大江颪に送られ来る雪寒み筧の水は凍りて動かず
御開祖は雪の積れる朝庭を冷水浴をおこたり給はず
われもまた新年松の内明けの十五日の朝冷水浴み見し
頭髪はたちまち氷に閉ざされて風邪にかかり発熱を為す
吾が寝ねし床の辺近く勇祐は神徳貰へと鼻すすり泣く
をりもあれ浦上松原入りきたり改心あれと涙に諫むる
蛙にあらぬ身なれば今日以後は冷水浴は為ずと吾が宣る
本町ゆ西村庄平氏母来りやぶれし指の平癒頼めり
気の毒に堪へず病床跳ね起きて祈願をすれば直に癒えたり
西村の母は感涙にむせびつつ真正の神と信仰ひにけり
西村の母はこれより家族つれ吾が大本の信者となりたり
綾部町の人にて信者に入りたるはこの人をもつて濫觴となす
浦上や竹村松原吾が為せし神業を見てややおどろけり
艮の金神様も御苦労よ小松林に憑りしと彼等いふ
『竹村』海潮さん慢心なさるな大神が臨時御使用遊ばされたのぢや
『竹村』水行も出来ぬあなたに神徳があらふ筈なし慢心なさるな
『竹村』慢心は大怪我の元これからは朝夕冷水浴を為されよ
何処までも冷水浴はいやですと吾れ頑張りて臥床に入りたり
竹村は執念ぶかく枕頭に坐して改心と水浴せまれり
『上田』君達は身魂に汚れ曇りあれば冷水浴は当然なるべし
『上田』欲望も何も持たざる吾なれば冷水浴の必要は無し
『上田』小山田の蛙や蠑螈の霊魂持つ君等は努めて冷水浴せよ
数年間はらひ清めしわが身魂蛙呼ばはりしたと怒れり
『竹村』私等が蛙の魂なら上田さんは雪隠虫の霊魂と罵る
『上田』雪隠の虫は糞から這ひ上り羽化して人の頭に止まるよ
『上田』糞虫の俺は是から出世して君等の頭に糞かけてやらうか
『浦上』雪隠の虫がそれほどお好きなら先生今日から肥料かつぎなされよ
『上田』百姓の伜の俺は肥料かつぎ馴れきつて居るよ驚きはせぬ
『竹村』もの臭い人と思へば糞かつぎかそれでは神仕は職に過ぎてる
『浦上』神様に仕へる人は肥料仕事するやうなことでは到底駄目です
『松原』俺だとて肥料かつぎした百姓だ神に奉仕の出来ぬ筈なし
色色とくだらぬ事を枕頭に語る五月蠅さ夜具被りたり
夜具被ぶり身暖まりコンコンと苦しき咳は頻りに出でたり
『竹村』野狐の霊が憑つてコンコンと鳴いて正体露はしよつたぞ
『松原』馬鹿なこと吐すな狐が憑かずとも風邪に罹ればコンコン咳が出るよ
くだらない迷信連があつまりて一月早早争論して居り
一月も寒風深雪に過ぎ去りていよいよ節分祭は来れり