風に飛び散る沢山な蒲公英の種子が、池や溝や砂地に落ちて消えて行く時、うまく肥え地に散つたものだけが春が来て芽を出し花を咲かせる様に、人生の幸不幸も国家の運勢も、総て運命の神の悪戯のまゝに定められる哀れ儚いものであらうか。
或は又、それは恰度縺れた糸の様に、若し辛棒強く丹念に一つ一つを解いて行つたら、終には一本の糸に直すことが出来る様に、人生も又国家の運命も、如何に解けやらぬ難局に当面しても、信仰と至誠を以て終りまで耐え忍ぶものには、必ず光明の彼岸が約されて居るのではなからうか。
神を信ずるものはその前途常に希望に輝き、神を信ぜざる者は不安の影が絶えずその後に従ふものである。
(「神聖」昭和十年十月号)