二十八歳の春
神の翼に抱かれながら 魂は駿河の富士詣で
富士の高嶺にわが魂たちて 秋津島根をみはるかす
神の使は皆神山に われを松代つれてゆく
山脈十字の信濃の国は 永遠の礎神守る
富士の高嶺や皆神山を あとにわが魂帰り来る
眼覚ませば小夜更け渡り 峰の松風身にしみる
此処は何処よとよくよく見れば 稜威高熊巌の洞
高熊御山の四十八宝座 雪の降る夜を静座する
夜は淋しい松吹く風の 音も聞えず霜が降る
寒さひだるさこらへて一人 更くる霜夜に道辿る
天津御国も根底の国も 悟りそめたる洞の中
夜風身にしむ淋しさ襲ふ 餓ゑと渇きが身に迫る
土と火水の御恩を悟り 神に感謝の涙する
猛獣毒蛇も生あるものは 淋しさたすくる守り神
人の社会のかたじけなさを 悟る天下に敵はない
敵や味方とけじめをたてる 人の心の浅間しさ
人は更なり山川草木 どれもわが身のたすけ神
月の御国や日の神国に 魂はかけりて道を知る
神のよさしの神業終へて 一人帰りし宮垣内
鉦や太鼓でわがゆく先を 返せ戻せと山さがす
呼べど叫べど影さへ見えぬ 母の心のいたましさ
妙霊教会五軒町の稲荷 易者に問へどもあたらない
近所株内頭を集め 吐息つく朝われ帰る
父の奥都城産土の宮に 詣で帰りしこの朝
何処に如何してお前はゐたか わけをきかせと皆が言ふ
わしは神様秘密の御用 時が来るまであかせない
すいたお腹へ麦飯くへば 猫にあらねど喉がなる
七日七夜の疲れの為に 何も白河夜船こぐ