昭和坤生会々長出口澄子
いよいよ坤生の婦人会が生れましたので、お互に奮起しなければなりません。どうも言ひたい事を遠慮してゐる様では、改革は出来ませんから今後はビシビシといふつもりです。家の中の事は婦人が目を醒まさなければ、いつ迄立つてもだめです。世の中がだんだんと移り替つて、昔の様な事をしてゐては、役に立たぬ事も沢山ありますが、大体に於て婦人は小さな所に目をつけなければなりません。自分の幼少な時など火鉢に炭をつぐにも容易ではありませんでした。桑の樹の生からひいて来て、グヅグヅと生樹ばかりで炭の代りにして来たものです。それから行燈に灯をとぼすにも燈明のお土器の下のたれまで戴いてきたものでした。只今此様な事を話せば皆は笑はれるでせう。本当に只今は神様が何もかも結構にして下さつて、何をいたすにも苦労なく用が便ぜられる様になりましたが、昔の苦労な事を知らない様では、神様にすみません。若い人達のすることを見てゐると何もかも徒費が多い様に思はれます。経済といふ様な事を何とも思はず、何でもやりなげる様に見えてなりません。
いくら便利な世の中でも、其ありがたさを感謝して、徒費を改めなけれいなりません。世の中には失業する人も沢山出来て参りました。此時節に婦人が互に戒めあふてしつかりと働かなければ、家が持つて行かれませんし、国も立つて行かれません。どれ程男子が活動しようと思つても女子がしつかりと目を醒まして男子を立働き得る様にしなければならないのであります。それで国を乱すも国を建てるも、女の力が非常に大きく響くのであります。すべて家の中の事を充分に取締つて、不足のない様にするのが建て直しの女の御用です。女が奮発しなければ、家の中の切り盛りが出来ない。台所のものなども神様が造つて下さつたものを、腐らしたり捨てたりするのは、本当に罰があたると思ひます。どうぞ此婦人会が全世界の婦人の鑑となつて行かれる様に、皆様でしつかりやつて下さい。他人から注意を受けたる時自分の心を省みて心得るだけの心にゆとりがなければなりません。お互に其心得がなければ全体の統一がとれるものではないのであります。皆のよい所ばかり持ち寄つて一つの団体を造りたいと思ひます。もう誠より外には何もない。誠のかたまりの婦人会を今度造りませう。
(「昭和青年」昭和七年十二月号)