霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サブスク完了しました。どうもありがとうございます。サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい

(七)

インフォメーション
題名:(七) 著者:浅野和三郎
ページ:111
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142500c29
 五月八日には香森(かもり)といふ法学士が参綾(さんりよう)した。この人が又秋山(あきやま)(きし)谷本(たにもと)()の諸氏と同じく、例の池袋の天然社組だ。大方秋山さんか但しは谷本さんから、大本の話をきいて来る気になつたのであらう。(かつ)て××大臣の秘書官を勤めたり、××会社の重役を引受けたり、相当の社会的経歴を有せる上に、薩摩の出身と来て居る。豪放(がうはう)磊落(らいらく)の表皮の下には、却々(なかなか)巧智と才弁を蔵し、一寸(ちよつと)した応対の間にも、却々(なかなか)人を()らさぬ如才(じよさい)なさがほの見えた。
『大本へも却々(なかなか)面白い人物が来るやうになつたものだ』
と自分は心強く思つた。
 例によりて、大本の説明に二三時間を(つひや)し、夜の九時頃になつてから、金竜殿で鎮魂といふことになつた。其時分には夜間の鎮魂には燭台(しよくだい)を使用した。四十八畳の広間の真中(まんなか)に、たつた二本の小蝋燭(こらふそく)(とも)すのであるから、室内は随分薄暗い。夜気(やき)陰々として身に迫るものがある。其処(そこ)神主(かんぬし)審神者(さには)ただ二人相対(あひたい)して坐り、ヒユーと神笛(しんてき)()が闇を破るのだから、(おのづか)ら玄妙隠微(いんび)(おもむき)(みなぎ)(わた)りて、いかにも幽斎の修行らしい気分がする。
 香森(かもり)法学士は洋服であつたが、出来る丈洋袴(ずぼん)(ゆる)めて正座せしめた。ドウモ洋服姿の鎮魂は余り感心しないが、今の世では、これも()る程度まで()むを得ない。日本人は腹力(ふくりよく)と腰が据つて居るものと見え、洋服のままでも大抵正規の姿勢を取り得るが、欧米人と来ては呆れる程下拙(へた)なのが多い。下腹部がペコンと折れ込み、背が丸くなり、窮屈さうに折つた(ひざ)だけが、ヌーツと前方に突出して居る様子は、什麼(どう)しても長髄彦(ながすねひこ)末孫(ばつそん)としか思はれない。昨年中(さくねんぢう)参綾の西洋人を(つか)まへて、両三再四(こころ)みたが、(いづ)れも其麼(そんな)状態であつた。この点は先天的に備はる国民的特色で、余程根柢(こんてい)が深いやうだ。大石凝(おほいしごり)先生に言はせると、膝と胴と直角を為す跪坐(きざ)の姿勢が、天地(てんち)陰陽の真精(しんせい)を表現せる最も正しいもので、これは日本人特有の姿勢だとある。其所説の当否は()ほ攻究の余地があるにしても、(すくな)くとも世界の人類中、跪坐(きざ)を以て常態とせるものが、日本人に限るといふ事は、余程考へねばならぬと思ふ。支那人、印度人でさへ(うま)く行かない、欧洲人に至りては、椅子などを工夫してその長い(あし)を持て(あま)して居る。吾々日本人が自己の天賦の特長を無視して、何を苦しんで胡坐をかいたり、腰を掛けたりする必要があらう。ドウも日本人は、跪坐(きざ)した時に初めて心身の正調(せいてう)を維持し()るやうだ。近頃日本のハイカラ達の(あひだ)には、応接間などを洋式にするのが流行であるが、これは飛んだ心得違ひではあるまいか。椅子に腰を掛けるのは、欧米人の方が(はるか)引立(ひつた)ちて見え、初対面の刹那に於て、此方(こつち)に七分の損失がある。矢張り堂々と日本座敷に引見(いんけん)して、持つて(うま)れた下腹部と腰の強味を、十分発揮して見せるべきであらう。兎角日本人は自己の長所を没却し、対手(あひて)の長所を模倣することにのみ(つと)めるから頭が(あが)らない。取敢ず日本の在外大使館や外務省の建物などは、早く純日本式に改造し、畳の上で折衝(せつしよう)することだ。さすれば日本の外交もずツと刷新されるかも知れない……。
 イヤ香森(かもり)さんの洋服鎮魂から、ツイ筆が脱線した。困つた筆だ。大急ぎで話を続ける。香森(かもり)さんが発動状態になつたのは、坐つてから約十分の(のち)であつた。閉ぢて居た眼がいつしか(ひら)かれて、ギロギロと審神者(さには)(にら)めつける。それが明滅(めいめつ)する蝋燭の()に反射して、気味()るいこと(おびただ)しい。その(うち)組んだ両手が(おのづ)から()けて、拳固(げんこ)を握つて両膝に突き立て、双肩(そうけん)を山のやうに(そび)えさせ、唇辺(しんぺん)には一種の豪傑笑ひを(たた)へた。什麼(どう)見ても物騒千万、ただでは済みさうに見えぬので、内心(いささ)か警戒しながら、先づ其神名を質問した。
何誰(どなた)ですか、御名(おな)(うけたまは)ります』
 豪傑天狗却々(なかなか)返事をしようとせぬ。ただニヤニヤ大きく笑つて居る。折から(そと)は雷雨模様で、ピカピカゴロゴロ、刻々物凄い無言劇(むごんげき)の場面を繰り広げる。
 自分は再三再四、天狗さんに問答を(うなが)したが、什麼(どう)しても(くち)(ひら)かず、黙つて威張りかへつて居る。いかにも、審神者(さには)などは眼中に無いといふ態度だ。さりとて審神者(さには)(くつ)てかからうともせぬので、此方(こつち)から攻勢を取りて無下(むげ)に縛ることも出来ない。仕方がないから一つ、
莫迦(ばか)!』
 と呶鳴りつけて見た。すると突嗟(とつさ)に、先方(むかふ)から、
『莫迦!』
 と鸚鵡(おうむ)がへしをして来たが、依然として乱暴はせぬ。自分は如何に之を処分すべきかについて(おほい)に困つた。言葉を切るなら理屈で責めつける。乱暴を働くなら霊縛(れいばく)して懲らして呉れる。ただ黙つて威張つて居る奴は始末にいけない。このまま鎮魂を中止するのは()んでもないが、それでは(いち)野天狗に翻弄された気味があつて、腹の虫が承知せぬ。百方苦心の結果、一つ(にら)み倒して呉れようと決心した。自分は黙つて、何時(いつ)までも凝乎(じつ)と、先方(むかふ)の眼を鋭く見詰めに見詰めた。
 暗い蝋燭の光、ザアと降る大粒の雨、ゴロゴロピカピカ。そして天狗と審神者(さには)との(にら)めツ(くら)
 これが約三十分ばかりつづいたが、たうとう天狗は耐へ切れず、香森(かもり)さんの身体(からだ)を突き飛ばして置いて、ぱツと逃げ出した。初めて自分自分にかへつた香森さんは、
『イヤ飛んだ失礼をしました』
 と挨拶したが、常識では()し兼ねる今の態度について、深く深く考へ込んだ様子であつた。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→