二十八歳の春
一筋に神の道ゆく吾が身にはエロを捨つべき時とはなりぬ
打ちつけに断る術なきくるしさに筆をはしらす春の玉章
玉章のかへしを見れば神様に仕ふる君をあきらめしとあり
あつさりと諦めの文よこせしはまだ交りの浅き女なりけり
なかなかに思ひ切られずどこまでも従ひますと猛烈な文
あきらめのつかぬと書きし返し文をつくづく眺めて吐息つく宵
いたづらの古疵つぎつぎものいひて歩みがてなる神の大道
神様に額くやうな弱い男の子これ限りですよととどめの玉章
淡泊なをんなの恋はよけれどもしつこき恋は道の邪魔なる
神の道踏みし身は今更にかへり見るべき勇気を持たず
祓ひたまへきよめたまへと里川に禊する宵をんなの泣く声
神の邪魔しては済まぬと思へども私しや諦められられられぬ
二世までと契し二人の恋奪ふ神うらめしと泣きくづる女
人恋ふるこころの色は褪せざれどひとしほ恋しき天地の神
いくたびも恨みの言葉繰返しくりかへし行く女いぢらし
融通の利かぬ神よとうらみつつかへる女の後姿さびし
木石にあらぬ吾が身は恋に泣く女ごころに胸くだきけり
恨みつつ家路に帰るくわし女のあと見送りて掌を合しける
今までの縁とあきらめ許せよと宣る言の葉も泪に涸るる
男の子吾れ物のあはれは悟れども神にある身の詮術もなき
われとても心は同じ若き身のただいたづらに恋を捨つべき
一筋に神の大道を進む身はしばし女に遠ざかり度き