八十余年撫育されたる吾が祖母の帰幽かなしみ終夜眠らず
わが祖母は言霊学者孝道翁の実妹にして八木嶋の産なり
幼なき日はわれ祖母に言霊の応用習ひて声なき声聞けり
吾祖母の伝へ給ひし言霊の教は世界無比なりにけり
わが祖母の帰幽は父の他界より一入惜しく悲しかりけり
十三歳小学教師となりたるも祖母の教の力なりけり
わが祖母は雀のなく音聞きわけて明日の晴雨を覚り給へり
わが祖母のからたま埋めし西山は忘らへ難き墓地となりけり
死りたる人は再びかへらじと思ひなほして心に鞭うつ
庭の面の白梅の花は散り初めて梢に青き若芽のぞけり