霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(九)

インフォメーション
題名:(九) 著者:浅野和三郎
ページ:119
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142500c31
 六月九日には山本海軍大佐が参綾(さんりよう)した。
『秋山さんが是非行けといはれましたから参りました。(もつと)も、出張()きですから余り(ひま)がありません』
 この時分の秋山さんは、誰を(つか)へても(さかん)に綾部行きを(すす)めたものらしい。この秋山氏が僅々(きんきん)一箇月後には、(くち)を極めて大本攻撃をやつたと思ふと奇妙な感がする。嗚呼(ああ)(くち)(わざはひ)(かど)、大丈夫(うま)れて一代を指導するの地位に立つにあたりては、一言半句の間にも注意を払はねばならぬと思ふ。秋山さんは最初から、随分大本に対して細心の注意を払ふ事を忘れなかつたが、それでも褒めたり、(けな)したり、うツかり二言を吐くの過誤を犯した。武士道の精華を(あぢは)へる秋山さんとしては、(はなは)だ残念至極なことであつた。
 例によりて一応説明の(のち)、自分は山本大佐を金竜殿に()れて行つた。打ち見るところ背丈は低いが、いかにもづツしりと岩畳(がんでふ)な体格をして居り、言語応対ハキハキとした人物で、流石(さすが)に海軍部内の秀才と、(うた)はれるだけのことがあると思つた。
 鎮魂の席に就いたのは午後の一時前後であつた。無論一人対一人、全部の障子(しやうじ)(ふすま)を閉め切り、見物人などは一人も()れなかつた。型の如く姿勢を整へ、神笛(しんてき)数声、早くも山本さんは発動状態に移つた。が、自分は格別の事があらうとは夢にも思はず、(むし)ろゆツたりした気分で、口癖のやうになつて居る質問を発した。
何誰(どなた)ですか? 御名(おんな)を伺ひます』
 (げん)(いま)(をは)らず、天地に轟くばかりの大音声(だいおんじやう)で、
『素盞嗚尊』
 と叫んだと思ふ瞬間には、モウ山本大佐の岩畳(がんでふ)な肉団は、大砲の弾丸のやうに、自分の身体(からだ)()ツつかつて来た。
 間髪を入れざる咄嗟(とつさ)の出来事で、耳にも眼にもとまらばこそ、無論身体(からだ)をかはすどころの騒ぎでなかつた。今から当時の事を考へて見ても、大佐が什麼(どんな)(ふう)で飛びついて来たか、又自分がその(さい)何をして居たか、到底判らない。
『オヤツ!』と思つて、気がついた時は、既に山本大佐の身体(からだ)は自分の左の袖を掠めて、三尺ばかりも背後(うしろ)の方に飛んで居た。思ふに大佐の身体(からだ)は、自分の組んだ手端(てさき)四五寸の所まで迫り、其所(そこ)で急に四十五度位の角度をなして左に()れたものらしい。これなどは全然審神者(さには)に対する神の御加護で、人間の工夫や努力で(まぬが)()(のぞみ)の絶無であるのはいふまでもない。
 自分は吃驚(びつくり)しながら、大佐の方に方向を変更する(すき)もあらせず、モウ洋服姿の大佐はハツと立ち(あが)つた。そして組んだ両手を引離(ひきはな)さうと二三度試みる様子であつたが、とても離れぬと観念するや否や、組んだままの両手を真向(まつかう)振翳(ふりかざ)しながら、
『エーヤーツ!』
 猛虎の狂ふやうな勢ひで、自分の頭部を底本では「を」ではなく「の」。望んで打ち込んで来た。
『大変な事をしやがる』と自分は一旦は()(かた)ならず(おどろ)いたが、神の試錬は此処ぞと、(やうや)下腹部(したはら)にウンと力を()め、端坐の姿勢を執つたまま、凝乎(じつ)と大佐の方を(にら)みつけた。
 イヤ其時の気分! 大佐の拳固! ビユービユー風を切つて、()つは、(なぐ)るは、しかし一二寸の所(まで)迫るだけで、什麼(どう)しても自分の頭部(あたま)には(あた)らない。
()しただの一箇(ひとつ)でも()たれるなら、自分に審神者(さには)の資格がないのである。その時は(いさぎよ)く此職を返納するまで』と、自分は決心の(ほぞ)を固め、思ひ切つて両眼を閉ぢて了つた。
『エーヤーツ!』
 掛声と共に、大佐の拳固(げんこ)頭部(とうぶ)(かす)める。その度毎(たびごと)に風は当るが、しかしただの一度も拳固は当らない。
 何しろ不意に(おこ)つた大叫喚、大騒動であるので、さすが物に動せぬ部内の人々も、駆けつけて障子の(すき)から見物したが、暴れ狂ふ洋服姿の神憑者(かんがかり)と、眼を(つぶ)つたままの審神者(さには)の様子には、いささか驚き呆れた模様であつた。
 此状態は十分二十分と続いた。モーそろそろ(くたび)れて中止しさうなものだと待つて見たが、大佐の肉体は鍛へた肉体で、容易に疲労の色を見せない。又之に憑依して居るのは、腕に覚えのある天狗の(がう)の者で、これも(あく)まで負けじ(だましひ)を発揮して居る。両々(あひ)()つて容易に屈する色を見せない。
 際限がないと思つたから、たうとう自分は大神さまに祈願した。
『乱暴な天狗さんで、私だけの手には余ります。何卒(どうぞ)神界から御援助を仰ぎたう(ござ)ります』
 此祈願は(ただち)に神界の()るる所となつた。そして(ここ)に無類の活劇の幕が(ひら)かれた。
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