大本教王仁三郎を当局大山師と睨む
常人として処刑免れず
大本教第二次大検挙について検察首脳部は既報の如く出口王仁三郎の憑霊作用問題が第一次検挙の上告審で未解決のままになつて居るのに鑑み中心目標を同教首脳部の『神庭会議』に置いてゐるが王仁三郎に対する検察当局の観察は王仁三郎は飽くまで精神異状者でなくむしろ不埒極まる大山師であるといふにあるらしく仮りに王仁三郎に憑霊作用があつたとしても神がかり状態になつたその瞬間だけの話で彼が教徒を統率し行政的手腕を揮ふ際は全く常人の意識を有するものと見るべく刑責を問うのは当然なりとの解釈を持してゐる。
第一次検挙以後における彼の言動は不敬極まる神庭会議の議事決議はこれをそのまま示せば到底信徒を引きつけるものでもなく且つ当然当局の忌憚に触るべき事を予想しカムフラージユして信徒を集めるなど到底狂人のなす仕業とは思われず京都府警察部は大本教から発行される諸種の新聞、パンフレツト、教義集等の中からそのカムフラージされた毒鋒を発見するに多大の苦心を払い最後には京都地方検事局思想部に蒐集書類を提出して不敬思想の存在を系統立つて立証して貰つた程で王仁三郎の常人としての刑責は絶対免れぬ処と観察してゐる
九名京都へ
東京で検挙された大本教事件関係者昭和神聖会本部副統監出口宇知麿、同会正宣伝使広瀬義邦、宣伝使御田村竜吉、土井靖都、高川宅次、木村貞次、米倉嘉平、深町霊陽等八名と浦和で検挙した米倉恭一郎は九日午後一時三十分東京駅発特急『桜』で京都へ護送された
京都府警察部より出張の片岡警部補以下十名に付添はれた関係者一同は落着き払つたもので出口宇知麿の如きは始終微笑を浮かべながら何事もなかつたやうな態度であつた