霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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血潮

インフォメーション
題名:血潮 著者:出口王仁三郎
ページ:252
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-30 20:57:00 OBC :B119300c058
二十五六歳の頃
母親の肩でかぜきりかへりたる三日目の(あさ)彼女のふみ()
玉章(たまづさ)(ひら)きて見れば京都市へ奉公にやらるとしるしありけり
京都市の呉服店(ごふくてん)にて奉公すると彼女の手紙こまごまきたる
真心(まごころ)(きみ)におはせば一度ぐらゐは尋ね来ませとしるしありたり
()(たて)もたまらず京都市大宮通り四条(しでう)呉服店(ごふくみせ)()ひゆく
呉服店(ごふくてん)()りて品物調べつつ待てども彼女のおもかげもなし
上女中(かみぢよちう)なりしがためか店の()何時(いつ)まで待てど彼女は見えず
店員に顔のぞかるるじれつたさ羽織地(はおりぢ)一反(いつたん)買ひてかへれり
丹波より六里の雪の道ゆきてかへる夕べのさびしきこころ
彼女()のこと思はじと雄心(をごころ)(あきら)めみれどもわすらえなくに
待てど待てど()まさぬ(きみ)ぞ恨めしと(しばら)くたちて彼女の(ふみ)来る
()ごころの(ふみ)見て胸の高鳴りのやまぬくるしさ又(きやう)(のぼ)
呉服屋の店をふたたび()ひゆきて待てど彼女の声だも聞かず
二時間()(みせ)に待ちしがあきらめてまた袴地(はかまぢ)を買ひてかへりぬ
それ以後は彼女の(はう)より(ふみ)()(われ)もゆかなく(とし)ふりにけり
青春の血に燃えつつも行末(ゆくすゑ)をおもへば恋の鉾先(ほこさき)ゆるみぬ
独り立つ身にしあらねば恋心(こひごころ)おこすべきかはと(あきら)めてけり
時折(ときをり)に彼女のうはさきくごとにあきらめし胸ふたたび高鳴る
若き日の血潮(ちしほ)燃えたつ秋の日に紅葉狩(もみぢがり)してこころなぐさむ
忘れむと思へどときどき夢に見る彼女の姿に悩みし若き日
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