霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(十)

インフォメーション
題名:(十) 著者:浅野和三郎
ページ:89
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142400c27
 鎮魂は五分、十分とつづいた。困つたことには時間が経つにつれて、足が痺れ出して来た。洋服で椅子に腰掛ける癖がついて居るものには()うしてもこれが(まぬが)れ難い。従つて折角まとまりかけた精神が足の方に散つて了ひ、『早く()めてくれればよいが』など、考へ出すやうな始末、さつぱり自分は駄目だつた。のみならず、自分の(わき)の方で、誰れやらの荒らい鼻息がいやに耳につく。其鼻息は段々荒らく、段々(はや)く、(うつばり)(ちり)をも吹き飛ばさんばかりの(いきほひ)なので、それが又気にかかつてならない。
 (やうや)くポンポンと柏手(かしはで)が二ツ(きこ)えて、『ハイ(よろ)しい』といふ掛声がかかつたので、ヤレヤレと思うて眼を明けて見ると、他の人も自分と同様眼を明けて鎮魂の姿勢を崩す所であつた。
『今大変荒い息づかひが聞えたが、一体あれは誰だつたかしら』
『僕だつた』
と答へたのは理学士の宮沢君であつた。成程見れば、頭の色が赤くのぼせて居る。
()うしたのだ。身体の具合でも悪かつたのかネ』
『イヤ()ツとも……。ただ妙に途中から、身体(からだ)が突ツ張つて来て、気息(いき)(はづ)んで苦しかつた』
 出口先生は笑ひ出した。
『霊が発動したのです。モウ一二遍()ると言語(くち)が切れませう』
 宮沢君の(ほか)には、所謂(いはゆる)発動状態に成つたものは一人も居なかつたが、ただ妻と()の一人とは、閉ぢたる眼瞼(まぶた)が妙にシパシパして、眼の中に鮮かな赤だの紫だのが見えたといふのであつた。
『そりア通例天眼通(てんがんつう)(ひら)ける兆候です』との先生の言葉に、自分をはじめ、何等の感応の無かつた連中は、少々人後(じんご)に落ちたやうな、残念な気分がした。
 ひとしきり座談の後で、再び鎮魂をやつたが、宮沢氏の鼻息が一層荒くなつた(ほか)に、外的にはこれぞと目立つた()現象は一つも起らなかつた。ただ内的にはいささか妙だなと思ふことがないではなかつた。それは鎮魂中に、自分の組んで居る手の指端(ゆびさき)が、電気に感じた場合の如く、少しくピリピリするのと、それから垂直に構へた二本の食指(しよくし)の尖頭が、()ういふ訳か段々下方に()がつて来ることであつた。これではならぬと自分は満身の力を籠めて指端(ゆびさき)を元の位置に戻さうと努めるが、何処から()うやつて来る圧力かは知らぬが、いかにも底に動かし難く、抵抗し難き強みが籠つて居て、ヂリヂリと自分の食指を下方に()げて行く。たうとう何時の間にやら九十度以上も押し下げられて了つた。
『変だナ。これは! ドウも(かな)はない』自分の精神は全然覚醒状態にあるので、眼こそ閉ぢては居るが、頭の方では(しきり)に考へて居る。自分は今全力を挙げて二本の指を上げようとして居る。それにも拘らず反対に低下するのは、什麼(どう)しても自分の精神以外に、或る他の、より優勢なる力が加はつて居るに相違ない。して見れば、此優勢なる力の所有者(もちぬし)こそ守護神といふものであるまいか』
 幾分手がかりに近いものが、兎も角も此()と晩の鎮魂の実験で捉へられたやうに何人(なんびと)も感じた。
『何うも、妙なものですナ』
『不思議なものですね。この分で行くと案外早く大本の守護神説が(たしか)められるかも知れない』
『引続いて明晩もやつて貰ふことにしませう』
 こんな事を言ひ合つて、会衆(みんな)が解散したのは夜半頃でもあつたらう。平凡ではあつたが最初の手ほどきとして(はなは)だ有意義な実験であつた。
 其翌晩も大概同一の顔振れが集合した。で、自分も他の人々と同様に鎮魂を受けようとすると、出口先生から差しとめられた。
貴下(あなた)は今晩審神者(さには)にお成りやす。貴下(あなた)審神者(さには)をやる役目の人どす』
審神者(さには)ですか』と自分は一方(ひとかた)ならず意外に感じた。
什麼(どう)するのか私には()とも判りませんが……』
『おやりになれば自然に判ります』
『でもまだ()んまり早過ぎませう』
大事(だいじ)ござへん、まア()つてお()やす。貴下(あなた)には可能(でき)ます』と甚だ無雑作きはまる先生の命令。
 たつた二回鎮魂といふものをして貰つて、()ほ未だ何等要領を得るに及ばず、戸惑ひし切つて居る最中の自分が、審神者(さには)として(ひと)の鎮魂をやる! 無理も(おほ)無理、滑稽も(おほ)滑稽とは思つたが、最後に、ままよと決心して、到頭()つて見る事になつた。そして大急ぎで鎮魂の歌を習ふやら、唱へる神名を教はるやら、五分間にして急製()(あは)せの審神者(さには)が出来上つたが、思へば之が自分の審神者としての初舞台で、それから引続いて五年後の今日に至るまで、大本の審神者(さには)として、及ばず乍ら世の立替の御神業(かみわざ)の末端を勤めさして戴いて居る。その(あひだ)には(つら)いこと、恐ろしい事、(いや)な事の数々もあつたが、兎も角も現幽両界の関係から神々の御活動、宇宙の神機の一部たりとも会得することが出来たのは、(ひとへ)に審神者としての練習修行の(たまもの)である。
 審神者(さには)としての驚くべき実験の序幕は、その第一回から始まつた。
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