霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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丑刻

インフォメーション
題名:丑刻 著者:出口王仁三郎
ページ:474
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-10-30 20:57:00 OBC :B119300c107
二十八歳の春
大空(おほぞら)の雲晴れゆきてかうかうと月光(いけ)(おも)をてらしぬ
月光を幸ひ彼女の(あと)を追ひ稲荷の社ある算木山(さうきやま)にのぼる「算木山」は磐榮稲荷宮が鎮座する西山の別名。
算木山(さうきやま)の松の木蔭(こかげ)に身をひそめ彼女の様子うかがひ()たりき
()のをんな稲荷の(やしろ)の前にたち(しはが)れごゑにて心経(しんきやう)を読む
頭髪を振りみだしつつ三本の蝋燭(らふそく)頭に照らすすごさよ
頭には蝋燭(らふそく)胸に鏡かけ(はさみ)をもつてかがみ打ちならす
打ち鳴らす鏡の音のものすごさ身の毛もよだつばかりなりけり
()のをんな汗だくだくに絞りつつ半時(はんどき)ばかり心経(しんきやう)を読む
心経(しんきやう)(をは)ればかたへの笠松(かさまつ)(みき)にむかつて(くぎ)を打ちこむ
わが(をとこ)うばひし(ひつじ)(とし)(やつ)悩めたまへといのりつ(くぎ)打つ
未年(ひつじどし)と聞いて()が胸とどろきぬ()れも(ひつじ)の年なればなり
(みぎ)の手に金槌(かなづち)をもち左手(ゆんで)には五寸釘もちほほゑむ凄さよ
青白き女の(おも)のいやらしさこの世のものとは思へざりけり
これこそはまさしく(うし)(こく)(まゐ)りと思へば(はだ)(あは)(しやう)ずる
形相のそのすさまじさ見るに()へず()が髪の毛は逆立ちにけり
この女(あたり)きよろきよろ見回して(ひと)(くさ)きかなと口走(くちばし)りけり
水さへも眠れる(うし)(とき)(まゐ)り見つけたるもの無きかと狂ふ
残念やああ口惜(くちを)しや百日の修行も水の(あわ)といひて狂ふ
ちくちくと()がかたはらに迫り()る女の姿たまらず逃げ出す
逃げてゆく()後姿(うしろで)を追ひきたる女の足は(はや)かりにけり
追つつきてかぶりつかんとする刹那(せつな)身を(をど)らして池に飛び込む
さすがにも女なりけり青青(あをあを)と水(たた)へたる池には追はず
(はん)の木の根株(ねかぶ)に片手をかけながら首だけ出してふるひ()たりき
キヤーキヤーキヤーコンコンクワイクワイいやらしき声をしぼりて怪女(くわいぢよ)かけゆく
修行する身ながら夜半(よは)に独り見る怪女(くわいぢよ)の姿は恐ろしかりける
大池(おほいけ)の水は(なみ)立ち()えびえとわれに迫りて物凄(ものす)ごき()なり
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