霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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随筆『神霊界』大正9年2月11日号掲載

インフォメーション
題名:随筆『神霊界』大正9年2月11日号掲載 著者:
ページ:93 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-31 17:46:46 OBC :B195502c110713
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]神霊界 > 大正9年2月11日号(第105号) > 随筆
 大本時報八二号に一寸紹介されました、大和国吉野郡竜門寺の住職、丸山貫長氏が、東京の山口氏に宛てた手紙が、今回手に入りましたから、参考のために載せることに致しました。
 来る大正辛酉年は、六十一年目に回り来る、金門鳥敏と唱へ、大災厄の年なり。其前年の庚申年も亦厄介なり。必大水火風、或は飢饅、疾疫、戦争等の災ひ起り、上下困難し、国家大に衰損するの運命に向居候。仍て本年より用心して、災難消除の秘法修行仕度、夫れ災難は天より降すに非ず、之を作す事は、元と人に由る世間已に病起る時は、之を治するの医術あり。出世間一切智慧者として、何ぞ之を消除するの妙法なからむや。其法は則五大虚空蔵秘法也。此真言一千万遍を誦すれば、法定て成就す。其利益は福輪王の如く七宝具足し寿命長久にして千万倶ていを延べ、大神通を得、大富貴を成就し、一切の方処に往くに、無障無碍にして、百千種の事、意に任て成就を得と、仍て国界を鎮擁し、皇帝を護持し、万民を利安する為に、本年中に於て修法の準備をなし、謂く壇を築き、曼奈羅を画き、仏器を作り、修法の処を定め、修行者を撰集する等也。
(大法修行の形式略す。)
(中略)
 大災難来て、国家に大損害あるに比すれば、誠に以、修行の供料は一塵の如し。是の如き小功大利の事業は、大智者の行する所なり。三ケ年に一千万遍を唱ふ。次に世界無比の本尊如意宝珠を安置するの勝地は、此迄方々処々尋探するに、大和国竜門の嶽こそ、相応の勝地なり。水清く石堅く、樹木茂く、上下に飛泉あり。南に方て金峰山に対す。寒暖所を得て、清浄の霊地なり。昔役行者、久米仙人、各得道得通の旧地なれども、今は空々として一物なし。地を明て如意宝珠の光臨を待ち居る姿也。今より行者悉地成就の修練にも、此地尤も相応せり。願くば為国一度御来遊ありて、実況御覧に相成候はば感徹可仕候。云々
 大本では、彗星の出現に就ては、天下万民の最も警戒すべき神示たる事を、常に唱へて居るのである。然るに物質的文明とかに心酔して、外尊内卑の習慣を有する我国民は、毎時も之を一笑に附し、大本の所説は虚言だ、妖言だ、邪教だと云つて、省み無かつたのみならず、天下の耳目とも称する新聞紙なども、大本の説を罵倒し、盛に攻撃を加えて来たものである。然るに時節と曰ふものは不思議なものである。昨年の今頃には、世界改造の宣言を、二十余年来為し来つた大本を目して、邪教妖教呼ばはりをした全国の新聞雑誌が、昨秋の初め頃から、改造々々、改造で無ければ夜が明けぬと曰ふ調子に騒ぎ出して来たとは、実に有為転変の世の中とは云ひ乍ら、僅々一年後の今日に至つては、隔世の感無くんばあらずである。扨て、今回米国のバールロと曰ふ医学博士が、神秘的な一説を唱へ出したと曰ふて、猫も杓子も、一も二も無く信用して居るのを見ると、日本人は外国人の説は、神の福音の如うに歓ぶと云ふ事が判る。全世界に亘り、幾十百万の貴い生霊を亡ぼしつつある悪性感冒の原因は、彗星が地球に撒き散した毒物で、彗星の尾に微生物が寄生して、夫れが毒菌に変化し、盛に人類に禍ひすると唱へられて居るのであるが、大本の所説から見ると、符節を合する如くである。
 博士曰く、古くは支那の歴史を始め、東西の沿革史に拠ると、彗星の出現した後には、其十中の八九まで疫病が流行して居ることが証明される。十五世紀の頃、欧亜の大陸には、大彗星の出現と同時に、黒死病と云ふ得体の知れぬ悪疫が、猛威を逞ふして、各地に流行し、数百万の人が之に罹つて斃れた。近頃世界に流行して居る流行性感冒は、今を去ること十一年前、即ち一九一○年の秋に出現し、天の一方に永く尾を曳いて、約一箇月間雄姿を現はした、ハレー彗星の出現後、数箇月にして、満洲から欧洲の東に至る、亜細亜大陸の各地に流行したのが、地球上の全人類に不幸を及ぼす、此悪疫の蔓延した抑もの始めであつた。其当時天文学者の調定に拠るとハレーの尾が地球を掠めて通つた部分は、丁度満洲から亜細亜の大陸一帯であつたと云ふことである。ケルビン卿は、現在我々の住む、地球上に存在する一切の生物は、其初め地球以外の、継の天地に棲息した微生物が、宿主たる、その天体の分裂潰散して出来た、彗星の尾や核を形成して居る、塵埃状の物質、又は流星となつて宇宙を運行する天体の中に、胞芽胎の微生物となつて含まれ、地球の側に接近した際、引力の為めに誘導されて地球の表面に落ち、其処に胞芽して生息し、次第に進化発達して、今日の如き高等な動植物となつたのであると主張した。此説は甚だ荒唐無稽のやうで、実は真理に近いものとされて居る。彗星及び流星が、茫漠たる宇宙を遊行する際には、非常な冷気にさらされて居るだろうが、現に地球の北極にある年中氷結した地中にも、生息して居る生物もあり、太陽又は地球の側へ接近した彗星や流星が、急速度を以て夫等に接近する際、摩擦から生ずる熱度にも克く堪へて、生命を永く持続し得ることは、微少な生物の天然に授かつて居る特性である。之は生物学者が実見室で常に観察して居る事実だ。殊に彗星の尾を形成して居る塵埃様の物質が、含水炭素を含んで居ると云ふ、含水炭素なるものは、生物以外には発見出来ない、化合物であることより、推しても彗星の尾に微生物が寄生して居る事を証明する、一つの有力な材料に成りはすまいか。若し夫等の微生物が、有毒な細菌に変化し得るものであつて、地球が一年、五年、廿年、又は五十年と、周期を有して、度々見舞を受ける彗星や流星群に接近する毎に、今度の流行性感冒同様の悪疫の原因をなす毒物を、盛んに撒布されるのである云々」
 今回の流感に就ては、随分都鄙到る処に滑稽を演じて居る。中にも島根県中海の大根嶋の如きは、最も甚だしいものである。同地は土地が海抜二尺と云う極端に低いのと、人参をはじめ種々の農産物の豊富なのとで有名な孤島であるが、先般来流感に襲はれて、八九名の患者と、数人の死亡者を出したので、島民は非常に恐怖し、小学校の休校は固より誰一人として実業に従事するもの無く、皆我家に蟄居して一切外出しない。郵便局では事務員や配達夫が出勤しない為に、郵便物は停滞する一方。又役場では村会を開かうとして、何度召集しても議員が一人も出席しない。偶々或る日の召集に応じて出席した一人の議員は、共の沿道に流感患者が多いと聞いて縮みあがり、俺は家に帰らぬと云つてその侭役場の食客となり、今に逗留して居ると云ふ滑稽もあり、又家族の一人が隣村の親類へ行つて感冒に罹つて居つても、実家の家族は伝染を恐れて見舞にも行かず、手紙で様子を聞かうとすれば、郵便局は怠業して居るので、どうする事も成らず、閉口して居るのもある。又死者があつて葬式する場合には、親族総代が唯の一人の立会するだけで、其他は一人の会葬者も無いと云ったやうな風に、島は他に類の無い大怠業をやつて居ると、松江からの通信があつた。何れも皆日本の神国たる所以を忘れて、体主霊従主義に心酔して了つて居るから、彗星を恐れたり、流感ぐらゐに閉口垂れて了ふのである。そんな意思の弱い事で、日本神国の神民と云われよう乎。天地経綸の司宰者と呼ぶ事が出来よう乎。恒に敬神の念慮無きものは、斯んな時に第一番に腰を抜かして慄ひ上るものである。
 大根嶋の住民のみならず、今度の流感に就て全国の人民の狼狽さ加減と云ふものは、実に愛想が尽きる位なもので、マスクとか、魔好くとかを当てて居れば伝染せぬと、誰か一人が云ひ出すと、一犬虚に吠えて万犬実を唱ふと云ふ塩梅に、誰も彼もマスクを使用する有様である。マスクの効能の有無は保障するの限りでは無いが、マスク商人だけは確かに効能があつたであらうと思ふ。鵜飼礼堂氏はマスクに就て元弘時代には、鎌倉の北条の舘だけであつたが、大正時代には到る所に烏天狗の多いのを見て、冥土にある高時は、失政者は俺ばかりでは無いと、やや落ち着いた気味で微笑して居るかも知れぬ。極端に云へば、全身体の皮膚呼吸に対しても、ペストの予防衣のやうなゴム製の服で、頭からスツポリ被つたら、一層安全かも知れぬなど云ふ人もある云々。序に、飯食ひ茶碗もゴム製の布で包んで了うたら、何程米価が騰貴しても、生活難の声は起らず、失政どころで無く、天下泰平、万民鼓腹と云ふ事になるかも知れぬ。
 併し過ぎたるは猶及ばざるが如しで宇宙から見たら細菌よりも幾百万倍妖微な人間が考へた事を軽々しく大真理呼はりして居ると、角を矯めて牛を殺すやうな事に成らうも知れぬのである。明治の初年頃に虎列刺が流行した時にも、石炭酸を混じた粉末を袂に入れて居らぬと、其筋の人から小云を喰つた事があつたが,之が其時代の代表であつたのである。今日から見ると一つの笑話のやうであるが、歴史は繰返すと云ふ事がある。如何に烏天狗が殖えた現代とは云ひながらも、此の微細な人間と云ふ生物が、大自然の活動に徹底したやうに、之が大真理であるとして、軽はづみに実行するのは余程考慮を要する事だと、常にヒヤヒヤして、此の変挺な社会の状態を観て、今日の流感の夫れよりも尚一層慨嘆せざるを得ないのである、斯かる変転極まり無き社会人心であるから、万々一何処かの博士とか云ふ片輪者が現はれて、地上二尺以上の空気は全部感冒の黴菌を含有して居るから、外出する時は、頭部を二尺以下にして歩行するが安全だと唱え出さうものなら、一も二も無く、博士の説を神示以上に迷信する日本人は、外出の時に左右の手に下駄や沓を着けて四ツ這ひに成るかも知れぬ。それこそ神諭の四ツ足の歩行く畜生道の実現であらう。呵々。
(「神霊界」大正九年二月十一日号)
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