二十八歳の春
幽斎の修行をすれば物見だかき村人門につどひざはめく
彼のをんな第一番に口をきり白滝大明神と宣りたり
口きれしその喜びに勇みたち十人揃うて修行をはじむる
つぎつぎに口きれ出して三週間の一期修行も全くすぎたり
彼のをんな修行者一同引き連れて家来続けといひつつ歩く
人の家の秘めごとなどを忌憚なく公表しつつあるく神憑
あんな事わかるはずなし喜楽奴が教へて云はすと村人非難す
彼のをんな白眼に巴の赤き紋あらはれ巴御前といきまく
掌に天地日月神の文字ありあり赤文字あらはるる神がかり
村人の如何にそしるもたゆみなく一心不乱に修行を励む
若者は石を投げまた戸をたたき口笛吹きて門にざはめく
山子すな相場に勝てると思てるか狸野郎と呶鳴るわかもの