霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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地裁公判速記録(3)

インフォメーション
題名:地裁公判速記録(3) 著者:
ページ:371 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例:長いので12ページに分割した。行頭●記号で始まる小見出しは底本にはない(うろーの狭依彦氏作成)。底本は漢字と片仮名だが、読みづらいので片仮名を平仮名に直した。 データ最終更新日: OBC :B195503c220203
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]大本教団所蔵
●思想 ミロク神政の成就

 午後二時三十分開廷
裁判長 それぢや王仁三郎、引続いて訊ねるが、腰を掛けて聴いて居つて宜しい。
 大本の所謂ミロク神政の成就と云ふことは如何なることを──言ふのですか。
答 それは、神様の教が愈々公然と天下に布教出来るやうになることをミロク神政成就と言ふたのです。
 さうして又一方には……。
問 ちよつと……神様の教が何だ。
答 神様の教が公然と許されるやうになつた暁がミロク神政が成就したことになる。
 それで私の詰り……。
問 もう少し敷衍して──ちよつとまだ解り難い。神様の教が──。
答 詰り是は神と云ふものは愛の神様です。
 ミロクと云ふことは浅野正恭なんかは、六、六、六を三つ合せてミロクと言つて居りますけれども、ミロクと云ふことは、印度ではマイトレーヤと云ひ、蒙古ではアイダリプロハラ、支那では弥勒と云ひ、詰りミロクと云ふことは愛、神は愛なり、仁愛と云ふことをミロクと訳した。
 此の神様の教が天下に拡まつて来たら、所謂日本の神様の教が拡まつて来たら、私は日本の神様の教を俟つて、総て宗教界も云々と云ふやうに言つて居りますけれども、本当は日本の総ての天津神、八百万の神様は皆愛の神様です。
 仏法で言ふと、皆総ての神様は観音様と言つて居る所もありますし、弥勒さんと言うて居る如くに、こちらではミロクの神と云ふことを一方では八百万の神を一緒にして大本皇大神と称して居る。それでそれがミロクさんです。
 ミロクさんと云ふのは愛の神さん、特定の神ぢやありませぬ。
 ミロクの世となると人も全部がミロクになると云ふのが、是が愛の世の中です。愛の教が立つて行くのがミロク神政成就で、それで是が公然と……。
問 愛の神様の教が立つて行くことを言ふのか。
答 皆がそれを信ずるやうになつて、始めてミロクの世が完成したのだ。
 世界一般の人が教を信ずるやうになつて来てミロクの世が樹立したことになるのです。
問 現界のことか、霊界のことか。
答 それは精神界のことですとも、教の方ですから──。
問 みろく神政成就と云ふことは精神界のことを言ふのですか。
答 宗教界のことを……。
問 現界のことは関係せずにか。
答 現界のことは何も関係がありませぬ。
 固より、弥勒と云ふ名がある程だから、現界の人ぢやありませぬ。
問 そこで、ちよつと矛盾を来すのだが、準備手続に於ける被告人の答へた時は、斯う云ふことになつて居つたがねー。
 「みろく神政成就と云ふのは、天界に於ては日本の神が世界を統一すること。現界に於ては日本の天皇陛下が世界を統一し給ふことを言ふのだ」と言ふて居るが……。
答 それもさうです。総てのことにミロクが掛かつて居るのだから──。
問 現界のことを言ふのか。
答 現界のことやなしに、総て精神的のことが本です。
問 さうぼかしては困る。
答 日本の天皇陛下の御稜威が各国の人に行亘り、精神的に行亘つたのがミロクの世であり、天の神様が総てを統一されたのがミロク神政成就です──斯う云ふ意味です。
問 現界のことを言ふのか、先づ第一にそれを訊ねます。
答 現界のことは言はない。
問 此の前の準備手続に言うて居るぢやないか。
答 現界で言へば、天皇陛下が統一されることであり、霊界で言へば霊界の神様が──日本の神様が統一されることである。
 それで今支那の戦争でもロシアとやりかけて居ることでも、是は皆世界統一のミロク神政成就の橋掛けなんです。初まりなんです。
 私はさう信じて居る。
問 一番……それぢや、一番初めの答は霊界のことを言うのだね。現界で言へば、日本の天皇陛下が世界を統一し給ふことを言ふのだと云ふことは、例だな。
 併し、惟ふに、中心点は仁愛の神──霊界の神の教が行はれることになるのがミロク神政成就と言ふのだな。
 是は言葉を換へて言へば、斯うなると言ふのだね。
答 日本の天皇陛下は仁愛の方です。
 総て今度の戦争も仁愛から起つて居る。
 疲れて頭がごてくしてしまつて、頭が判らなくなつちやつた。腹下りをして居るものですから、さつぱり頭がわやになつてしまうて(と水を飲む)……あのね、矢張り公認教になることもミロク神政成就なんです。
問 一つの階段だね。
答 はい、大きくあつても小さくあつても皆ミロク神政です。
 五十六億七千万年後でなければミロク様は出ないのだ。
 それを待望して居るのですから。
問 実際問題として、公認教となることも矢張りミロク神政成就……。
答 ミロクの教をするのですから、ミロクの神政をなさるのですから、国土成就と云ふやうなちよつとしたことでも成就で、大きなことでも成就。大本が公認教になるのもミロク神政成就。愛の神様の教が成就した……是は唯大本だけの成就ですけれども。
問 大本だけのミロク神政成就だね。
答 世界が成就になるのはまだまだです。
問 もつと大きな所に眼を着けて居るのだらう。
答 小さく大本だけに付て言へば……。
問 所が此の決定の──予審終結決定の趣旨に依りますと、「ミロク神政成就と云ふのは、我が日本に関する限りに於て、王仁三郎が畏多くも日本の現御皇統を廃し奉り、日本の独裁君主になると云ふことを言うて居る」やうに書いて居るね。
答 そんな畏多いことは申しませぬ。御書きになつたのです。御書きになつて判を捺させられたのです。
問 併しさう云ふ趣旨になつて居るのだがね。
答 それでも、私は申しませぬ、首が千切れても、そんなことは申しませぬ。
問 違ふのだね。
答 はい。
問 それから、さうすると……
答 誰々が斯う言うて居るから、斯うぢやろと言つて御書きになつたのですわ。
問 茲に王仁三郎全集の第一巻の三百四十九頁に「皇道維新に就て」と云ふことを書いたのがあるね。
 それから、証拠品第五百七十九号、大正六年三月発行の神霊界に「大正維新に就て」と云ふことを書いた所があるね。
 それから、証拠品の千九百七十二号に「皇道維新と経綸」と書いたものがある。
 それから、証第四千二百二十七号、瑞祥新聞の昭和八年の皇道大本の目的を説いた本がありますね。
 是は何れも、「皇道大本の内容は良いものだ」、全部大体同じやうなことが書いてある。
 何れも之を読んで見ると趣旨は変つて居らぬやうに思ふが、特に一番新しい部分には皇道大本の目的をはつきり書いて居るから、之を一遍訊いて見たい。
 皇道大本の目的は……。
答 私が書いて居りますか。
(此の時記録を示す)
問 大部書いて居るね。
 ミロク神政成就のことに付て。
答 是は此の通りに決つて居ります。
 是は、「天皇陛下が斯うなさると云ふことが皇道大本の目的である」と云ふことが書いてある。
 是は私はちよつとも悪いことぢやないと思ひます。
 後に書いてあるのは同じ内容を……。

●争点 王仁三郎は天津日嗣か

問 そこで訊くのだが、「畏くも天下統治の天職を惟神に具有し給ふ天津日嗣天皇の御稜威に依り奉るのである」と云ふことが書いてありますね。
 此の天津日嗣と云ふのは誰を指すのか。
答 現天皇陛下です。
 天照大神の御延長ですから──それを高橋はんは私のことを言ふのだらうと言つて肯かないのです。
 外でもさう言はれたが、こんな無茶なことはありまへぬ。
 それで、我が国は詰り大家族制度です。一君万民の国です。
問 此処に書いてある天津日嗣天皇と云ふ、是は誰を指すかと云ふことに付ては、大正六年の十二月、神霊界六の十二頁、それから火之巻の四百十三頁、それから天之巻の六十五頁に書いてある。
 是等のことを総括して訊ねるが、若しさう云ふことになつて居るとすれば、王仁三郎は撞の大神の霊代だと云ふことになれば、天津日嗣と云ふのは矢張り王仁三郎を指すことになりはしませぬか。
答 そんなことはありませぬ。
問 ならぬか。
答 なりませぬ。能く調べて見て下さい。
 大本のことを言うて居るのですから、国の本を言つて居るのです。
 其の中にある主・師・親と云ふことは、日本の天皇様は主であり師であり親であると云ふことは、大石凝先生の説です、天津神と云ふことは……撞と云ふことは天照大神の精霊です。天之御中主尊も天之神、又は撞の神とも略して居るのです。
問 それから皇道大本の信条の昭和八年のあれに依ると、第三条に、「我等は皇孫命天照皇大神の御神勅に拠り、豊葦原中津国に天壌無窮の宝祚を樹立し給ひ、世界統一の基礎を確立し給へることを信奉す」とあり、それから、第四条には、「我等は皇上陛下が万世一系の皇統を継承せられ惟神に主・師・親の三徳を具へて世界を知ろし召さる、至尊至貴の現人神に坐ますことを信奉す。」斯う云ふことになつて居りますね。
答 さうです。
問 さう云ふことに依ると天津日嗣と云ふことは王仁三郎を指すことにならないかね。
答 そんなことはありませぬ。頭でそんなことを考へるだけでも、口で言ふだけでも、亦思ふだけでも、畏多いぢやありませぬか。
 我々は国民の一人です。腐つても国民です。そんなことは思ひもしませぬ。之を証明するには本があります。けれども、私はさう思はれるのは悲しい。
問 別に思つて居る訳ぢやない。
答 さう云ふやうに思はれたから、腐れ事件を起されたのです。「日嗣とか云ふことは御前のことを言ふたのぢや」と、無理に判を捺させられて私は困つてしまひました。
 畏多いことを言はれたので私は……。
問 金輪王と云ふのは誰を言ふたのだ。
答 是は仏法の中の金輪王と云ふのです。
問 金輪王と云ふ俳名を使つたことはありませぬか。
答 ありませぬ、私はペンネームは沢山ありますが、金輪王なんと云ふのはありませぬ。
問 さうか。
答 さう云ふ俳名を書いたものは、私は知りまへぬが、書くのを止める訳にいかしませぬ。
問 さうすると是はどうなるのだね。
 天之巻の五頁に、宜いかい、「綾部よくなりて末で都と致すぞよ。福知山、舞鶴は外囲ひ、十里四方は宮の内。綾部は最中になりて金輪王で世を治めるぞよ」是はどう云ふ訳だ。
答 それは神都の意味であつて、あそこは都になりさうな所ではない。狭い所で竿竹が山から山に掛かるやうな所で、あそこが都になると云ふことはない。
 私が行つた時分には、教祖が書いた其の時分には家がなかつた。今は二千戸位になつた。それが神の都になつたのであると云ふことで、それで神の都になると云ふことを言つたのです。

●予言 地下の町

問 天之巻の四頁に、「東京は○○になるぞよ」、「長くは続かぬぞよ」と云ふのがあるが、是は判らぬね。
答 薄野になると云ふことは、今日の総て政治家でも言うて居ることぢやないかと思ひます。
 私は空襲なんかで、昭和五十年になつたならば、東京はすつくり薄原になつて、其の地下に町が出来る、地下にすつくりなつてしまひます。
 それは、地下に住居が出来て、飛行機が来ても判らないやうに、ちやんと国防上さうなる。段々世の中の科学が進んで来る。
問 「長くは続かぬぞよ」と云ふのは……。
答 四十年も先へ行けばさうなる、と云ふのです。
問 「長く続かぬぞよ」と云ふことは亡びるやうに思はれるが。
答 今の陸上の東京は続かないけれども、四十年も先へ行けばもう総て科学は進んで来て、海の中へ迄電信局が出来ます。海底迄──私はそれを予言して置きます。見て居りますから。
問 見た……。
答 霊界で見た。海の中迄行つたことを見たのであります。
 是は私は決して嘘ぢやないと思ひます。
 若い人があつたら、それを覚えて置いて貰ふたら判ります。

●争点 金輪王

問 金輪王と云ふことは、是は……。
答 金神が治めると云ふことです。
問 予審に書いてあることは矛盾するから訊かなければならぬ。
 弁解を訊かなければならぬことがあるから訊くが、五十三回の五問答に於て、「昭和十年の十月初め頃、瑞祥閣に於て、東尾と桜井重雄に対して、自分が金輪王となつて世界を統治する者であると云ふことを話したことがあるやうに思ひます」と云ふやうに……。
答 「言うたやろ」と仰しやるから、さう言はなければ、どう言ふたつてあかしまへぬが……。
(此の時、証拠を示す)
問 此の金輪王と云ふ額は……。
答 是は龍田と云ふ人が書いて来たのです。筆先に金輪王と云ふことが書いてあるから書いて来たのでせう。
 此の人は米一粒に百人一首の歌を書く人です。
問 もう一つだけ……沢山ありますが、天之巻の二百十三頁の「誰にも解らん大望な言ふに言はれず、説くに説かれん水火の経綸であるから」とあるが、是はどうだ。
答 「説くに説かれん」と云ふことは、言葉で書けない、意味が言はれない、意味が余り深くて人間の言葉で現す言葉がないと云ふ所が多い。それを大袈裟に書いたのです。
 火水と云ふのは、生きて居ると云ふことですから、総て世の中は火と水で出来て居ると云ふことです。
問 難しくて言はれぬと、斯う云ふのですね。
答 まあ、言うたら、坊主の頭みたいなものです。
問 それで、今、矛盾せぬかと云ふて訊ねたことも、是も違ひますと云ふ訳だな。
第十四回の一問答で本職が訊ねたやうなことを答へて居るね。
答 どう云ふことを……。
問 「日本の君主になるのが大本の目的である」と云ふことが書いてあるやうだが。
答 そんなことは申しまへぬ。勝手にそんなことばかり言はれたのです。

●争点 立替立直(1)

問 それぢや、次の問題に入ります。
 大本の所謂立替立直と云ふのはどう云ふ意味ですか。
答 大本の立替立直と云ふのは、世の中のことが革新する、改まつて行くと云ふことが立替立直。
 家の立替立直と云ふことは所帯の持直しを言ふ。
 立替立直の大きなことは世界のことであり、小さく言へば家で、日本で言へば今日直ぐにも自由経済が統制経済になつたのも、是も詰り言うたら立替立直になつたのです。
 或は国民精神総動員と云うて皆に自分の勝手にならぬやうに、自由にならぬやうになつた。
 国家の為に全体となつて、陛下の為、或は国家の為に、皆国民が一つになつて行かうと云ふ、是も立替立直なんです。
問 それは実例を挙げて答へたやうだが、纏めて言ひますと、立替立直と大本で言つて居るのは、体主霊従の現在の世の中を破壊して、霊主体従の世の中になすことを立替立直と云ふのぢやないか。
答 破壊するのぢやありませぬ。改めさせるのです。
問 破壊ぢやない……。
答 体主霊従の世の中を改めさせ良くさせて、霊主体従の世の中にすると云ふのです。一口に言へば、英国辺りの体主霊従です。
 支那へ行つても、利益の為ばかり考へてやつて居ります。我好しです。
 併し、日本はさうぢやありませぬ。日本は支那人を助けてやつて、東洋平和の為にやつてやる。霊主体従です。
問 よし、さうすると──。
答 日本のやり方は立替立直のやり方です。

●争点 霊主体従と体主霊従

問 よし、判りました。霊主体従と云ふことはどう云ふことを言ふのですか。
答 霊主体従と云ふことは、字のごとく心を主とし体を従とすると云ふことで、体を──家を立派にする、身なりを立派にすると云ふことは是は体が主になる。即ち体主霊従であります。
 詰り、さうすることは霊が──心が従になつて、体が主人になつて、しまひには悪いことをするやうになる。
 所が、霊主体従、即ち霊が主になつて居れば、ぼろぼろの着物を着て居つても、心が真直ぐであれば宜い。又、体が従になるから、体は汚い着物を着て居つても、心さへ真直ぐなれば宜い。
 霊主体従は善、体主霊従は悪を為すの本と書いてあります。霊主体従は善を為す本と書いてあります。
 本田先生の教です。今日の国民精神総動員やら何とか仰つて居るが、愈々霊主体従になつて来たのです、現代の政治が……。

●争点 立替立直(2)

問 此の立替と云ふのは破壊、立直と云ふのは建設と云ふ意味ではないか。
答 同じやうな意味です。
 余り細かい違ひはないと思ひます。言葉の語呂で強ひて言へば違ふかも知らないが、兎も角、革新と言ふても更生と言うても立替立直だと思ひます。
 人間にも、矢張り心の立替立直があります。
 人間の行ひにも……人間を建築すると云ふ言葉がよう流行つて居ります。
 是は立替立直のことを言ふのです、それが建築と云ふことは──。
問 予審の第三十九回の一問答に依りますと、「大本の所謂立替立直と云ふのは、日本の現御皇統を廃止して、王仁三郎が日本の独裁君主になつて、次いで世界の主権者となることを意味する」と云ふことになつて居るやうだが、是は……。
答 そんな馬鹿なことを思うて居りましたら、それは気違ひです。
問 是も判を捺して居るから訊くのだが--るやうだが、是は……。
答 そんな馬鹿なことを思うて居りましたら、それは気違ひです。
問 是も判を捺して居るから訊くのだが──。
答 向ふが勝手に書くのに、それを止める訳に行きまへぬ。三年も五年も掛かられてはあかしまへんから──。
問 弁解の趣旨も判りました。
 立替立直と云ふことは、統治権者は其の儘にして置くと云ふのだね。王仁三郎の言ふことは──。
答 日本は何処迄も万世一系、日本は万世一系と法律に書いてあります。
 統治権者は其の儘にして置いて、政治経済其の他の諸機構だけを変へると云ふだけです。
 段々進んで来て今日の政治になつて。
問 統治権者は万世一系で、其の儘か。
 其の他の政治機構なり、全部を立替立直をすると云ふのですか。
答 万世一系の天皇は、即ち国体でせう。国体は変らない。
 政体と云ふものは矢張り変つて来ると云ふのです。政体と国体は違ふ。
 国体は万世一系です。政体の変革の意味を言つて居るのです。
問 総て政体が変れば……。
答 ……下まで変ります。
 今、政体が変つて居る。大分に。
 併し、国体は変りまへぬ。万世一系です。大本の唱へたのもそれであります。
 「天津日嗣の高御座は天地日月と共に動き傾く事無く、生坐す親王等諸王等は朝日の豊栄登に咲栄えしめ給ひ」と、斯う云ふ毎朝祝詞を上げて居る。
 此の祝詞を見ても判ります。
問 大本の立替立直、ミロク神政成就と云ふことは、統治権者を除いては現在の制度をどう云ふ風に改めると云ふことを主張して居るのですか。
答 是は霊主体従にしたいと云ふことです。
問 具体的に申すと、例へば議会制度をどうする、司法制度はどうする。或は又、教育制度はどうするとか、貨幣問題をどうする、経済問題をどうすると云ふことの問題を訊いて居るのです。
答 それは大石凝先生の説を書いて、それに載せてありますが、それは私は古事記を言霊学で説いた此の説として述べたのでありまして、我々がそれをするのぢやありませぬよ。
 我々が出来るものぢやありませぬ。さう云ふものは皇道其のものがするのです。
問 出来る出来ないは別問題として、第二番として後から訊きませうが、兎に角立替立直、ミロク神政成就と云ふのは、統治権者は其の儘にして置いて、現在の世の中をどう云ふ風にすると云ふことを主張して居つたのですか。
答 それは、今日のやうな派手なやり方を変へて、さうして総て便宜な世の中にしたい。
 教育方針でも、今のやうな、金さへあれば大学へ行つて戻つて来て、何も役場の小使にもなれぬやうな人に金を入れぬでも、もつと良い人に金を入れてやつたが良いと云ふやうなこととか、或は、大国民教育とか、或は小国民教育とか、其の人を適材を適所に使ふ所のそつのない所の政治をやりたい。
 何でも彼でもさう云ふ意味です。
問 それは書いてありますな。
答 書いてあります。言霊学の教程に書いてあるのでございませう。
(此の時に「皇道維新と経綸」を示せり)
問 此の証拠番号千九百七十二号の「皇道維新と経綸」、之に書いてありますな。
 此の通りか、ミロク神政成就は。
答 それも参考になると云ふ意味です。参考に書いたのです。それが本当の教典ぢやない。参考書です、参考に書いたのです。
問 ミロク神政成就の意味は──。
答 さう云ふ意味やと云ふことを……。
問 ……斯う云ふものにしたいと云ふ意味だらう。
答 さうです。
問 さうすると予審で言うたことと同じぢやないか。
答 世の中は段々直つて来るのだから、それは其処に書いてある通りです。

●争点 ミロクの世の制度・統治権者

問 議会制度は予審で言うた通りか。司法制度、貨幣制度……。
答 それは本に書いてある所を其の儘言うたのです。
けれども、それは、言霊学の教典に書いてあるのを、其処に写したのだから、其処迄はまだまだ我々の力がないから……。
問 理想だな。是は予審で言うたことは、理想を持つて居つたことは持つて居たに違ひないな。
答 そこにあることを……。
問 沢山あるが略したいと思ひます。
答 はい、政体の改革やとか、何とか云ふことは、我々の言論の自由で構はしまへぬと思ひますが、悪うございますか。
 私は法律を知りまへんから。
問 是は、我々が判断しなければならぬ。
そんなことを説明する必要はないが……。
答 政体と云ふ大きな問題ぢやありませぬ、少しづつ直つて来ると云ふことです。
問 統治者は其の儘と、ちよつと訊いて置かなければならぬことになるのだが……。
答 是は古事記にあることです。
問 此処に書いてあるやうな、今、予審で言うてあるやうなことに改革せむとするには、統治権者に関連がなくして実行し得ませうか。
答 それは出来ますとも。
 それを信じて居る、天津日嗣天皇の大御稜威に依つて出来る。
 それは、私は御稜威を信じ切つて居る。私は、「御稜威に依つて御稜威紙幣を発行して何千万御出しになつても、国民がそれを喜んで通用するやうにしなくちやいかぬ」と云ふこと迄言つてる。
問 それで、ちよつと此処で齟齬するやうなことがあるのだが……。
出口 私は罪になつても宜いと思ふが、此の自分の本当の考を判事閣下に申上げて、又、此処等の人も聴いて居つてくれますから、弁護士さんなども──さうしたら自分は死んでも宜い。死を決して居る、もう六十八ですもの、六十九になるのです。七十迄生きて底です、八十迄生きても十年もあらしまへん。
裁判長 そんな悲観したことは言はぬで……。
出口 私に取つたら、本まにさうですわ。
裁判長 さう言はぬでも宜いが。
出口 百も二百も生きられへんから、構はしまへん。
裁判長 自暴自棄のことを言はずに。
出口 自暴自棄ぢやありませぬ。
 本当のことです。徹底的に……。
問 それで、立替立直に付ては、統治権者は立替立直の中に入らぬと言ふが、今迄の弁解では……。
答 それは国体を立直すのぢやありませぬ。
 之に付て申上げます。
 よその国は憲法に依つて帝王の権利を認めて居る。是は立憲君主国です。憲法に依つて元首を認めて居る点から──我が国は天照大神の御神勅に依つて天から定められた、天から立てられたから天立君主。君主が憲法を立てられたのだから、日本の国は立憲天立君主国、即ち、立憲政体です。
 それでなければいかぬと云ふことを言つて居るのです。
問 立直と云ふのはどう云ふことだ。
答 今の人はそれを知らない。
 立憲君主やと思うて居ります。
問 天立君主──立憲政治の国体に立直すと云ふことは……。
答 心を立直す。悟らしめると云ふことです。さう云ふやうに思はなくちやならぬと云ふことです。
問 心を立替すのですか。
答 私は、それで、日本は天立立憲君主……立憲君主が立てられた欽定憲法、よその国は憲法に依つて君主を認められたから立憲君主です。
 そんな立憲君主は我が国のやうな訳には行かない。日本は天立君主立憲です。

●争点 天子について

問 思つて居る人も思はぬ人もあるから、思はぬ人はさう云ふやうに思はせなければならぬぞと云ふ意味だな。判りました。
 天之巻の三頁に○を三つ書いて、「綾部に仕組がしてあるぞよ」としてあるが、是はどう云ふ意味か。
答 それは、私は聴きましたが、天子と言ひましたが、教祖に聴きましたら、「天子とは日天子、月天子と言うて月の神には月天子坤の金神、それから日天使艮の金神、是は艮の金神が日の神である」と云ふことでありまして、それで仏法では信者と云ふことが天使と言ひます。何々菩薩は二万の天子と共に、何々菩薩は一万の天使と共に……。
問 それで丸の所へ、伏字はなんと云ふ字を書くのですか。
答 使と云ふ字です。
問 天使と書くのですな、「天使は綾部に仕組がしてあるぞよ。」
答 それは日天子、月天子のことやと私は承つて居ります。
問 それなら「天使」なんと伏字せぬでも宜いぢやらう。
答 私がやつたものぢやありませぬ、私の居らぬ時に……。
問 まあ沢山あるがね。
 それからね、火の巻の四百九十二頁が、「地は出口の霊統で……。」
答 天は天皇陛下が御治めになる。それから、地は民と云ふ意味です。人民と云ふ意味です。教と云ふ意味です。
 人民を教へるのは、出口の血筋には教祖になつて世界を治めるとほらを吹いた所です。
 まださう云ふことにはいかぬけれども、先になれば地上の天使になると云ふことです。
 それは二十五年頃に書いたので、是は……。

●思想 大本の主宰神

問 それぢや、徹頭徹尾疑はれる点もあるけれども、今言つた通り間違つて居らぬと云ふ答弁になる訳ですね。
 それから、立替立直と云ふことは……それからミロク神政と云ふことに付てはそれだけにして置きませう。
 次は大本に於ては、如何なる神様を主祭神となし居りますか。
答 全部の神様ですが、天照皇大神──天照皇大神、それから伊邪那岐、伊邪那美、之を造化三神、御三体の神様として、一番上の神様として居る。
問 まあ一つくごちやごちや言はぬで……それで御祀りして居るのはどの神だ。
答 天照皇大神。
問 天照皇大神を言ふのですか。
答 さうです、それに御仕へして居る神として、国常立尊と斯うなつて居るのです。それが艮の金神と斯うなつて居るのです。
問 天照皇大御神と申すのは大本皇大神と同一神ですか。
答 同一神ではありませぬ。
 天照皇大御神と言へば御一体です。
 大本皇大神と言へば、天照大御神、其の外世界の地の神、天の神、皆合体したのを、大本皇大神と斯う称すと書いて居ります。
問 書いて居るね。
答 それで御一体で拝む時には、天照皇大神、それで世界の総ての神を御一緒に拝む時には大本皇大神。
 其の大本皇大神には、一番大将として天照皇大神がおはすことになります。
問 同じことになる訳だな。
答 同じことになりますけれども、数が多いと云ふことだけです。
問 「守り給へ」と書いてあるね。
答 それは天神地祇、八百万の神の総司令、それを大本皇大神と言うたら高橋さんは怒つたが、天照皇大御神は、肝腎の御伊勢様の祭神です。
 天照皇大神──。
問 此の大本皇大神と云ふのは大本に於てのみ教へて居るのですか。
答 さうです、天理教では十柱の神を天理王命と天理教だけで言つて居る。それと同じやうに、大本だけです。
 此の大本皇大神とは、大本の信徒だけが言つて居るのです。
 それを、八百万神を朝夕言つとつたら飯を食ふ暇もない位だから纏めて大本皇大神と言ふのです。
 もう今日は休ませて貰へまへぬか。
問 ちよつと五分間ばかり休憩しませう。
答 どうも済みまへぬ。
午後三時三十分休憩
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