってある家の軒に立っておった。
 そこには橋本屋と書いてあったが、六時頃になるとそこの嫁さんらしいのが戸を開けて「貴方は御先達さんですか」と聞くので「私は淫乱上人だ」と言ってやったら「はア淫乱上人さんですか、まあ上がって下さい」と言うので「一人や二人の女郎ではいかぬから、一度に二十人くらいあげてくれ、その代わり五十銭にまけて貰わにゃいかぬ」とかけあってやると「ヘエしょうがありまへん、昼まではお客もありませんから、まけておきます」という。
 それで二階へ上がって二間も三間も障子をはずして女郎を二十人くらい上げた。兎に角、昼までどうしようとこうしようとこっちの勝手だから、女郎の一人々々をつかまえて、お前はこういう男を一心に思っている、お前は逃げようとしている、お前は誰を騙そうとしている、と冗談をいうと、みなそれが当たってワンワンと泣き出すやら騒ぐやら、部屋中が大騒ぎだ。
 そこの家は稲荷さんを信仰していたのだが、庭にお宮ほどの大きな稲荷さんが祀ってあった。私が行く前に金光教(こんこうきょう)の布教師が来て占ったのに「一週間目に不思議な人がやって来る、そして家の事についても解決をつけてくれる」と言った。
 その家のゴタゴタというのは、親爺さんが稲荷さんを祀り、おばさんが金光教で絶えず、どちらが良い悪いと争っていたのである。そこへ私が行って話をしてやったのが、意外に強く響いて女郎はみな揃って入信する事になった、綾部へ帰ってからも女郎から手紙が来てしょうがなかった。
 その後一度来てみてくれというので、言ってみたところが、大きな教会を新しく建てて私に居てくれと言っていたが、私は綾部の方へ帰らねばならないので、私の代わりに大野熊次郎という人に居らすことにしたが、その後いろいろな事がゴタゴタ続いて、折角開かけた教会もいつの間にかつぶれてしまった、始めに淫乱上人と言った言霊が祟って、ひっくり返ってしまったのだ。……
 そんな奇跡はいくらでもあるが、そんなことばかりやっていると肝腎の教理を聞く者がなくなるからやめたのだ。
 まア今日はこのくらいにしておこうか。
記者 どうも有り難うございました。
 (終)

   
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