二十八歳の春
天地の誠の道はけがれたる金は絶対不用と憑霊いましむ
天地の神のまことの大道は人のまことにひらくべきもの
埋れたる金掘り出して宣伝に用ひむとせしわれのおろかさ
憑霊にあざむかれしにあらずして神の恵みの試しなりけり
疲れたる身を芝の生に横たへて愚ごころを悔いて涙す
大空を包みし雲は何時か晴れて朧夜の月澄みわたりけり
すみわたる月の鏡にてらされて面はづかしきわが心かな
山に来て無手で帰るも馬鹿らしとつつじの枝を畚にみたし帰る
帰るさのその阿呆らしさ梢吹く風もわが愚を笑ふがに思ふ
結構なおかげを貰うた感謝せよと憑霊の奴そろそろ囁く
馬鹿らしい感謝どころか真夜中にこの奥山にだまされて来て
曇りたる心の鏡みがかむと金にことよせためしたと言ふ憑霊
奥山へひつぱり出してだますよな憑霊肉体されと吾いふ
まだ去らぬそなたの心なほるまで立派な神の柱となるまで
曇らうが立派になろが俺のことかまうてくれなと駄駄こねてみる
憑霊は大口あけて高笑ひアハヽヽ阿呆奴とまたもののしる
むかつきてたまらざれども体内にゐる憑霊にせんすべもなし