御開祖の長男出口竹蔵氏を家督相続なさしめ給へ
与平氏の妹を妻と相定め兄竹蔵は家を持ちたり
六月の二十日開祖は分家して吾れと澄子をあと継ぎとせり
出口家の養子の籍を持ちながらまだ役員にしひたげられつつ
筆先を誤解してゐる役員は吾がため思ひて吾れを苦しむ
今年に立替ありと盲役が村々町々ふれ歩きたり
実名王仁三郎
新九月二十日旧名を改めて王仁三郎と実名名乗れり
曽我部役場に古谷松原は鬼三郎と改名とどけ差出しにけり
海潮は悪神なれば鬼といふ文字が適すと人に語りをり
この話吾れは聞くより驚きて曽我部役場に届け出でたり
神様に賜はりし名は王仁なるにわざとに鬼と届けし盲役
知らぬ間に吾が名は鬼となりゐたり曽我部役場に書き直さしむ
故郷の穴太に上田喜三郎なる青年が住まひゐたりき
故郷の喜三郎氏にかけ合ひて同姓同名なればと届けし
漸くに王仁三郎と郡衙より吾が改名の許可ありにけり
大本の盲目役員口々に鬼の正体現はれしといふ
苦心の執筆
「道の栞」全部四冊を脱稿し無事に済みしを神に感謝せり
著書は皆夜具をかぶりて夜の間に執筆したるものばかりなり
役員に見つけられなば又しても焼き捨てらるるを恐るればなり
書を読むも書をあらはすも役員に気兼ねなしつつ苦しみにけり
たまさかに昼書をあらはす時あれば妻の澄子に立番させたり
吾が妻は咳払ひして役員が今来るよと合図したりき
伊勢音頭
国のため御道のために村肝の心なやます吾れなりにけり
かくのごと心配りて役員の目を忍びつつ読み書く苦しさ
そのごろの綾部大本役員は鼻高々と天狗になりをり
あまりにも苦しきままに吾が妻は伊勢音頭をばうたひて踊れり
伊勢音頭うたふ澄子をにらみつつ悪魔つきしと古谷が云ふ
伊勢音頭うたふといふは何事ぞ陽気浮気の大本でなし
大本は苦労の花の咲くところ陽気な歌は止めてください
歌一つうたふわけにもゆかぬとて妻の澄子は窮窟がりたり
苦節
腸のちぎれるやうな残念さを吾れはこらへて勉学してをり
時折りは役員達の妨げに腹をたてつつ大声発しぬ
大声に呶鳴る吾が顔打ちながめ役員連は手を打ち笑ふ
虎島のあとおしにより古谷は言葉あらはに吾れにてむかふ
どうしても小松林を去なさねばこの大本が立たぬとほざけり
盲者連の集る綾部にをりたくも無けれど妻子にひかされて居り