二十八歳の春
牧場は如何してくれると組合の人より吾に抗議もちこむ
神様に身を任したる吾なれば牧場なんかは知らぬと自暴言ふ
村上氏舌打ちしながら餓鬼やなあ餓鬼やなあとぼやいて帰る
折角にここまで出来た牧場を捨ててはならぬと治郎松が言ふ
牧場がいやさに楽して食はんため山子をすると睨めつける治郎松
治郎松の言葉の尾につき弟の由松までが山子よばはり
治郎松と弟お政婆さんまで神やめさそうと妨げのみする
遠近の村村までも治郎松は迷うな山子とふれまはりゆく
如何しても牧畜業をやらぬならお前の家はかまはぬと言ふ
三百の僅かな借金恩にきせ返せかへせと迫る治郎松
三百の金が返せぬやうならばやくざ神よとまたもののしる
百姓や牧畜業がえらいので山子してると友までが言ふ