霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(十一)

インフォメーション
題名:(十一) 著者:浅野和三郎
ページ:240
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142500c64
 篠原君と(あひ)前後して、綾部に移住して来た海軍士官は、機関大尉の糸満(いとまん)君であつた。家族は妻君(さいくん)と生後()もない女の()一人(きり)であつた。
 糸満(いとまん)といふ奇妙な姓をきいただけでも、大抵想像されるであらうが、夫婦とも純粋の琉球人(りうきうじん)であつた。自分が海軍機関学校に居つた時に、生徒として入学して来た人で、()にしろ琉球人の生徒は初めてであつたから、自分()同僚(かん)の話題に(のぼ)つた。よく喫煙室などで、
『琉球人でも内地語は通ずるだらうね』
『さあ、入学試験に及第したのだから無論差支(さしつかへ)はなからう』
などと風評(うはさ)し合つたものだ。
 生徒として糸満(いとまん)君は(はなは)(おだや)かな生徒であつたことを自分は記憶する。所が、この琉球出身の生徒が、分隊長として軍艦「吾妻(あづま)」に乗組(のりく)んで居り、そして大正五年の(くれ)から大本の修行に()り、(しう)に率先して間もなく綾部に移住して来た。自分は夢に夢見る心地がしたのであつた。
 最初糸満(いとまん)君は綾部の町中(まちなか)仮寓(かぐう)して居たが、自宅(うち)のすぐ隣家(となり)が売物になつて居たのを買ひ取り、間もなく引越して来たので、並松(なみまつ)雑話の材料に入る事になつた。琉球、海軍生徒、軍艦「吾妻」、参綾(さんりよう)、並松──考へて見れば随分奇妙な系統だ。神様は何所(どこ)什麼(どう)(つな)をかけられて居るか、(ふた)()けて了ふまで、全く人間には見当が取れない。
 現役の海軍士官の事とて、糸満(いとまん)君が綾部に来て居ることは滅多にない。欧洲戦役(せんえき)中は南洋方面に出動したり、又ある時は旅順(りよじゆん)港務部(かうむぶ)に勤務したり、自分も余り詳しい事は知らずに居る。が、何処に勤務して居ても、其信念は年を()るに従つてますます固く、休暇のある限りは、地の高天原の霊気の(うち)(ひた)りに来る。従来海軍の当局は、(ほとん)ど大本の真相に触れず、(くだ)らぬ新聞雑誌の風評(ふうひやう)に左右せられて、部内の者の大本に接近することを嫌忌する傾向があつた。自分も二三当局の諭達(ゆたつ)めきたるものを見たことがあるが、其内容の貧弱にして杜撰(づさん)を極めて居るのには(ほとん)(あき)れ果てて了ひ、これが(はた)して誠心誠意、国家を(うれ)ふるものの()ることかと疑ひ(まど)はざるを得なかつた。糸満(いとまん)君が()かる不健全なる空気の(うち)にあつて、断々乎(だんだんこ)として忠実に其所信(しよしん)(むか)つて勇往(ゆうわう)邁進(まいしん)するのは、誠に見上げた態度で、不言(ふげん)(うち)に海軍部内の迷妄を掃蕩(さうたう)したことは、決して鮮少(せんせう)底本では「鮮少」ではなく、「尠少」にフリガナ「せんせう」。ではなかつたと思ふ。
 古今の歴史を(ひもと)いて見ても、ドウも平生(へいぜい)酒などを飲んで大言壮語する連中は、豈夫(まさか)の際には(かへつ)て意気地がなく、謹直(きんちよく)寡黙の()(うち)に、(かへつ)て真の勇士が居るやうだ。糸満(いとまん)君の平生を見ると、これが軍人であるかと思ふ程(おとな)しい。海軍の自称豪傑連(がうけつれん)、自称才物連(さいぶつれん)は、(かへつ)斯麼(こんな)人から指導を受けることになるかも知れぬ。(いづ)れこれから海軍の士官も下士(かし)卒も、神の予定の大々的試練に逢はされる。勝てる筈の戦争(いくさ)に勝つのなら何人(なんびと)にも出来る。日清戦争や、日露戦争はいかにも花々しいものであつたが、しかしまだ鳴物(なりもの)入りの浮調子(うはてうし)な所がないでもなかつた。日本国民に対する(しん)の試金石は今後に在る。眼を(ひら)いて世界の表面を見渡し、眼を閉ぢて国内の実状を考ふれば、海軍士官も(すこ)しは真剣な気分になつて、大本神諭の教ふる所に耳を傾けてもよかりさうなものだ。兎に角大本信者が事実の上に、日頃の修行、日頃の信念の証明をするのはこれからだ。付焼刃(つけやきば)の信仰、口頭(くちさき)(だけ)の信仰、御都合主義な信仰などは、真の試練に際会した時に何の役にも立たぬ。()しそれ無神論者、物質論者に至りては論外だ。先帝陛下が軍人に下賜された御勅諭(ごちよくゆ)とても、真信仰(しんしんかう)()つたものにして初めて其心読(しんどく)が出来、実行が出来る。事実の上に、この事が試練される時節がいよいよ接近したと思ふと、全く以て血は湧き、腕は鳴るではないか。
 ドウも十七年間海軍部内に居た所為(せゐ)か、海軍の事を書き出すと自分は毎時(いつも)釣り込まれて言葉が激しくなる。思へば大本を誤解して居るもの、現代に眼覚めぬもの、神霊の実在に盲目なもの、日本人()しなべての問題で、決して海軍軍人に限つたことではない。特に海軍々人のみを責めるのは、恐らく苛酷なことであらう。自分の理性はこの事を百も承知して居るくせに、何故(なぜ)これが()められぬのかしら……。矢張り自分の感情が自然さうさせるのであらう。
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