二十八歳の春
井戸端に荒菰敷きて水かぶり人にかまはず朝夕修行す
水かぶるあとより治郎松ぱらぱらと裸の吾に砂利投げつける
治郎松にならひて弟由松もバラスつかんで投げつけにけり
痛ければ修行をやめて百姓せい牧畜せいとせまる由松
石つぶてに身を破られてどこまでも無抵抗主義を吾はとり居し
石投げてやりても知らぬ顔してるこいつは不死身と又石投げる
われもまた一心不乱石ぐらゐ何恐ろしと胴すえて居り
朝夕に人垣つくり村びとは山子野郎とののしり合へる
たとへ身は殺さるるとも神の道やめぬといつて水を浴びたり
打たれてもこれが修行とよろこびて感謝の念はいよいよつのる
村肝の心あかるしさまざまのさまたげあるも道の為めゆゑ
人生の本義をさとりしうれしさに人のそしりを露とも思はず
天国をさとりし吾はさまざまの悩みおそれず心あかるし
不老不死の吾が本体をさとりてゆ感謝の念は雲とわきたつ
○
吾れ神に救はれ神国をさとりけりこの喜びを人にわかたん
天津国の無限の幸を世の人につたへんとして神を斎ける
いつきたる神の祭壇幾度かこはたれたれど吾はひるまず
○
主一無適神に捧ぐる吾がまことに感じて彼女も道に入りけり
彼のをんな朝夕小川に身を清め七日目の夕べ神憑となる
彼の女予言をなせば村人はめづらしがりて来りざはめく