霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(四)

インフォメーション
題名:(四) 著者:浅野和三郎
ページ:98
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142500c26
 篠原君は始終自分の所へ来て(とま)つたが、其(うち)際立(きはだ)つて変化を生じて来たのは酒量の減少だつた。斗酒(としゆ)()ほ辞せずは()と形容に過ぎるかも知れぬが、兎に角最初篠原君の酒量は決して(あなど)るべからざるものがあつた。()げば飲む。飲めば()ぐ、晩酌(ばんしやく)に五七本の徳利を倒す位は平気であつた。貰つた月給を()と晩で飲んで了ふ位の芸のある人だから、(すくな)くも二升位の手並(てなみ)があつたと見てよからう。
 所が大本へ来てから、()と月ならざるにガラリ豹変して、二三杯で陶然(たうぜん)たる程の下戸党(げこたう)になつて了つた。自分の酒量は、大本入信以前と以後とに於て、格別の差違を認めない。依然として一本位飲める。所が篠原君の酒量は(せう)から(しやく)へ、二桁も飛ばして減つた。
什麼(どう)だ。モウ一つ飲まんか』
『イヤ()う沢山……』
 三杯目の(さかづき)をそツと引つ込ますやうになつた。(はた)(さかづき)を重ねる自分は、(いささ)か気の毒に感ずる位であつた。
 が、睾丸(かうぐわん)の方は中々さう手取り早く(らち)()かなかつた。幾らか(なほ)りかけると、すぐに海軍生活が恋しくなる。世の立替へ立直し、日本の世界統一も無論結構ではあるが、(しか)し何を言ふにも現役の青年士官の身の上である。現在が大尉の最古参で、この秋には黙つて居ても少佐に進級する。妻もあれば子供も三人ある。いかに何でもこのまま現職を抛擲(はうてき)して、修業三味の綾部生活に這入(はい)りたくないのは、人情の自然であらう。自分も篠原君の病気が一時も早く全快して、そして実務に服する日の(はや)からんことを衷心(ちうしん)から神に祈願した。いかにせん、イザ綾部を発足(たと)うとすると、覿面(てきめん)に睾丸が腫れ(あが)つて痛みを増して来る。(それ)でも我慢して無理に停車場へ(むか)はうとすると、(たちま)ち気絶する程度に締め上げられる。流石(さすが)の豪傑も思はず悲鳴をあげて、跳び上がらずには居れなかつた。
(ここ)に居れといふのに貴様が勝手に帰らうとするから痛めるのだ』と天狗さんはお(なか)の底から号令をかける。上官の命令なら、まだ反抗の余地もあるが、自分の肉体を占領し、生殺与奪の全権を握つて居る天狗の命令に対しては、いかんともする事が出来ない。
 自分は屢次(しばしば)鎮魂して、(くだん)の天狗を(おさ)へつけやうとして見たが、天狗さんは実際神界の命令で睾丸を痛めて居るらしく、霊縛(れいばく)も余り効かなかつた。で、賛成でも不賛成でも、その命令を奉ずるより(ほか)致方(いたしかた)がなかつた。(ただ)し当人が退綾(たいりよう)の決心を(ひるがへ)すと同時に、痛みはぱツたり其場で()むのであつた。
 斯麼(こんな)(ふう)で、篠原君は厭々(いやいや)乍ら荏苒(じんぜん)「荏苒(じんぜん)」とは物事が延び延びになるさまをいう。として綾部の生活を続けた。一挙一動も自分の意志では動けない身の上となつた。
 さうする(うち)に、篠原君の守護神の転換が行はれた。什麼(どう)も様子が違ふから一遍(しら)べて呉れとの篠原君の依頼によりて、自分は早速鎮魂して発動させて見た。すると(はた)して天狗さんの場合とは様子がガラリ違つて来た。天狗さんが憑つた時には、かツと紅潮がさして、そして意気傲然たるものがあるのに反し、今度は満面に蒼味(あをみ)を帯びて審神者(さには)に対して(あく)まで恭謙(きようけん)謹慎(きんしん)の態度を(うしな)はない。
何誰(どなた)ですか、お()を伺ひます』
『私は肝川(きもかは)竜神(りうじん)(ござ)ります』
 と矢張り言葉(くち)の切り方は上手なものだ。
什麼(どう)して篠原の肉体にお(かか)りですか』
『神様の御命令によつたものであります。篠原の肉体に入つて御用せいといふことですから、それで(かか)りました』
『偶然に命ぜられたのですか』
『イヤ矢張り篠原とは因縁がありますが、詳しい事は(まをし)上げられません』
 肝川(きもかは)には(おも)たる竜神が八柱あつて、艮之金神の眷族として大活動をやつて居る事は、神諭の中にも明記されて居る。自分も()くる大正七年の十月に肝川(きもかは)に参拝して、大体その実情を知ることを得たが、兎に角竜神さんの神懸りは、当時の自分に取りては(はなは)(めづ)らしかつたので、多大の興味を以て其鎮魂に(あた)つた。篠原君の肉体に(かか)つて居るのは、肝川(きもかは)の滝の上の竜神の眷族で、まだ十分の修行を積んでは居なかつたが、それでも前の粗野な天狗さんの比ではなかつた。
 自分は篠原君の事などは其方(そつち)()けにして了つて、矢鱈に質問に(ふけ)つたものだ。竜神界の消息が幾分か腑に落ちのたは、全くこの竜神さんの(たまもの)であつた。古事記の講釈なども請求したが、()る程度まで之に答へた。時々難解の箇所があると、淡白に、
『私には(わか)りません。この()ぎまでに伺つて置いて上げます』
などと言つた。(いづ)れかといふと、少々多弁過きる位で、自分の方から尋ねもせぬのに、
『来年の(くれ)は大本の内部に大事件が(おこ)ります、教祖が……』
などベラベラ(しゃべ)り出したことがあつた。すると、この時(にはか)に別な神が篠原君に(かか)つて、大きな声で、
『黙れ! 其様(そん)な事を言つてはならん!』
 自分達には、その時竜神さんが、何を言はうとしたのか判らなかつたが、後になつて考へると、ドウも大正七年十一月六日の教祖の帰幽を素破(すつぱ)抜かうとしたものらしかつた。竜神さんは一方(ひとかた)ならず恐縮の(てい)で、翌日鎮魂の際に、
昨日(さくじつ)は神さんから散々(しか)られました』
などと言つて居た。
 審神者(さには)に対して恭謹(きようきん)な竜神さんも、篠原君に対しては、()の態度がガラリ一変して、極度に強硬辛烈(しんらつ)な制裁を加へ、又絶えず叱言(こごと)や訓戒を(くだ)して居た。そして睾丸を痛めることは、(はるか)に天狗さん以上であつた。
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