司法内務の大鉄槌
大本教殲滅さる
王仁三郎等八名を起訴し
断乎結社禁止を命ず
大本教に対する最後の鉄槌は遂に下つた、既報の如く十三日午前十時半を期し司法省では京都検事正に対し出口王仁三郎以下八名の起訴命令を発し一方内務省では内務大臣の名を以て『皇道大本』を始め八団体所在地の警視総監及び京都兵庫両府県知事に対し八団体の結社禁止命令を電話で発しそれと同時にその他の府県知事に対しても右結社禁止発令の旨を電報を以て通告した、また同省では即日各府県知事に対し大本教の建物処分に関する通牒を発したがその結果各府県では大本教の別院分院等に対し建物の取壊し又は改造を命ずることになりここに大本教関係の諸団体は地上から全く一掃されることとなつた
教義国体と相容れず
岩村刑事局長談
出口王仁三郎を中心とする大本教はその教義不敬に亙り我国体に反するものがあつた為に大正十年検挙致しましたが、当時は未だ治安維持法が無かつたので、刑法の不敬罪として起訴致しました処が、第一、二審共に有罪の判決があり、大審院に上告中大赦令が公布せられ、同人等も亦恩典に浴し昭和二年五月十七日免訴の判決を受くるに至つたのであります、然るにその後出口王仁三郎等は少しも改悛の情なく、表面皇道大本なる美名を掲げ其の実密かに不逞の意図を有し、先づ多数の信者、共鳴者を獲得し、然る後神意に仮託して其の意図を実現せんことを企て各種の外郭団体を組織し、各種の機関紙並に単行本を多数発行し、その勢漸く拡大せんとするに至つたので、昨昭和十年十二月八日以降出口王仁三郎外五十数名を検挙し、慎重取調を行つた結果、出口王仁三郎外幹部一名に対しては不敬並に治安維持法違反その他の幹部六名に対しては治安維持法違反の嫌疑あることが明白となつたので本日京都地方裁判所検事局に於て起訴予審を請求致しました、その余の被疑者は目下取調中で、近く処分決定の見込であります、出口王仁三郎等の抱懐する真の意図は単に不敬なるに止まらず、我国体と絶対に相容れないものでありますが、之を表面に現わすときは直に検挙せらるる虞があるので、同人等は表面を糊塗しその実極めて巧妙湾曲に我国の古典を曲解し、歴史上の事実を歪曲する説明をなしてゐたので所謂大本教信者及び外郭団体の団体員中には出口王仁三郎等の抱懐する不逞なる意図を知らず誤つて信者となり又は右の団体に加入した者が多い様に思はれるのであります
恐懼の至り
入信者の覚醒を望む
唐沢警保局長談
昭和聖代に斯かる不逞の徒を多数出したること、並に斯かる教団が巧に本体を隠蔽して存続して居りましたことは実に恐懼に堪へざる次第で、斯の如き団体の存在は一日も之を許容するを得ず、今日茲に断乎として結社禁止の厳命を下したのであります、尚又各種の布教的奉斎施設に対しても地方庁に於て建物の撤却其の他の措置につき夫々適当なる方法を講ずることになつて居るので、大本邪教の徹底的掃蕩潰滅を期するため当局は今後共あらゆる手段を盡す積りであります、一般信者団員中には之等の団体が真に恐るべきものであることを知らず、表面掲ぐる「皇道」なる美名に眩惑せられ不用意に入信参加したる寧ろ気の毒な人々が多いことと思ふので、之等の人々はこの際徐ろに反省し、当局の執りたる措置を理解し一日も早く邪教に対する迷妄より覚醒せられんことを切望して止まない次第であります
訓令
警視総監宛 内務省訓令第一三七号、その管下結社昭和神聖会は治安維持法第八条第二項の規定に依りこれを禁止すこの旨主幹者に伝達すべし右訓令す
京都府知事宛 内務省訓令第一三八号、其の管下左記結社は治安維持法第八条第二項により之を禁止す
記
皇道大本、人類愛善会、更始会、明光会、昭和青年会、昭和坤生会此の旨主幹者に伝達すべし
右訓令す
兵庫県知事宛 内務省訓令第一三九号、其の管下結社大日本武道宣揚会は治安警察法第二項に依り之を禁止す、この旨主幹者に伝達すべし
結社禁止団体
(一)皇道大本 一、創立明治二十五年旧一月元旦と称す、一、役員総統出口王仁三郎、教主出口澄、総統補出口日出麿
(二)更始会(大本の資金団体)一、創立大正十三年二月、一、役員総裁出口王仁三郎、会長出口日出麿
(三)人類愛善会(信者獲得別働団体)一、創立大正十四年六月、一、役員総裁出口王仁三郎、会長出口日出麿
(四)明光社(芸術団体、即ち芸術を通じて大本の宣伝をなすもの)一、創立昭和二年一月、一、役員総裁出口王仁三郎、社長大深浩三
(五)昭和青年会(大本運動の前衛部隊)一、創立昭和六年九月、一、役員総裁出口王仁三郎、総裁補出口日出麿、会長出口宇知麿
(六)昭和坤生会(大本運動の後方部隊、婦人団体)一、創立昭和七年十一月、一、役員総裁出口王仁三郎、会長出口澄
(七)大日本武道宣揚会 一、創立昭和七年八月、一、役員総裁出口王仁三郎、会長出口日出麿
(八)昭和神聖会(政治的行動団体)一、創立昭和九年七月、一、役員統管出口王仁三郎、副統管出口宇知麿、内田良平