霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(十)

インフォメーション
題名:(十) 著者:浅野和三郎
ページ:123
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142500c32
 審神者(さには)の請求もだし(がた)しと認めらるるや、神界からは(ただち)眷族(けんぞく)の天狗さんと竜神さんとを、同時に差向(さしむ)けてくだすつた。今しも山本大佐に憑依せる豪傑天狗が、
『エーヤツ!』
掛声(かけごゑ)すさまじく、自分の頭を目掛けて拳固(げんこ)を打ち()ろさんとせる一刹那、突如として左手から突撃したのは、同じく天狗は天狗ながら、大神(おほかみ)さまの御眷族として、幽界にその名を()せつつある中峰(なかみね)天狗であつた。思ひもかけぬ助太刀に、豪傑天狗も(いささ)(おどろ)きあわてたものと見え、(たちま)ち自分を打ち棄てて(ほこ)先きを其方(そちら)に向けた。
 二打(ふたうち)三打(みうち)、打ち合ふと思ふ間もなく、右手(めて)の方からも亦も一人の天狗さんが(あらは)れて切先(きつさ)きを向けた。大抵ならば左右の大敵を見た丈けでひるむべきだが、山本大佐の守護の天狗は、余程きかぬ気の腕ききと(おぼ)しく、忽ち之とも渡り合つた。講釈師の文句ではないが、右に当り、左に転じ、四十八畳敷の金竜殿()を駆けまはりつつ、死物狂ひの奮闘をつづけた。
 ()うなると自分の方は呑気なものだ。モウ身構への必要も何もない。すつかり鎮魂の姿勢を崩して了つて、腕を(こまね)いて、(まんじ)(ともえ)と入り乱るる三天狗の闘ひを見物するばかりであつた。
 この格闘が一時間経つても終らず、二時間過ぎても引続いたのは驚嘆に余りあつた。天狗さんの勢力の持続するのはまだよいとして、天狗さんに使はれて居る山本大佐の体力の、(あく)まで消耗困憊(こんぱい)の色を見せなかつたのは、殆ど不思議なほどであつた。二時間以上に亘りて組んだ両手を間断なく振り回し、又大きな声で間断なく、
『エーヤツ!』
と呶鳴り続けた。自分は過去五年の間に、あれ位根気(こんき)よく、ねばり強く、抵抗を試みた天狗と人間とを見たことがない。たしかに一方の(ゆう)たるべき十分の素質を具備して居ると思つた。
 しかし流石(さすが)の豪傑も、最後に竜神さんが加勢を始めるに及んで、たうとう兜を脱ぎかけた。時分を見計つて竜神さんは、するすると相手の脚下(きやくか)(ねら)つたのであつた。
『ウワーツ!』
 大悲鳴を挙げて、山本大佐の岩畳(がんでう)な肉体は、三尺ばかり跳び(あが)つた。そして今迄の元気は忽ち失せて、いかにも薄気味悪さうに、ダヂダヂと後退(あとずさ)りを始めた。竜神さんは面白半分に、又もスルスル接近するので、(その)(たび)(ごと)に山本大佐の肉体は、何遍跳び(あが)つたか知れぬ。
『ヒヤーツ』
 最後には(なさけ)ない声を出すやうになつた。()うなつては最早試合どころではない。たうとう金竜殿の右手の隅の太鼓の(そば)に、ベタリとヘタ()つて、(しきり)叩頭(おじぎ)()り始めた。
 自分は十分豪傑天狗の油を(しぼ)つて置かうと決心し、坐つたままで呼びつけた。
叩頭(おじぎ)をするのは帰順の意を表するものと認める。苦しうない、元の席に就いて貰ひたい』
 山本大佐の肉体は立ちあがつた。そして瞑目した(まま)(すこ)しも方向を(あやま)たず戻つて来て、審神者(さには)()る約三尺の元の位置にビタリと坐つた。
貴下(あなた)の態度は余り感服出来ぬ』
と自分は(おもむ)ろに訓示を始めた。
不肯(ふせう)ながら、大本の審神者(さには)として、貴下(あなた)が天狗であることは最初から判つて居た。(しか)るに貴下(あなた)は勿体なくも大神のお()(かた)り、(あまつさ)へ理不尽にも腕力沙汰に及んだ。其手腕の冴えは確かに認める。封建時代ででもあらば確かに五百(こく)位の価値はあらう。(しか)(けん)一人(いちにん)の敵、神政成就、世界統一の御神業の()には合はぬ。それしきの力量を(たの)んで、大本の審神者(さには)に打つてかかるなどは余りに児戯(じぎ)に近い。貴下(あなた)の気概には感服致すが、その野武士的の自由行動は、今日(こんにち)限り()めて戴きたい、遺憾乍ら御神業の()(あひ)ませぬ。守護神としても、(また)人間としても踏ませねばならぬ事柄は、明治二十五年以来御神諭の中に、繰返し繰返し教へられて居る。即刻(うま)赤児(あかご)の精神になり、御神慮を奉戴し。此(すぐ)れたる山本氏の肉体を機関として、十分の働きを発揮して戴きたい……』
 (ほか)にもいろいろ耳に痛い文句を並べ立てたが、豪傑天狗も余程先刻(せんこく)(らい)の荒療治が身にしみたものと見え、徹頭(てつとう)徹尾(てつび)謹慎の態度を持続し、一々自分の言葉に対して点頭(うなづ)いて居た。
『御苦労でした。お引取りを願ひます』
 といふと、山本大佐は長い夢から覚めたる如く、初めてパツと眼を開いた。鎮魂を開始してからその終結まで前後約四時間ばかり、坐を立つた時は日は全く暮れて、金竜殿の(うち)は薄暗くなつて居た。
 其()晩餐()再び鎮魂したが、()りたものか、守護神はモウ発動はしなかつた。その後自分は山本大佐と、一度も面会の機会を()たぬが、あれ位にやつて置けば、あの守護神の性行上に、(たしか)に顕著な影響があつたに相違ないと確信して居る。
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