大本と天津教をチヤンポン宗教
龍神会首脳近く送局
【既報】目黒区清水町に神政龍神会の看板を掲げ信者獲得に狂奔してゐた同町四七二予備海軍大佐矢野祐太郎(56)同町四七一予備海軍中佐加世田哲彦(40)の両名を大井署から近く不敬罪で送局する事となつた
同署の調によると矢野は欧洲大戦直前海外武官としてロンドンに駐在中「火星からの使」といふドラマを見て刺激され、更に大本教御筆先を見て宗教に興味を持ち任を終へて帰国、退官後の大正七年一家をあげて大本教の本拠京都府下綾部町に居を移し昭和四年迄十数年間熱心な信者として信仰生活を送つてゐた、その間出口王仁三郎が蒙古に神国建設を唱へた際軍事顧問の名目で王天海と名乗り馬賊三百数十名を従へ蒙古入国の直前張作霖の部下に妨げられて目的は達しなかつたがその際大本教の軍資金のイザコザから王仁三郎とはなれ、大阪の同教まさみち道場で一年間同教の教義をはじめ教団経営の秘訣を修得、更に茨城県磯原町天津教を加味した前記神政龍神会といふ新教を樹立し妻しん(51)を神がかりの巫女に仕立て上流階級に働きかけ多数名士の後援を得て兵庫県川辺郡中谷村下肝川に山林二町歩を買占め「地の高天ケ原」と称して本殿建築を計画、布教に奔走してゐたもので
教義内容は日本書紀、古事記等を曲説し「下肝川由来記」「雲の上より」等のパンフレツトに不敬文字を連ねてゐたもの
加世田は元天理教信者で大本教に転じ昭和八年矢野と知合ひ共鳴、昨年十二月退官したもので、本年三月の検挙以来取調べに八ケ月を要し大井署で身柄送局に先立つて一件書類並に証拠書類をトラツク三台に満載送局した