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キリスト者の転向

インフォメーション
題名：キリスト者の転向 著者：出口王仁三郎
ページ：198
概要： 備考： タグ： データ凡例： データ最終更新日：2024-10-31 18:51:00 OBC ：B129900c38
上本町(うへほんまち)三丁目なる溝口(みぞぐち)氏の官舎にまねかれ神の道説(と)く
皇道に熱心強(つよ)き溝口(みぞぐち)氏は砲兵工廠(こうしやう)に勤務してをり
溝口(みぞぐち)氏の真向(まむか)ひにキリスト教会場(ぢやう)ありて朝夕(あさゆふ)讃美歌聞(きこ)ゆ
力(ちから)なき讃美歌の調(しらべ)聞くにたへずと溝口(みぞぐち)中佐は顔をしかめる
キリストも研究すべき価値ありと中佐を伴ひ教会にゆく
メソヂスト教会
メソヂスト教会牧師は演壇に立ちて十字架説(と)く声かなし
あはれなる涙まじりの声しぼり十字架説(と)きつ吐息(といき)をもらせり
水(みづ)打ちしごとく場内(ぢやうない)静まりて鼻すする音(おと)泣きじやくる声
十字架にかかりしキリストの話(はなし)聞き吾(われ)もおもはず涙しぼれり
世の中に道説(と)く者はかくのごと悩みあるかと吾(われ)をみむきぬ
勇敢なる溝口(みぞぐち)中佐も十字架の話に眉(まゆ)をしぼめ居たりき
悲しき教
アーメンと牧師の祈る涙声(なみだごゑ)聞きつつさびし夕(ゆふ)べの教会
力(ちから)なきオルガン響き信徒(まめひと)は羊のごとくぐにやぐにやしてをり
勇敢なる大和(やまと)みたまを弱らすはキリスト教の説明なりけり
博愛の真理は聞けど男(を)の子(こ)われ日本(やまと)みたまをおもひていなみぬ
溝口(みぞぐち)氏はつと立ちあがり演壇に黙礼しつつ出(い)で行きにけり
基教徒の当惑
教会の牧師が降壇せしあとにのぼりし信徒(しんと)は黒葛原(つづらはら)兼豪(けんがう)氏
黒葛原(つづらはら)は弁舌滔滔(たうたう)十字架の救ひを説きてうまざりにけり
黙然(もくねん)と吾(われ)聞きをれば黒葛原(つづらはら)氏吾(われ)に視線を向けてはなたず
教会の演説をはれば信者たち讃美歌となへて帰り途(ぢ)につく
吾(われ)もまた教会出(い)でむとおもふをり黒葛原(つづらはら)氏は呼びとめにけり
いづこよりおこしおりしと尋ねられ溝口(みぞぐち)邸(てい)に居(ゐ)ると答(こた)へぬ
何宗の方(かた)と問はれて吾(われ)すぐに大本教と名のりたりけり
溝口(みぞぐち)氏が大本教に入(い)りしかと黒葛原(つづらはら)氏はおどろきてをり
溝口(みぞぐち)氏の子息はキリスト教会の中にも厚き信者(しんじや)なりけり
黒葛原(つづらはら)氏ともかくお伴なさむとて溝口(みぞぐち)邸にしたがひ来(きた)れり
黒『溝口(みぞぐち)さん大本教へ転向か神慮(しんりよ)にもとらぬやうにしなさい
　お子達は基教(きけう)の洗礼受けゐるにあなたが他教に入(い)るとはわからぬ』
溝『信教は国民の自由親(おや)は親息子(むすこ)は息子おかまひなりさるな』
溝口(みぞぐち)はすげなくはねて奥に入り黒葛原(つづらはら)一人呆然(ばうぜん)と坐(ざ)せり
黒葛原入門
大本の教理聞(き)かむと黒葛原(つづらはら)氏吾(われ)に向(むか)つて詰問(きつもん)をなす
国体(こくたい)の本義を説けば黒葛原(つづらはら)首(くび)かたむけて謹聴してをいり
一句一句吾(わ)が言の葉にうなづきてげにもつともと入門を請ひけり
黒葛原(つづらはら)氏入門したりと間くよりも溝口(みぞぐち)氏この場ににこにこ入(い)り来(く)る
溝口(みぞぐち)と黒葛原(つづらはら)との応答は約二時間にわたりて止(や)まず
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