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昭和10年12月8日 号外

インフォメーション
題名: 著者:
ページ: 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :NPTNc19351208G1
全国に大本教検挙の大旋風
内務省が総指揮しけふ払暁を期し雪崩込む
一年間に亘り慎重に内偵
検挙されし者数百
大本教の大検挙は朝刊(または号外)既報の如く、八日払暁午前五時を期し全国一斉に行はれた、検挙の中心京都におゐては京都地方検事局並に府警察部が京都市内の精鋭三百余名の非常召集を行ひ、大本教の大本山─綾部町の皇道大本教本部並に亀岡町大本天恩郷を襲ひたちどころに数百名を検挙、大本教の中心人物教主出口王仁三郎氏は松江市で検挙された、一方大検挙の総指揮に当つた内務省警保局では唐沢警保局長、相川保安課長以下徹宵(てつせう)で全国に検挙の指揮をなし、東京地方検事局並に警視庁でも殆んど係官総動員にて精鋭警官百名の非常召集を行ひ四谷区愛住町七六昭和神聖会総本部をはじめ市内数ケ所の関係支部を襲つて一斉検挙を行つた、この大検挙は昭和八年以来厳秘裡に内偵を進め準備をかためてゐたもので大正十年五月一日の大検挙に次ぐ殲滅的な歴史的大検挙で驚くべき大不敬が発覚したためである
前回に大不敬事件
当局の苦心見事報ひらる
【京都発】今回の大検挙は京都府警察部が約一年前から内偵を進め大本幹部が去る大正十年の不敬事件にもまさる不敬事件を企らんでゐる確証を握つた結果で、八日未明を期し東京、松江その他の地方と相呼応して大検挙に着手したのである
教主出口王仁三郎氏
松江市にて捕はる
【松江発】大本教教主出口王仁三郎氏は七日午後一時昭和神聖会島根本部五周年記念祭に出席のため鳥取から松江に来り、松江市赤山の同本部に落付ゐてゐたが、かねてその筋よりの移牒をうけた島根県警察部では八日午前三時半、松江警察署並に安来(やすぎ)警察署員の非常召集を行ひ、同四時自動車十数台に警官七十名を分乗させ工藤特高課長、阪根松江署長が総指揮となつて熟睡中の出口氏を叩き起して澄子夫人第二世教主とともに松江署に連行澄子夫人と第二世は同署に保護検束し王仁三郎氏のみ松江を出発、揖屋(いや)駅に向ひ午前五時十七分同駅発京都行列車にて松江署刑事付添ひで京都方面に護送された
護送途中の厳重な警戒
【松江発】出口王仁三郎氏護送の日の島根県警察部は八日午前四時警察部員松江署員等八十名を非常召集して電光石火的に松江市北堀町赤山の大本教島根別院を襲ひ、四時卅五分出口氏に同行を求め自動車で護送、十数台の警戒自動車を連らね深夜の街をブツとばして松江駅を避け一路山陰線揖屋駅に向ひ、同駅午前五時十五分発京都行列車にのせた、出口氏は和服で頭には例の頭巾をかぶつて不思議なくらゐ弱々しい足取りでまるで警官から身体を持ち上げられるやうに車中の人となつた、客車の両入口には二名の監視を配し沿線各駅にもそれぞれ監視を置くといふ警戒振り、車中で出口氏は何か思索するやうな眼をしてしきりに煙草を吸つてゐたが思ひなしか眼は興奮に充血し、顔面には苦悩の色が漂つてゐた、次いで護送警察官の大半は米子駅で下車、島根県から松浦警部補以下五名の警察官が付添ひ、内務省から特派の永野事務官等にまもられて京都に向つた、なほこの日の大本教島根別院の警戒は厳重を極め午前四時を期し動員された、警察官約五十名は武装姿で別院付近一帯を取囲み水も漏らさぬ包囲の策をとり、内外の連絡を遮断、同地方空前の物々しいもので未明の夢を破られた住民は時ならぬこの警官隊の活動にすつかりおびえてゐた、別院には今日の別院開設五周年記念に参列のため県下各地から数十名の信徒が七日夜同別院に宿泊してゐたので八日午前四時四十五分同院を訪ねると今まで三日ほど奥の広間から漏れてゐた騒ぎもピツタリとやみ、こはごは二人の代表らしい人が玄関に現れたので来意を告げると
聖師さんは只今警察の方が来られ同行されましたが何のことかさつぱり判りませぬ
と不安気に答へ全員に重々しい憂色が立てこめてゐた
驚くべき経営の才
王仁三郎氏の人となり
出口王仁三郎氏は京都府下亀岡町の隣村曽我部村穴太の農家上田吉松氏の長男として明治四年生れで六十五歳本名上田喜三郎、幼少から神童といはれ学校教育も終へずに十四歳で学校の助教員になつた、そのうちに獣医の書生、荷車挽、牛乳しぼり配達など恵まれぬ境遇にありながら国学、宗教、哲学などの研究に没頭、明治卅二年大本教教祖お直婆さんの末子澄子さんと結婚、出口王仁三郎と改名した、明治卅九年から四十年にかけ京都皇典研究所にまなび、一時建勲神社の主典にもなつてゐる、王仁三郎氏は頗る博識多才、一見ぬうぼう式に見えるがこの新興宗教して今日の大をなした経営の手腕は驚くべきものがあり、大本運動の対外的活動振りは如実に同氏の活躍であつた、澄子夫人との間に五女あり長女直日さんの夫日出麿氏はその後継者である
薄田京都府警察部長談
【京都発】薄田京都府警察部長は八日午前五時官舎で語る
現在では大本教の幹部達だけの検挙で昭和神聖会の関係者には手をつけず、先づ最初は出来るだけ小範囲に止め、漸次関係者が明かになるに随つて範囲を広めて行く方針である
綾部で幹部多数を検挙
【京都発】綾部の大本教本部に向つた警察隊約百五十名は八台のバスを連ねて同四時半綾部町に到着、郡是グラウンドに勢揃ひし同五時を期し水も漏らさぬ厳戒裡に一斉に本部表門から侵入、本部を固めてゐる幹部を片つ端から検挙し、さらに多数の証拠物件を押収したが、なほ皇道大本では綾部を本部と称してゐるが大正十年の大検挙以来機構を改めて綾部は単に祭儀執行の場所として教主出口王仁三郎氏夫人澄子さんを中心に一部の幹部が居残つてゐるのみで、本部の事務一切は亀岡天恩郷で執行してゐる、なほ澄子さんは近頃屑糸利用の鶴山織をはじめ信者の子女約二百名を集め工業化してゐるが、この日澄子さんは王仁三郎氏とともに松江市に出張中王仁三郎氏とともに同地で検挙された
物凄い番犬うなる天恩郷を
【亀岡発】亀岡の天恩郷を取巻ゐて待機してゐた正服警官百五十名は午前五時星の光を浴び一斉に天恩郷に侵入し、多数の番犬が物凄く吠立てるその中を警官隊は用意の懐中電燈を点じて右往左往し証拠の押収に関係者の検挙に大活動を開始し、今まで静寂を極めた天恩郷は俄然上を下への大騒ぎである、一方亀岡町内に在住する大本教の役員約百五十名を片つ端から検挙して亀岡警察署道場に収容した、なほ当局は午前五時を期して亀岡全町の一般通行を遮断した
秘密の殿堂を捜査す
【亀岡発】亀岡天恩郷の大本教本部を襲つた豊原警務課長の指揮する制私服六ケ中隊よりなる検挙隊はまづ次代教主出口日出麿、王仁三郎氏女婿美智麿氏、同妻女澄江さん、最高幹部高木、東尾、桜井三総務をはじめ天恩郷に在住する男女約百五十名、町内に住む信者役員等約百五十名計百三百余名を亀岡署に引致、同署武道場留置場に収容したのをはじめ、他の一隊は昨今一切関係者以外の出入を禁止して疑惑の的となつてゐた昭和神聖会事務所をはじめ光照殿、秋月殿、智照館、光天閣、大祥殿などの天井をはぎ、床板を外して家宅捜索を行ひ秘密文書、重要証拠物件、刀剣武器など押収したが一方検挙を知らず星空を仰いで朝礼に集まる信者中、老人、女子、子供を除く男の信者を続々亀岡署に引致してゐる
八十キロの間に五百の警官
両町の住民は缶詰
【亀岡発】亀岡を経て奥丹波に通ずる山陰街道は沿道各警察署を総動員し京都、綾部間八十キロの間に約五百の武装警官を配置し八日午前零時を期して同地方の交通を遮断した、しかも国道筋ばかりでなく府道、村道から里道畦道まで警官が頑張つてゐて自動車は勿論村民の通行さへ止めて一々誰何訊問し文字通り水も漏らさぬ警戒振り、亀岡、綾部の居住者に至つては町から一歩も出られぬばかりか京都地方からも入ることが出来ない、ただルームライトを消した警官隊を乗せた市バスばかりが漆黒の暗の中を走るのみ、亀岡の天恩郷と綾部の大本本部は午前三時過ぎ地元の亀岡綾部両警察署が中心となつて武装警官が包囲し、一切の出入を厳禁し物々しい光景である(午前四時記)
浦和
【浦和発】埼玉県警察部では八日払暁警視庁の手配に〓し県特高課は小林警部以下が出動し浦和市常盤町居住東京市内某会社重役米倉範治氏(60)を同行取調べてゐる、なほ浦和市本太一〇四一には同教の幹部と目される国分義一氏が居住してゐるが八日早朝浦和署員が出向ひた時はすでに所在をくらましてゐた
新潟
【新潟発】新潟署では八日午前五時新潟県特高課と協力九班に分れて活動を開始、まづ新潟市上大川前小甚旅館に六日から宿泊中の京都府亀岡町天恩郷皇道大本役員井上留五郎(62)同昭和青年会役員神本泰昭(42)両名を検挙したほか市内上大川前通り五番町昭和神聖会支部から数名を引致した、なほ井上、神本両氏は七日夜市内西大畑町で同志とともに座談会を開ゐてゐたものである
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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